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中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第2話「中二病を具現化させた私、異世界で人生逆転する」
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06 異世界魔法を凌駕する

「それでは皆さん、『火炎球(ファイアボール)』を発動してみましょう。杖をかまえて――」


「『火炎球(ファイアボール)』」

「『火炎球(ファイアボール)』」

「『火炎球(ファイアボール)』」

「いにしえの都より、この地に降り立て――『炎災の皇帝(イフリート)』!」


 ゴオオオオオオオオオオオッ!!


 クラスメートが小さな炎を呼び出している中、私は炎の王――イフリートを召喚。

 校庭の周りを激しい炎で包み込んだ。


「ちょっと、アリスさん! 今は『火炎球(ファイアボール)』の訓練中ですよ!? そんな地獄の業火みたいなものを呼び起こされたら、困ります!!」

「え。あ、はい。ごめんなさい……」

「先生! 炎魔法の訓練なんですから、より強力な魔法を使えるのであれば、それに越したことはないんじゃないですか!?」

「リ、リーリカさん……まぁ、それはそうなんですけど……」


 リーリカの抗議を受けて、先生は言葉に詰まってしまう。


 ……すみません、先生。

 私も悪気があって『火炎球(ファイアボール)』を使わないわけじゃないんです。


 ただ――私って元々、オルタナギアの人間じゃないから。

 どうやら禁断教典『シュバルツアリス』に記された魔法しか、使うことができないみたいなんです。


「で、では皆さん。今度は気を取り直して、氷魔法『氷結晶(ブリザラ)』を使ってみましょう」


「はい! 『氷結晶(ブリザラ)』」

「『氷結晶(ブリザラ)』」

「ブ……『氷結晶(ブリザラ)』」


 ……出ない。


 えーと、えーっと。氷魔法、氷魔法……。


「氷河の大地を切り裂いて、凍てつく息吹で世界を包め――『雪の女王(エルディーナ)』!!」


 ヒュウウウウウウウウウウウッ!!


 凄まじい冷気が校庭を覆い尽くし……木々や草花が一斉に凍りついてしまう。


 ああ、もう!

 もっと軽い感じの魔法でいいのに、またやっちゃった!!


「やっぱりアリスさん、すごいよね……」

「なんか次元が違うっていうか、世界が違うっていうか……」


 ひそひそと遠くで話している女子の声が聞こえてくる。

 確かに世界は違うんだけどね……私の生まれは、オルタナギアじゃないし。

 っていうか……私、思うんだけど。


 この世界――魔法のレベル、低すぎない?


 魔法の世界っていうと、なんていうかこう、もっと派手な魔法を駆使するもんだと妄想していた。

 だからこそ、『シュバルツアリス』に記した魔法の設定は、大迫力で凄まじい威力を持っているわけで。


 それに比べて、ルミーユ学園で教えている魔法は、なんだかしょぼい。


 ぶっちゃけ『火炎球(ファイアボール)』なんて、スラ○ムくらいしか倒せないんじゃないかな?

 だけどクラスには、『火炎球(ファイアボール)』ですらうまく扱えない魔法使いも大勢いる。


「アリス、さすがだね」


 ポンッと、リーリカが私の肩を叩いてくる。

 リーリカは剣士だから、魔法はほとんど使えない。


「どう? ルミーユ学園に来て、思ったことは?」

「え? うーん……」

「レベル低すぎ、とか思ってない?」


 ぎくっ!

 なんで分かったの、リーリカ!?


「あははっ。アリスは相変わらず、分かりやすいねぇ」

「ち、違うの! だけどルミーユ学園のことを嫌がってるわけじゃ……」

「うん。それも分かってる。アリスはいい子だもんね」


 リーリカはそう言って、はにかむように笑う。




 そう――私は本当に、今の状況を嫌がってるわけじゃない。

 むしろ、喜んでいるくらいだ。


 だって、私の極まった中二妄想が具現化したら、異世界魔法を凌駕する力を持っていたんだよ?

 この力がある今、私は編入早々、学年内でトップクラスの実力者。


 冴えないぼっちな学園生活を送っていた私が。

 中二妄想しか趣味も特技もなかった私が。



 みんなから一目置かれる存在になるなんて――最高の、人生逆転劇じゃない!

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