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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第3話「異世界でちやほやされてる私、一方的にライバル視される」
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03 彼女は張り合う

「さぁアリスさん! 今日は雷魔法で勝負ですわ!!」


 今日も今日とて、突っかかってくるチェリル。

 私はため息をつきながら、ゆっくりと顔を上げる。


「勝負って……お昼休みだよ?」

「そうよ。アリスは今、あたしたちと楽しくお昼を食べてるの。邪魔しないでよね」

「そ……そうなの」


 リーリカとユピも、一緒に応戦してくれる。

 だけど、ミルミーを従えたチェリルは、そんなこと意にも介さず。


「授業中に勝負というわけにはいかないでしょう? 先生の言うことは、きちんと聞かなければなのですから」

「チェリルは真面目なんだよねー」

「だからこそ、今! 休み時間である今こそが、わたくしたちの勝負のときですわ!!」


 もぉ、勝手なことばっかり言って……。

 私は授業中だろうと休み時間だろうと、誰かと争うつもりなんかないんだけど。


「行きますわよ――『雷電弾(サンダードロップ)』!」


 バチバチバチッ!

 チェリルが杖を振ると、紫電を放つ光球が、窓の外へと放たれる。


「どうですの? わたくしの『雷電弾(サンダードロップ)』は、クラスの中でもトップクラスの大きさですわ! この魔力に、果たして勝て――」


「――汝は言った。『稲妻とは怒りではなく、衝動に吼えているのだ』と。我は知った。稲妻の答え、空との約束。そして一筋の、光の心。それは耳鳴りがするほどの、巨大な愛の咆哮である――『雷神は戸惑い(ホワイトライン・)がちに笑う(イエローエコー)』!!」


 バリバリバリバリッ!!


 一閃の稲妻が槍のような形状になったかと思うと、校庭の中心に突き刺さった!

 その凄まじい勢いに、大地がビキビキとひび割れる。


 ちなみに校庭には誰もいなかったので、ケガ人は出ていない。

 それくらいは気を遣わないとね。


「はい、アリスの勝ちー」


 リーリカがフォークをチェリルの方に向けて、得意げに言う。

 ユピもこくんこくんと、何度も頷いている。


「別に私は、勝ち負けとかはいいんだけど……あんまり突っかかって、ほしくないっていうか」

「こ、これくらいの魔法で、わたくしが引き下がるとでもお思いで!?」

「できれば、そうしてほしかったなぁとは思うよ」

「冗談じゃありませんわ! わたくしは絶対に、アリスさんに負けるわけにはいきませんもの!!」


 ああ、ダメだこりゃ。

 チェリルの心には、余計に火が点いちゃったみたい。


「チェリルはアリスちゃんが来る前、魔法では学年トップだったんだよねー」


 ぷるぷる肩を震わせるチェリルのそばで、ミルミーがあっけらかんと言う。


「だけど今は、アリスちゃんの方が上……みんなそう思ってる。それがチェリルは、気に入らないんだよー」

「……ミルミーの言うとおりですわ」


 チェリルはギュッと拳を握って、歯噛みする。


「わたくしはもう一度、学年一の立場を取り戻したい。そして必ず――カンナ様の跡を継いでみせるんですの」


「カンナ様? 誰?」


 バッと。

 チェリルだけじゃなく、リーリカもユピもミルミーも、一斉に私の方を向く。


 その目はまるで、珍獣を見るかのようなもの。


「アリス……カンナ様のこと、知らないの?」

「ルミーユ学園に入って日が浅いけど……さすがにそれは、どうかと思うの」

「世間知らずも甚だしいですわ! カンナ様への、侮辱ですわ!!」

「ボクもさすがに、それは引くなー」


 えっ? えっ?


 みんなから口々にそんなことを言われたら、さすがに動揺する。

 私ってばひょっとして、常識なさすぎ?


「いい、アリス? カンナ様はルミーユ学園の三年生。そして、この学園一の実力を持っている、魔法使いよ」


 リーリカがピンと人差し指を立てて、説明してくれる。


「学園一の実力――それは生徒に限った話じゃない。先生はおろか、学園長でさえも……カンナ様の魔力には敵わないと言われているわ」

「へぇー。すごいね、そんな人がいるんだ」

「ルミーユ学園の魔法使いで、カンナ様に憧れない人はいませんわ。いいえ、魔法使いだけではない。すべての生徒たちにとっての、学園の星……それこそが、カンナ様なんですから!」


 熱弁を振るうチェリルに、他の三人も頷く。


 そっか。そんなにすごい人が、この学園にはいるんだ。

 学園の星とまで言われると、さすがの私もちょっと興味が出てくる。


「つまりね。チェリルはいつか、カンナ様のような学園の星になりたい。だけどそのためには、同学年のエースであるアリスちゃんが、目の上のたんこぶなんだよ。だから今――勝ち負けをはっきりさせたい」


 ニコニコ笑顔を崩さずに、ミルミーがさらっと言う。

 チェリルは腕を組んだまま、黙ってこちらを見据えている。


「小テスト対決も、魔法比べも、アリスが勝ったじゃないの。これ以上、どうしたいっていうのよ?」

「……魔法を使った、試合ですわ」


 し、試合!?


「いやいや。私、争い事とか嫌いだし。それに万が一、怪我でもさせたら悪いし……」

「はぁ!? わたくしが貴方にボコボコにされると、そうおっしゃいたいの!? 随分と自信があるのですわね!!」


 すごい剣幕で食って掛かってくるチェリル。


 や、そうじゃなくってね?

 どっちが強いとかじゃなくって、誰かとケンカすることが嫌なんだってば。

 ああ、もう。どうやったら納得してくれるのかなぁ……。


 ――――そのとき。


「いいじゃない。戦ってごらんよ」



 私たちの後ろから。

 聞いたこともないほど透き通った声が、教室中に響き渡った。

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