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白磁の竜角  作者: 黒猫水月
間章一
28/84

女子会(開催地:喫茶店ネコキック)

続きとなります。

リッカ主催の女子会のお話です。

この話のシェリーとクレアは1章にちょっとだけ出ています。カーラは名前だけ。

ちなみにこの話のクレアは、オストシルト帝国のクレアとは別人です。

 王都レグニスのとある裏通り。その場所に『喫茶店ネコキック』はひっそりと佇んでいた。隠れ家的な名店として知る人ぞ知る喫茶店である。今日、この店に集いし女性たちがいた。


「さあ、女子会を始めるよー。」


 リッカは女友達と定期的に会合を開いている。会合と言っても料理を楽しみながらただくっちゃべるだけ。今回の参加メンバーはリッカ、ドロシー、カーラ、クレア、シェリーの五人だ。


「リッカ、今日の議題は何なの?」


 クレアがリッカに尋ねる。議題と言っても、高尚なことではなく、参加メンバーが最近不満に思っていることだ。この女子会で愚痴を言いまくって発散するのが目的である。


「今日は三つかな。シェリーの『最近、男爵がうざい』、カーラの『兄さんが構ってくれない』、私の『弟が姉離れしそう』だよ。まずはシェリーからどうぞ!」

「おう。」


 シェリーは一口だけ水を飲んで喉を潤すと、『最近、男爵がうざい』件について話し始める。


「みんな、バイヤール男爵は知ってるか?」


 カーラだけ首を振る。貴族の間では有名な男ではあったが、平民にまで知名度はない。シェリーとクレアはドロシーの家で働いているので貴族界隈のことは詳しい。シェリーはカーラに説明する。


「一言でいえば、社交界で浮名を流す赤毛のキザ野郎だ。最近、そいつに言い寄られててまじでうざい。」

「シェリーが?ドロシーじゃないの?」


 カーラはもっともな疑問を口にする。容姿でいえばドロシーにかなう相手はいないだろう。少なくともリンドブルム王国には。


「もちろん、ドロシーも口説かれてたぜ。」

「えっ?私、口説かれてたの?」


 ドロシーは首を傾げる。ドロシーは恋愛には鈍感なので、口説かれても気づかないことが多い。バイヤール男爵も例に漏れず気づかれていなかったようだった。


「まあ、このとおり全く相手にされてなかったけどな。その後、俺に言い寄って来るようになりやがった。」

「シェリーも赤毛だから親近感持たれたとか?」

「甘いぜカーラ。絶対違うね。ドロシーに近づくために外堀から埋めようとしてるんだろう。アデライン様は鉄壁だし、クレアは手強そうだしな。俺はその点、ちょろい尻軽女に見えるから攻略しやすいと思ったんだろう。」

「本当は、少女小説読んだくらいで顔真っ赤にする純情乙女なのにねー。」

「う、うるひゃいぞリッカ!」


 リッカに茶々を入れられ、思わず噛んでしまうシェリー。他のみんなも笑っていた。シェリーは口調こそがさつで喧嘩も強いが、性格は普通に乙女である。


「と、とにかく!その男爵がうざくてしょうがないんだ!ただのチャラ男だったら蹴りを入れるんだが。」

「アデラインさんにチクればいいんじゃないの?きっと社会的に始末してくれるよ。」

「リッカ、それは昔の話だ。今はやってないぞ。それに俺とクレアの主人に迷惑はかけたくない。」

「昔はしてたんだ・・・あの優しいアデラインさんが。」


 カーラは身を震わせる。『凍血の魔女』と言われているアデラインだが、ドロシーが生まれてから随分と丸くなった。なのでリッカたち若い世代には、娘を可愛がる優しい母親としてのイメージの方が強い。


「一応聞いとくけど、シェリーにとって男爵は脈ないの?」

「はあ!?冗談が過ぎるぜクレア!あいつはねえよ!俺は誠実な人が好きなんだ!それにあいつはドロシー狙いだ。本命は俺じゃねえ」

「誠実な人ねえ・・・恋人がいますって嘘吐けば諦めるんじゃない?」

「うえっ!?こ、こいびと・・・」


 クレアの言葉にシェリーは変な声を出して顔を真っ赤にする。脳裏に誰かを思い浮かべているようだった。


「え。何その反応。マジ?マジで好きな人いんの!?ねえ誰~?」

「いない!そ、そんな奴いないぞ!」


 リッカは問い詰めるが、シェリーは頑なに否定する。リッカが追求を諦めたところで、カーラが口を挟んだ。


「偽の恋人でも用意して、男爵に見せつければいいんじゃないの?」

「に、にせの恋人?一体誰に頼むのさ。俺のような女の相手をしてくれる奴なんて・・・。」

「私の兄さんならしてくれるでしょ。頼んであげよっか。」

「バババ・・・バートォ!?ダメだ!あいつはダメだ!」

「なんで?兄さんとは友達でしょ?」

「ダメったらダーメ!」


 シェリーの必死な様子に、ドロシー以外の全員が察した。これ以上言うとシェリーが可哀想なので、カーラは話を変える


「対策は置いといてさ、具体的に、男爵のどの辺がうざいの?」

「手紙だ。ポエムじみた手紙をなん十通も渡してきやがる。内容似たり寄ったりだし。しかもだ!毎回手渡しなんだぞ!手を触ってくるし!」


シェリーは身震いしながら力説する。男爵渾身のポエムは着実にシェリーの精神力を削っていたのである。


「うわあ・・・。それはきついね。手紙はどうしたの?」

「焼き芋を焼く燃料にした。」

「だから最近、デザートに焼き芋のモンブランとか多かったんだね。」

「夏だと焼き芋は熱いからな。冷やしてデザートに練りこんだんだ。」

「ドロシーのためにはなってるのね。ねえ、いっそのことはっきりと拒否ったらいいと思うよ。ドロシー狙いなんでしょって。」

「そうか。カーラの言うとおりかもなあ。うし。今度ガツンといってやるぜ。」

「話は終わった?じゃあ、シェリーの好きな人教えてよ。」

「うへぇ!?だからいないってば!」


 リッカの追求は、料理が運ばれて来るまで続くのであった。


*********


「さて次は~カーラちゃんだね。議題は『兄さんが構ってくれない』。さあどうぞ。」

「最近、兄さんが構ってくれないんです。冒険者の依頼ばっかりしてて。」

「それ、カーラがツンツンしすぎだからじゃないの?たまにはデレないと。」


 フライドポテトをつまみながらクレアは答える。カーラは気持ちとは裏腹に、兄であるバートには照れ隠しでツンツンしていた。


「デレって言われても・・・どうすればいいの?」

「ぎゅっと抱き締めてあげればいいじゃないですか。私はお母さんにされると幸せを感じますよ。」


 ドロシーはほわほわとした笑顔でそうアドバイスする。


「そ、それは女性同士だからだよぉ。兄さんにするなんて無理無理。恥ずかしすぎて顔から火を吹いちゃうよ。」

「昔は、お兄ちゃんお兄ちゃん言いながらいっつもひっついてたのに。」

「り、リッカ!そ、それは小さい頃の話だよ~。」


 幼い頃なら憚らなかったが、互いに成長した現在では素直になれないらしい。


「じゃあ、カーラの方から構えばいいじゃん。一緒に冒険者してみるとか。」

「いきなりで変だと思われないかな?」

「大丈夫だろ。あいつなんだかんだで嬉しがると思うぞ。」

「そ、そうかな?でも、私、荒事に向いてないし。」

「荒事ばかりが冒険者の仕事じゃないぞ。イグニス火山の巡回任務とかおすすめだぞ。」

「巡回任務?なんでおすすめなの?」

「デートコースだよ。公然の秘密。火山から見る夕日はきれいなんだぜ。それをきっかけにして、もっと素直になったらどうだ?もうすぐ夏休みも終わるし、アルセイド州に戻ったら誘ってみたらどうだ?」

「うん・・・考えてみるよ。シェリー、ありがと。」

「どもどもだぜ。」


 得意げな顔で胸を張るシェリー。リッカはそんなシェリーの様子に、疑問を感じる。


「なんでシェリー、そんなことに詳しいの?」

「き、気にするな!」


*********


「最後は私!『弟が姉離れしそう』!」

「さあ、あとは料理を楽しもうぜ。」

「話を聞いて!?」


 いきなり話を終わらせようとするシェリーに抗議するリッカ。どうやら先程の追求の意趣返しのようだ。


「むしろリッカがクオンから離れるべきだろ?なあ?」

「確かにそうね。むしろ離れていくクオン君にリッカがくっついていってるだけでしょう。」

「シェリーもクレアもひどーい!昔は『お姉ちゃん』って言ってちょこまかついてきてかわいかったんだぞー!」

「今やクオン君の方がしっかりしてるけどね~。」

「くっ!カーラちゃんが痛いところを!まあでも、うれしくもあるんだよね。離れていきそうって思ったのも、クオンにもやっと春が来たせいだし。」

「カリンちゃんだっけ?ハーヴィ博士のとこの。」

「そうだよカーラちゃん。クオンたら夢中になっちゃって。」


 カリンのことは、竜角人であることは伏せたまま、ジョシュアの養女であることだけ友達に伝えていた。


「タイミングが合えば、シェリーとクレアにも紹介できたんだけど、いろいろ忙しいらしくてさ。二人に合わせるのはまた今度かな。」

「まあしょうがないわね。楽しみに取っておくわ。」

「俺も楽しみにしとくぜ。」


 その後、リッカは弟のクオンがいかにカリンにために頑張っているか力説するのであった。


*********


 そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、夕方となっていた。昼から始めた女子会のお開きの時間である。


「また会えるのは冬休みだね。また女子会やろうね。」


 リッカが名残惜しそうに言う。もうすぐ夏季休暇が終わり、学院が始まるので、リッカとカーラはアルセイド州へと帰ってしまう。そのため、王都住みのドロシー、シェリー、クレアとはしばらくお別れになるのであった。


「次会うときも笑顔で~。おー。」

「「「「おー。」」」」


 恒例の掛け声と共に、リッカ主催の女子会は終了したのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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