表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病を極めた私、異世界魔法を凌駕する  作者: 氷高悠
第1章 第2話「中二病を具現化させた私、異世界で人生逆転する」
11/80

05 中二魔法、発動!

 編入早々、とんでもない事態になってしまった……。


 校庭で棒立ちになったまま、私は「どうしてこうなった」と、心の中で頭を抱える。


 私の後ろには、同じく教室から校庭に出てきた、クラスメートたち。

 先生も腕組みをして、期待に満ちた目で私のことを見ている。


「あの……先生。授業を中断して、こんなことしてていいんでしょうか?」

「ルミーユ学園は、実力を高めることをモットーにしている。ドラゴンを倒すほどの魔法が披露されれば、きっとクラスのいい刺激になるだろう。何より俺が、その大魔法とやらを見てみたいしな」


 なんて自由な校風なんだ。

 私はげんなりしながら、ため息をつく。


 リーリカを助けようとしただけなのに、とんでもないことになっちゃったなぁ……。


「おい、編入生! さっさとやれよ!!」

「そんなにちんたらしてたら、ドラゴンが逃げちまうぞ!」


 ヤジを飛ばして、ガハハと下品に笑う男子生徒たち。

 うう……プレッシャー。


「アリス! あいつらをぎゃふんと言わせてやって!! アリスが本気を出せば、誰も何も言えないはずだよ!!」

「ユ、ユピも、応援してるの。頑張ってアリス。頑張らないと……か、噛んじゃうよ?」


 リーリカとユピが、拳を振り上げて声を上げる。

 うう……こっちはこっちで、プレッシャー。


 そもそも私がオルタナギアに来てから、実際に魔法を使ったのは一回きり。

 あのときはまだ、「私の考えた妄想」だと思ってたからなぁ。

 改めて魔法を使ってみるとなると、緊張感が半端ない。


 昨日の感じだと、禁断教典『シュバルツアリス』に書き記した中二病満載の設定を、使えるんだと思うけど……多分。


 まぁ、悩んでばかりいても仕方ない。

 こうなったら、やるしかないんだから。


「じゃ、じゃあ。いきまーす……」


 人前で『シュバルツアリス』を開くのは恥ずかしいので、頭の中で記憶をたどっていく。

 確か先週、ちょうどよさそうな呪文を考えたっけな。


 そう。巨大な渦のような暗黒物質を、空中に召喚して。

 さながらブラックホールのように、瞬く間もなくターゲットを呑み込んでしまうという代物。


 呪文は……よし、まだ覚えてる。

 私はすぅっと深く息を吸い込んで、両手をクロスさせながら前にかざした。


 瞬間――私の周囲に光のサークルが現れ、校庭から風が吹き上がってくる。


 風の勢いを、肌に感じながら。


「我は祈る。我は願う。狂おしいばかりの世界に嘆き悲しむ、神の御声に導かれ。歌う小鳥は空を追われ、森は踊りを失った。さぁ世界よ、跪け――狂おしいばかりの時計に、終焉を!」


 両手が熱くなる。

 全身の血が燃え上がる。


「崩壊せよ――『暗黒は世界(ブラッディ・)に口付ける(バースディ)』!!」


 刹那。

 空が割れ、巨大な黒い渦が現れる。


 そして――轟々と激しい風切り音を鳴らしながら。

 バクンッと。


 ルミーユ学園の校舎を、呑み込んだ。


「が、学校があああああああああああああ!?」


 先生も生徒もみなが揃って、大声を上げた。


 まぁそれもそうか。

 校舎の基礎になっている部分から根こそぎ、暗黒物質がすべてを喰らい尽くしてしまったのだから。


 校舎のあった部分にはぽっかりと、大きな穴が開いている。


「お、おい編入生! なんてことすんだよ!?」

「え……いや、あなたがやれって言ったから」

「ここまでのことをやれとは言ってねぇだろ!?」

「でも、ドラゴンを倒したことを証明するには、これくらいやらないと伝わらないかと」

「伝わった! 十分に伝わったよ!!」


 ケンカをふっかけてきた男子が、慌てふためきながら詰め寄ってくる。


 もう。魔法を使えって言ったり、やりすぎだって言ったり。

 本当に、わがままな人だなぁ。


「どうすんだよ……ルミーユ学園がなくなっちまったぞ」

「他のクラスの連中、まだ学校の中にいたよな……」

「ああ。それなら心配しなくて、大丈夫ですよ?」


 さすがに私だって、校舎を消滅させておしまい――なんてつもりはない。

 ちゃんと再生の呪文だって、考えてあるんだから。


 私は再び両手をクロスして、呪文を唱えはじめる。


「くるくる、繰る繰る、狂々と。時計の針は逆回り。世界は静かに音を止め、あるべき姿を取り戻す。くるくる、繰る繰る、狂々と」


 さぁて、もう一発――私の魔法を、見せてあげる!


「再生の輪舞曲(ロンド)――序章(プロローグ)『時計仕掛けのオリオン座』」


 呪文を唱え終えると同時に、空には巨大な振り子時計が出現する。

 そして振り子が揺れるリズムに合わせて……少しずつルミーユ学園が再生していく。


「な……なんだよ、この魔法……」

「ありえねぇ……ありえねぇだろ」


 みんながざわざわとしている間に、ルミーユ学園は暗黒物質に吸い込まれる前の姿に、完全に回帰した。


 よーし、うまくいった!

 やっぱりオルタナギアでは、私の考えた中二病設定――もとい魔法を、発動することができるみたいだね。


 くっくっくっ……なんだか私の中二心に、火が点いちゃうよ。


「さぁ、みなの者。これでも私の魔法の才を、疑うか? まだ信用できぬと言うのなら、もう一度校舎を呑み込んで……」

「わぁ! もういい、もういい!! 分かったから!!」


 男子たちが悲鳴にも似た声を上げて、降参宣言をする。

 その様子を、私が満足げに見ていると。


「――アリスぅ!」

「きゃっ!?」


 後ろからギュッと、リーリカが抱きついてきた。

 そして私の首元に頬ずりをしながら。


「あたし史上、最高だわ! やっぱりアリスは、あたしが見込んだとおり――最っ高の魔法使いだ!!」

「ユピも、びっくりしたの。アリス、本当にすごい!」


 興奮気味なリーリカの後ろからひょこっと顔を出し、ユピも目をキラキラさせている。

 そして、クラスの他な女子たちも――。


「すっごい、アリスさん! こんな魔法、先生ですら使ってるの見たことないよ!!」

「ねぇ、アリスさん。わたしとパーティを組まない?」

「あ、ずるーい。こっちだって、アリスさんのこと狙ってるのに!」

「だーめ」


 そんなみんなを、得意げな顔で制して。


「アリスの才能を発見したのは、このリーリカ。だからアリスは、あたしのもの。誰にも渡したりなんか、しないんだから!」


 ね、アリス? ……なんて言って。

 リーリカは私の腕に、自身の腕を絡めてくる。


 いつからリーリカのものになったのよ……って思ったけど。



 なんだかすっごく嬉しそうな顔で笑ってるし――まぁ、いっか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ