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白磁の竜角  作者: 黒猫水月
第一章 アルセイド姉弟と竜角人の少女
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第一話『アルセイド姉弟の夢』

ここから本編となります。

 リンドブルム王国南部、アルセイド州の中心都市アティス。この都市にある王国ギルドアルセイド支部の待合室で、透きとおる様な翠の瞳を持つ少女が新聞を読んでいた。亜麻色の長い髪を頭の後ろでポニーテールにし、翠色のリボンで結んでいる。顔立ちは整っているがまだ幼さを残し、美しいというよりも可愛いと評されることが多かった。


 彼女の名前はリッカ=アルセイド。名前から推測できるように、このアルセイド州を治めるアルセイド伯爵家の長女である。なぜ王国ギルドにいるのかというと、リッカは冒険者だからである。リッカは貴族だが、跡継ぎではないため比較的自由にさせてもらっているのだ。むしろいろいろなことを経験させてもらっている。


 リッカは今日、弟と共にある依頼をこなすためにギルドを訪れた。弟は用事で王都レグニスに行っているのだが今日帰ってくるのだ。手紙で事前に連絡し合い、ギルドで合流することになっていた。ちょうどリッカが新聞を読み終えたころ、待合室の扉が勢いよく開き一人の少年が姿を現した。


「リッカ!ごめん待った?」

「ううん。大丈夫よ。そんなに急がなくてもよかったのに。汗だらだらじゃない。はい、これで拭いて。」

「ありがとうリッカ。」


姿を現したのは、リッカの一つ下の弟、クオン=アルセイドだった。姉のリッカと同じく比較的自由を許されているので、クオンも冒険者として活動している。顔立ちがリッカと似ているため、双子だとよく間違われる。歳が離れているのであれば別だが、たった1年の差なので本人たちもあまり気にしていない。むしろ双子のように育ち、クオンはリッカを姉さんではなく名前で呼んでいた。リッカもさほど気にしていない。


「新聞読んでたの?なにか面白い記事はあった?」


クオンはリッカにもらったタオルで汗を拭きながら尋ねる。リッカは新聞記事を指さしながら答えた。


「世界会議でローラン大陸の調査隊派遣が決まったんだって。」

「なんでそんなことになったの?」

「ローラン大陸でフェリウス帝国の遺跡が見つかったらしいよ。会議の途中で報告が入るなんてオストシルト帝国の陰謀でしょ絶対!」

「オットー六世の話は有名だからねえ。リンドブルムも人だすの?」

「万が一、オットーがフェリウス帝国の遺産を手に入れたら困るから出すそうよ。でも冒険者主体でしょうね。第一、遺産があるかも分からないのに騎士団まで出せないわ。」


かつて世界を統べたというフェリウス帝国。神に滅ぼされたというかの世界帝国は、滅亡して二千年たった今も現代に影響を与えている。特にその遺産を巡って戦争になることもあった。


その遺産の中でも、『七宝』と呼ばれるものが存在する。すべてをそろえれば、神の力を手に入れることができるという。


Ⅰ.念じればどんな場所でも行けるという『アリアドネのコンパス』

Ⅱ.あらゆる知識を詰め込んだと言われる『真理の書アルス=マグナ』

Ⅲ.膨大な魔力を秘めた『魔剣ファーレンハイト』

Ⅳ.聖なる力を秘めた『聖剣フォトン』

Ⅴ.森羅万象を見通す『オイラーの眼』

Ⅵ.あらゆる攻撃を跳ね返す『バルトリヌスの盾』

Ⅶ.不老不死をもたらすという『白磁の竜角』


特に最近は、七宝を探す場所として、人類未踏の地、ローラン大陸とフレイム浮遊大陸に注目が集まっていた。


「そう言えば王都まで行って、博士から何を貰ってきたの?」


博士とは王都レグニスにある王立大学に在籍しているジョシュア=ハーヴィー博士のことだ。リンドブルム王国の生んだ稀代の冒険家、ジョン=ハーヴィーの子孫である。彼とアルセイド姉弟はある夢で意気投合しあい、協力関係にあった。その夢とは『竜角人のお姫様を見つけること』である。竜角人はフェリウス帝国の繁栄を支えたという伝説の種族だ。


『白磁の竜角を煎じて飲めば、不老不死になれる。』


フェリウス帝国の時代から、不老不死の薬と伝わる『白磁の竜角』。それを求めた人間たちのために、竜角人はおよそ300年前に歴史から姿を消しまった。だがその存在は、ハーヴィーの冒険記や絵本で語り継がれている。


 「翠の魔女の遺品から、奇妙な魔道具が見つかったからリッカに見てほしいって。」

「え?そうなの!?でも私に見せるより大学の魔術師に見せた方がいいんじゃない?」

「リッカの直感を信じる、って博士言ってたよ。」

「そんな期待をされても困るなぁ。」


ハーヴィー博士とアルセイド姉弟は竜角人の痕跡を探していた。そしてたどり着いたのが、『翠の魔女』だ。翠の魔女は300年前の魔女で、様々な文献を探した結果、翠の魔女に竜角人の弟子がいたことが分かったのだ。翠の魔女が後世へと伝えなかった魔法の一つに仮死魔法が存在する。仮死状態で眠っている可能性はあった。それで今回、かつて魔女が住んでいた翠の森を探索することになったのだ。二人にとっては子供のころから慣れ親しんだ場所だったので、アティスの近くにある翠の森に竜角人がいるかもしれないと知った時には驚いた。


「これがその魔道具?」

「そう。今度の調査で使ってくれって。」

「使ってくれって言われてもこれランタンじゃない。」


リッカが受け取ったのはランタンの魔道具だった。


「特別な機能があるらしいよ。それ。」

「特別な機能?」

「魔力を収束して放射する機能があるんだって。博士は、それが一種の鍵だと思ってるらしいよ。」

「確かに、特定の波長の魔力を照射すれば開くタイプの扉あるけど・・・。」


リッカはランタンについているダイヤルをいじる。目盛りは刻まれていない。ダイヤルを回すと中に入っている球形の魔石の色———黄色と黒の割合が変わる。まるで月の満ち欠けのようだ。


「見た感じ30パターンあるみたい。う~ん、何回も照射して照合するタイプの扉だったらもっと増えるなあ。」

「でも30って何か意味があるのかな?」

「確かにそこにヒントがありそうよね。中に入っているのはパイロライトかしら。」


ランタンの中央には光源となる人工魔石パイロライトがはめこまれていた。高価な人工の黄色い魔石で、天然魔石(オリビン)よりも効果が高い。


「それと、ランタンの上部に意味深な文言が刻まれてるんだって。」

「え?どれどれ。」


ランタンの上部を見ると、かすれてはいたが文言が刻まれているのが分かった。


『翠の森 白の乙女 かくれんぼ 誰にも誰にも 見つからない 隠れたあの日のお月様 照らせば魔女でも隠せない 寝て待つのは嫌だから にせものにせもの かかげよう きっと乙女は見つかるよ』


「・・・たしかに意味深ね。それ以上に意味不明だけど。」

「白の乙女とか魔女って言うワードが入ってるから、博士は重要視してるみたいだね。僕も考えてみたんだけどさっぱり分からないや。」

「とりあえず現地に行って考えてみましょ。」


リッカはバックパックにランタンを放り込む。現地―――『翠の森』に行けば何か閃くかもしれない。二階の待合室からロビーに降りると、赤毛の女性に声をかけられる。


「こんにちはアルセイド姉弟!」

「こんにちは~。」

「こんにちはです。エルマさん。相変わらずお元気ですね。」


気やすく声をかけてきた赤毛の女性は、このアルセイド支部の受付を務めているエルマ・グートシュタインだ。長い赤毛をサイドポニーでまとめている。姉弟がギルドに入ったころからの付き合いでもうニ年にもなる。


「あっ。そういえばエルマさん。この前の依頼の完了報告をしておきますね。」

「はいはい。えっとクオン君の依頼は、ハーヴィー博士からのやつだったよね。」

「クオン、そういえば博士からの依頼って何だったの?王都まで行ったのは成果物持ってたんだよね。」

「えっと、結構地味な作業だよ?古い文献の暦を太陽暦に変換するっていう。」

「うわあ・・・。」


人類が共通して使っているフェリウス歴は1400年を境に太陽暦に切り替わっている。それ以前は太陰暦であり、古文書や古い文献の暦を太陽暦に焼き直して整理する作業が必要だった。


「はい。依頼の完了報告を受理いたしました。お疲れさま。」

「博士もわざわざクオンに依頼持ってこなくていいのに。」

「信用されてるんじゃないかしら?姉としては鼻高々なんじゃない?」

「そうだけどなんで私には持ってこないのかしら。」

「リッカは、ほら、こう、現場で輝くタイプだし?」

「さりげなく書類仕事はダメって言われた!?」

「まあ、リッカちゃんは研究室にこもってるイメージないもんね。」


博士もそのことを熟知しており、なによりリッカの『直感』を高く評価していた。古文書や文献から推理小説のように証拠を集めることよりも、時には『直感』が真実を導くこともある。博士は今回もその『直感』を期待していた。リッカは研究室よりも現地で輝くタイプなのだ。むしろ研究室ではリッカは何も閃かない。その反対がクオンで、いい意味で姉弟は互いを補い合っていた。


「じゃあ、そろそろ私たちは行きますね。」

「あら?依頼じゃないわよね?今日はどこに行くの?」

「翠の森を久しぶりに散策してみようかと。」

「翠の森はあなたたちにとっては庭みたいなものかもしれないけど、気をつけるのよ。魔物だって一応いるんだから。」

「もう二年も冒険者してるんですよ僕たち。そんなに心配しなくても。」

「私にとっては二人ともまだまだ子供よ!」

「あはは。心配してありがとうございますエルマさん。じゃあ、行ってきます!」


姉弟は元気よくアルセイド支部を出て、翠の森へと向かう。姉弟を見送りながら、エルマはふっと琥珀色の瞳を細めたのであった。


*********


 リッカとクオンは『翠の森』の中を進んでいた。かつて『翠の魔女』が居を構えていたが、今は無人である。二人はのどかな道をハーヴィー博士から貰ったランタンとにらめっこしながらゆっくり歩いていた。


「う~ん。わっかんないな~。やっぱランタンだけに夜に来た方が良かったかな?」

「かもしれないね。『誰にも誰にも見つからない』ということは結界か何かで隠されてるのかも。解除する条件に『夜』が含まれている可能性はあるね。」

「夜まで時間あるし、湖まで行こ。そこで夜になるまで考えよっか。」


翠の森には湖があり、透きとおった水をたたえている。そのほとりには、姉弟が遊び場として作った小屋があった。最低限の設備しかないが、休憩するには十分な場所だ。姉弟は湖にたどり着くと小屋に入り、テーブルの上にランタンとクオンが王都から持ってきた研究資料を並べて謎解きを始めた。


『翠の森 白の乙女 かくれんぼ 誰にも誰にも 見つからない 隠れたあの日のお月様 照らせば魔女でも隠せない 寝て待つのは嫌だから にせものにせもの かかげよう きっと乙女は見つかるよ』


「重要そうな言葉は、『翠の森』、『白の乙女』、『かくれんぼ』、『お月様』、『魔女』、『にせもの』かしら。」

「『寝て待つのが嫌』っていうのもひっかかるんだよね。どういうことなんだろう?」

「『翠の森』、これは今いるこの森のことよね。『白の乙女』は『白磁の竜角』を持つ乙女のことなのかしら。」

「多分そうだと思う。『かくれんぼ』はおそらく見つからないように隠れたことだろうけど、『お月様』はいろいろ解釈がありそうだ。夜なのかはたまた何かを例えているのか・・・。」

「『魔女』は翠の魔女よね。『にせもの』・・・なんのにせものかしら。」


姉弟はうんうんと唸りながら、ランタンに刻まれた文言を考えるが、なかなか結論は出ない。数時間考え、日が暮れてきたところで、リッカがギブアップした。


「ああ~!頭が煮詰まったわ!休憩しよ休憩!」

「そうだね。お茶でも入れるよ。」


小屋にある簡単な台所で湯を沸かすクオン。クオンはこういうことも得意だ。手際よくお茶を用意しリッカの前に持ってくる。リッカはずず~とお茶を飲みながらつぶやく。


「クオンは、本当に竜角人を見つけることができると思う?」

「どうしたの急に?」

「その・・・なんかさ、私の夢にクオンを巻き込んでいるみたいでさ。もう何年も探しているのになかなか見つからないし無理に付き合わなくてもあだあだだだだだあ!?」


リッカが言い終わる前に、クオンはリッカの頬をむに~と容赦なく引っ張る。


「何言ってるのさ!僕たちの夢(・・・)でしょ!言っとくけど僕は好きでやってるんだからね!そこを勘違いしないで!」


幼き日に姉弟で読んだ絵本。その中に登場する竜角人のお姫様。竜角人に会ってみたいという姉弟の願いはいつしか夢となり、時には笑われながらも探し求めてきた。


「・・・ごめん。ちょっと弱気になってた。」

「・・・父様に何か言われたの?」

「何も。でも空気でわかるよ。」


ハーヴィー博士の後ろ盾はあれど、姉弟の父親であるアルセイド伯爵は竜角人を探している二人のことをあまり快く思っていない。跡継ぎでないため今のところ比較的自由ではあるのだが、探索費用は自分たちで調達する、リンドブルム王国からは出ないという条件で今のところ許されている。なので、国外の探索にはついていけない。


「まだ諦めるのは早いよ。だいたい国外に出れないんだから、ほとんど冒険らしい冒険はしてないじゃないか。もしリッカが王国の外に出るなら僕はついていくよ。」

「えっ?」

「僕はリッカの味方だからね。」

「・・・ありがと。」


頬を染めたまま、恥ずかしさを誤魔化すようにお茶をすするリッカ。クオンはそんなリッカを微笑ましく見つめていた。


「さっきの文言だけど、翠の魔女についての研究資料と突き合せれば何かわかるかも。」

「博士が言ってた、魔女の不審な点っていうやつ?」

「そうそう。まとめると、弟子の失踪について何も語っていないことと遺品がほとんどないことだね。」


最近博士が当時の記録を洗いなおしたところ、弟子の失踪にも関わらず何も語っていないことと、数多の研究をしていたのにも関わらず遺品が異常に少ないことが目についたらしい。しかも数少ない遺品は散逸してしまい探すのも一苦労。今回のランタンも博士が苦労して見つけたものだった。


「んん?何も語ってはいない?」

「なにかひっかかることでもあるの?リッカ。」

「いやあさ。何も語っていないのにさ、なんで弟子の失踪日は残ってるんだろうって思って。」


翠の魔女の弟子が失踪したとされている日はフェリウス歴1215年9月19日だ。


「・・・確かにそうだね。もしかしてわざと残した?」

「日付に意味があるってこと?う~ん。」


リッカは唸りながら、頭を抱える。リッカが考える時のいつものポーズだ。その時、リッカのお腹がきゅ~となった。


「ははは。ごはんにしようか。」

「・・・大盛りでお願い。」

「りょーかい。」


頬を染めつつ、ちゃっかり大盛りを要求するリッカに苦笑しながらクオンは料理に取り掛かる。すでに太陽は沈み、星が輝き始めていた。


*********


「ごちそうさま~。」

「お粗末様でした。」


満腹になり幸せそうなリッカ。クオンは食器を片付けながら、これからの予定を聞く。


「夜の探索はする予定?」

「うん。ランタンを試してみたいしね。」


リッカは窓から外を見る。夜空には星が輝き、満月が雲の間から顔をのぞかせていた。


「今日は満月かあ。たしか竜角人は満月の夜を十五夜って言ったんだっけ。」


リッカはジョン=ハーヴィーの著作の中に記述されていた、竜角人の月の呼び名を思い出していた。


「そうだね。太陰暦を使ってたみたいだから、暦で15日はいつも満月だったからそう名付けたらしいよ。」

「・・・ん?いつも15日は満月?どういうこと?」

「太陰暦は月の位相を元にした暦だから、日付と月の位相が対応してるんだ。だから古文書の日付を見れば月の位相が分かるんだよね。」


その言葉に、リッカの頭の中でバラバラだったピースが組み上がり始めた。


「・・・ねえ。さっき言った失踪日って太陰暦?」

「ん?そうだよ。一応論文では太陽暦には直してあるけど。」

「太陰暦で、竜角人は19日の月は何て言うの?」

「19日は・・・たしか寝待月だったかな。・・・あっ!『寝て待つのは嫌だから』ってもしかしてそういうこと!?」

「それにランタンの人工魔石の色のパターンは30。これはきっと月の位相に対応してるんだわ。」

「たぶんそうだと思う。1朔望月は29.5日だからカレンダー上では29日と30日があるけど、竜角人は月の満ち欠けに応じて30通りの名前を付けてたはず。」

「まとめると、『隠れたあの日のお月様』が寝待月。『寝て待つのが嫌だから にせものにせもの かかげよう』は、つまり月の位相を模したこのランタン―――『にせもの』で寝待月の魔力の波長を放射しろってことだと思う。このパイロライトを寝待月と同じ色にしてさっそくやってみましょう。」


リッカはおそるおそるランタンを起動させる。人工魔石パイロライトが輝き、淡い光が灯る。パイロライトの色は全体が黄色で満月のようだ。


「満月と同じ波長の魔力を感じる。やっぱり、このランタンは満ち欠けに応じた月の魔力を再現して照射できるんだわ。」


月は巨大な魔石であり、その満ち欠けに応じて違う波長の魔力を放射していると言われている。このランタンはそれを再現できる品のようだ。


「目盛りに数字はないから、直接パイロライトを見ながら調整しないといけないわね。」

「うん。」


リッカは深く息を吸い、ランタンのダイヤルを回そうとする。しかし、なかなか回さない。


「どうしたの?リッカ。」

「ごめん。ちょっと待って。」


その時、クオンはリッカの手が震えているのが分かった。クオンはそっとリッカの手に自分の手を重ねる。


「一緒に回そう?そうすれば怖くないでしょ?」

「・・・クオン。うん!一緒に回そう!」


そしてアルセイド姉弟は一緒にダイヤル回す。パイロライトの色を寝待月と同じ色合いにすると、ランタンが強く輝きはじめ、姉弟の足元に魔法陣が現れた。同時に無機質な声が響き渡る。


『生命反応に合致なし。認証のためパスワードを唱和してください。認証失敗の場合、キーはセキュリティ上の安全のため破壊されます。』

「!?パスワードなんて分からないよ!どうしよう!」

「・・・ここは私の直感を信じるわ!」

「え?・・・パスワードのあてがあるの!?」

「翠の魔女はお茶目だったとも聞くわ。それを考えると私の直感がこれだと告げている!」


リッカは深呼吸すると、その直感で得たパスワードを叫ぶ。


「翠の森 白の乙女 かくれんぼ 誰にも誰にも 見つからない 隠れたあの日のお月様 照らせば魔女でも隠せない 寝て待つのは嫌だから にせものにせもの かかげよう きっと乙女は見つかるよ!」

「それってランタンのもんご・・・」

『使い捨てキーの起動を確認。結界を一時解除。起動者二名を転送します。』

「やったぜ!」

「うそぉ!?」


姉弟の叫びに応えるかのように魔法陣の輝きが増す。


「きゃあああああ!?」

「うわあああああ!?」


姉弟の悲鳴の後、何事もなかったように光と魔法陣が消える。小屋の中には、誰の姿もなかった。そして残されたランタンは役目を果たしたと言わんばかりに、砕け散り虚空へと溶けていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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