『ハーヴィーのぼうけん 旅立ち』
続きとなります。
本編中で言及されている、冒険家ジョン=ハーヴィーのお話です。
むかしむかし、リンドブルム王国にジョンと言う好奇心旺盛な少年がいました。
人よりも考えることが好きなジョン。彼の頭の中はいつもあることでいっぱいでした。
『王国の外には、どんな国があるんだろうか?』
『世界は、どこまで続いているのだろうか?』
『世界にはどんな種族がいるのだろうか?』
『世界のどこかに神様はいるのだろうか?』
その答えを求めて、書物や世界地図を見ましたが、どれもそれぞれ内容が違っています。
大きな亀の背中に世界がのっているもの。海の先には滝があって奈落に落ちているもの。世界は丸いというもの。
湖には大きな蛇がいるというもの。山には巨大なドラゴンがいるというもの。月には神様がいるというもの。
砂漠には鉄の精霊がいるというもの。地底には巨大な剣が差さっているというもの。海底にはすべてを見通す水晶があるというもの。天空には煌めく盾があるというもの。夜の国には夜明けをもたらす剣があるというもの。妖精の樹のそばにはなんでも分かる書物があるというもの。
本の内容は多種多様。あまりに多すぎて、何が正しいのかさっぱり分かりません。書いてある情報も、迷信なのか真実なのか、ごちゃ混ぜになっていて判断が付きません。
結局、ジョンの知りたい答えは見つけられませんでした。ジョンは途方にくれました。ですが、そこで諦めるジョンではありません。すぐにあることを思い立ちます。
『そうだ!冒険家になろう!そして世界を自分の目で見るんだ!分からないなら自分で探せばいい!』
父も母も、ジョンが冒険家になることには反対しましたが、彼の熱意は変わりません。彼は思い立ったその日から、冒険家になるための努力を始めます。
身を守るための剣術と武術、野営の方法、地図の作り方、各国の歴史と特徴、種族の勉強などなど。気の遠くなるくらいやることはいっぱいありましたが、ジョンは着実にこなしていきました。
そしてついに18歳になった年、ジョンは冒険へと旅立つ時が来ました。少年から青年へと成長したジョンは、誰もが認めるほどの人物へとなっていました。家族もジョンの熱意に根負けし、冒険家になることを認めていました。
『私たちからの餞別だ。』
出発のとき、ジョンは一冊の本を父から受けとりました。中を開いてみると、どのページも白紙でした。訝しむジョンに、父は告げます。
『冒険の記録をその本に書き込むといい。帰ってきたら、冒険の話を私たちに聞かせてくれ。』
それは、遠回しでしたが、ジョンの無事を祈る言葉でした。必ず帰って来いという気持ちが込められています。ジョンは両親を心配させないよう、精いっぱいの笑顔で答えます。
『ああ、必ず帰ってくるよ。この本の中身をいっぱいにして。』
こうして、ジョン=ハーヴィーは故郷に別れを告げ、冒険へと旅立ったのです。
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「続きはまた明日。」
そう言って、女性はパタンと絵本を閉じる。傍らのベッドには、幼い姉弟がいた。姉は活発そうな女の子。弟はおとなしそうな男の子。性格は違う二人ではあったが、どちらの瞳も同じように輝いていた。
「えー!母様、もう終わりなの~?」
女の子はぶーぶーと不満を言う。男の子も、声には出さないが少し不満そうな表情だ。姉弟の母親は、微笑んで二人に優しく諭す。
「一気に読んでしまったらもったいないわ。さあ、もう寝ましょうね。リッカ、クオン。」
「はあい。おやすみなさい。母様。」
「おやすみなさい。母さん。」
母親は二人の額におやすみのキスをする。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
冒険家ジョン=ハーヴィのお話について章間ごとに少しずつ掲載する予定です。
次回からは第二章へと入ります。しばしお待ちください。




