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白磁の竜角  作者: 黒猫水月
間章二
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女子会(開催地:アルセイド伯爵本邸一階客間)

 クオンとカリンが神様の澪標の下で恋人になってから数日後の昼下がり。カリンは学院から出された冬季休暇中の課題をせっせとこなしていた。するとその時、扉をノックする音が聞こえる。誰かなと思って扉を開けると、そこにいたのはリッカだった。


「リッカ。どうしたの?何か用?」

「えっとね。リリスが今から女子会を開くんだって、それでカリンちゃんを呼んできて欲しいって頼まれたの。」


 女子会と聞いてカリンはとても嫌な予感がした。クオンとカリンが交際を始めた事はリリス達には既に知られている。時期を考えると、クオンに告白された時の事を聞かれるに違いない。


「け、欠席じゃだめなか?」

「もう準備できてるよ。一階の客間に皆集まってる。カリンちゃんは強制参加だって。」

「うう・・・。」


 カリンはがっくりと肩を落とす。リッカに手を引かれ、一階の客間へ向かった。客間に入ると、リリスが出迎えた。


「カリンちゃんこんにちは~。こっちへどうぞ~。」

「準備万端だね・・・リリス。」


 ガラスのテーブルの上にはお菓子の山と人数分のお茶が用意されている。カリンは一番大きなソファの中央に座らされた。はあ、とため息を吐いて参加者たちを見回すと、違和感を感じた。


「あれ・・・?」

「どうしたのカリン?」

「リリス。なんか違和感を感じない?」

「そう?」

「えっと。リッカ、リリス、カノン、ナツメ、カーラ、リッカ・・・あれ!?リッカが二人いる!?」


 客間には同じ服を着たリッカが二人いた。まるで双子のように瓜二つだが、片方は穏やかな雰囲気を持っていた。髪を束ねるリボンも翠色ではなく青色だ。カリンはその正体に思い至る。


「もしかして、ルビーさん?」

「あら。ばれちゃったわね。うふふ。誤魔化せるかな~って期待してたんだけど、さすがにそこまで甘くはなかったわね。」

「ななな、何でルビーさんまで参加してるんですか!」

「私もカリンちゃんのお話聞きたいんですもの。いいでしょ?ね?」


 ルビーはにっこりと微笑む。お世話になっている身だけに、ここから無下に追い出す訳にも行かない。告白された時の話をよりにもよって恋人の母親に聞かれるなんて、とんだ羞恥プレイだった。


「それじゃあ主賓も来たことだし。女子会始めるよ~。いえ~い!」

「「「「「「いえ~い!」」」」」」

「い、いえ~い・・・。」


 カリンは声に元気がない。これからクオンに告白された時の事を根掘り葉掘り聞かれると思うととても恥ずかしい。そんなカリンをよそに、リリスは言葉を続ける。


「今回の議題は『カリンちゃんにクオンから告白された時の話を聞こう』だよ。まずは私から質問!キスした時はどんな感じだったの?」

「い、いきなりそれ!?少しは遠慮してよ!」

「乙女は皆、キスに興味津々なのですよ。さあ、話して話して。」

「そんな事言われても・・・。」


 カリンは人差し指を自分の唇に当てる。すると、クオンにキスされた時の事が鮮明に蘇った。顔を赤くするカリンを、皆は微笑ましく見守る。


「キスされた時はどんな感じだった?」

「なんだか幸せな気分だった。」

「・・・どのくらいの時間、キスしてた?」

「結構長い時間してた気がする。」

「味はどう?」

「あ、味?ドキドキしててそこまで覚えてないよ。」


 カノン、ナツメ、カーラが順番に質問していく。カリンは恥ずかしそうにしながらも、一つ一つ律義に答えていった。


「良かったねカリンちゃん。遠くから見てたけどよく見えなかったんだよね。」


 すると、リッカの聞き捨てならない台詞が聞こえた。カリンはリッカの顔を見る。リッカは、あっやっべというような表情をしていた。口笛を吹いて誤魔化そうとするが失敗する。


「ちょっとリッカ!?今のどういう事!?見てたって何!?」

「な、ナンデモナイヨー。」

「正直に白状しなさい。うりゃうりゃ!」

「あははははは!そこはやめてぇ~!」


 惚けようとしたが。リッカはカリンの追及(くすぐり)に、負けてあっさり白状する。どうやら、こっそりと先回りして、月光花の花畑の中に寝そべって潜んでいたらしい。幸いなことに、神様の澪標(みおつくし)からは距離があったようで、告白の内容までは聞こえていなかったようだ。リッカの行動力に呆れるカリンなのであった。


「他には誰かいたの?」

「だ、誰もいないよ。私だけ。」


 顔を覗き込むカリンに対し、リッカは露骨に目を逸らす。絶対に怪しいと思ったカリンは、無言でリッカの両脇に両手を差し入れた。これ以上のくすぐりは堪らないリッカは、真犯人を白状する。


「か、母様も一緒に見てましたあ!」

「ルビーさんまで!?母娘そろって何してるの!?」

「ごめんなさいね~。どうしてもクオンとカリンちゃんが心配だったのよ。」


 ルビーは悪びれもせずにころころと笑う。リッカだけでなくルビーにまで見られていたと分かり、カリンはさらに恥ずかしさが込み上げてきた。行き場のない羞恥をリッカへのくすぐりで発散するのであった。くすぐりが終わったところで、リリスが次の質問をする。リッカは笑い疲れてぐったりとしていた。


「キスの時、舌は入れたの?」

「し、舌ぁ!?入れるわけないでしょ!」

「初キスなら仕方ないか。でも、舌を入れるとクオン喜ぶと思うよ。男の子そういうの好きだし。」

「それ、ほんと?」

「ほんとほんと。」


 舌を絡ませ合うディープキスなるものがある事はカリンも知っている。クオンとそういうキスをすると想像しただけで顔から火が出そうになる。その一方で、クオンが喜ぶならしてもいいかなという気持ちもある。


「好きな人とディープキスするのは良いわよ。繋がってるって感じがするもの。」


 のほほんとした表情でとんでもない事を言うルビー。リリス、カノン、ナツメ、カーラも顔をさらに赤くする。リッカはぐったりしながらも、両耳を手で塞いでいた。娘としては父と母の生々しい恋愛事情なんて聞きたくないのである。リリスはこほんと咳を一つすると、次の質問をする。


「クオンと同衾はしないの?」

「ぶっ!?し、しないよ!?結婚前にしちゃだめでしょ!」

「あれ。カリンはそういうの気にするタイプ?」

「そりゃ気にするよ。結婚の後にするのが普通・・・普通だよね?」


 カリンとしては、結婚後の初夜まで純潔を守るのが常識だ。少なくともアントラ王国の王女としてはそう習った。婚前交渉はもっての他だ。しかし、リリスの言葉を聞いて、リンドヴルム王国ではその常識が違うのかと心配になった。カリンとしては初夜で結ばれるのが憧れだったりする。


「カリンってばそんな深刻な顔しなくても。貴族はそういうの気にするかな。中央の貴族は奔放な人多いらしいけど。平民は人それぞれだね。ルビーさん的にはどうなんですか?クオンとカリンが婚前にしちゃうのって。」

「孫は男の子でも女の子でも大歓迎よ。」

「だってさ。良かったねカリン。」

「何が!?しないよ!?」


 カリンが頭を抱えていると、リッカが話しかけて来た。くすぐりのダメージからは復活したようだ。


「大丈夫だって。クオンならカリンちゃんの気持ちを尊重してくれるよ。」

「そ、そうだよね。」

「でもクオンも男の子だからね。例えばカリンちゃんがスカートをたくし上げて誘ったら理性が飛んで押し倒しちゃうかも。」

「私はそんな事しないよ!そんなの変態でしょ!」

「あはは。ごめんごめん。」

「もう・・・。」


 この後もカリンへの質問は続く。一通り質問が終わると、皆でお茶とお菓子を楽しんだ。そして夕方となり、女子会はお開きとなったのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。次回から三章となります。しばしお待ちください。

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