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神の詫び石 ~日常系の異世界は変態メガネを道連れに思えば遠くで草むしり~  作者: みくも
のっぴきならないタイプのなにかなのは解るがこんなん絶対笑うやん編
789/800

789 中身は普通

 ゴブリン化したお料理メガネたもつおじさんを抱っこして、錬金術師の調査の手から守らんとする使命感にあふれたじゅげむの献身。

 これをまね、オットーのところの小さな幼児もやはり安全なゴーレムからおりてきてゴブリン化しててもなんとなくしゅっとしたテオを抱っこする――と言うよりはただぎゅうぎゅう抱き付いていた。

 その周りを「それね、我の! 我のつまなんだからね!」とキャンキャン走り回るフェネさんはまあいいとして、不安。

 この胸にわき起こる、言い知れぬ不安。

 子供らがゴブリンの姿をしたものに親しみと愛着を持ちすぎている。

 しかもそれ、中身は普通におっさんとかなんやで。

 ただ、よく考えたら我が家には暴れ者トロールの金ちゃんもいて、こちらはじゅげむと我々からだいぶ重めの親愛とちょっとした信頼をよせられているので手遅れのような気持ちはとてもある。

 ついでに、その金ちゃんもまたトロールでありながらゴブリンと化した姿で、しかしなお堂々とした強者感あふれる振る舞いで周囲の小さめゴブリンからの尊敬を集めた。

 具体的に言うと、はあはあとヤバげな空気しかかもさない錬金術師の集団に追い掛け回された中身人類のゴブリンたちを背にかばう形でキシャーッと威嚇。日陰の黒っぽい生物である錬金術師らを「はわー」と撃退するなどしていた。

 多分だが、金ちゃんには人ゴブをかばったり守ったりする意図はなく、小さめゴブリンが逃げ回る内にたまたま、元が大柄なトロールであるためかほかよりいくらか体躯の大きな金ゴブの影に入ったタイミングでその人ゴブを追い掛ける錬金術師が金ちゃんをはさんではあはあとし、その至近距離でのウザさにキレただけのように思う。

 金ちゃんは小さき者には鷹揚な強者であるものの、それを上回る勢いでただあるがままのトロールなのだ。

 そんなことがあり、また、全身を計測するだけならまだしもさすがに採血はダメだったらしいじゅげむの涙にも思うところがあったのだろう。知らんけど。

 興味深い研究の前には倫理観などどこ吹く風の王城勤めなのに全然社会性のない錬金術師の集団も、いくらかの自重と言うものをほんのりうっすらなんとなく見せてほんの少しだけおとなしく、しかし「なんかわかんないけどすごいおこられちゃったね。ぼくら、かわいそうだね」みたいな空気をかもし出してめそめそと、しかしゴブリンの調査は全然やめなかった。思うところとは?

 もしかしたら錬金術師には反省と言う機能が搭載されてないのかも知れないなとチラっと思うが、一応、いきなり追っかけ回して捕獲したりするのはやめるなどなけなしの配慮はちょっとだけ見せた。

 黒っぽいローブのどこからともなく取り出したボソボソの干し肉をゴブリンの手にそっとにぎらせ「アッアッ、あの、アッ……」と交渉したりと、ちょっとだけ改善が見られるような、別にそんな大して変わらないような感じではある。

 それでも鷹揚なる金ちゃんなどは錬金術師から差し出された干し肉を仕方なさそうにガジガジとかじって好きにさせ、その様子はさながらお休みの日にテレビの前でごろごろしてたら暴れたい放題の子供に見付かり容赦なく好き勝手に遊ばれるパパ。

 包容力である。

 と言っても金ちゃんは現在、小さめのゴブリン――ほかの人類ゴブリンに比べるとだいぶどっしりとはしているものの、それでも大人のイエネコほどの体格だ。

 そのため、実際の絵面としては小さなゴブリンをもっとずっと大きな人類がはあはあと取り囲んでいる格好である。

 なんだろうね。こわいね。

 人類の中でも我々地球産の現代っ子、と、いい勝負でひ弱な錬金術師ですらそうなってしまう体格差なのだが、それでいて金ちゃんがあまりにも鷹揚であるがため一時的に体格では圧勝しているはずの錬金術師らが小さな金ゴブにあやされ遊ばせていただいてる感がかもされる。さす金である。

 矮小なるにんげんの身勝手な茶番にお付き合いくださり、いつもありがとうございます。


 そうして、知的好奇心と探求心とただの趣味に突き動かされた錬金術師がはあはあと元人間の小さなゴブリンを鼻息荒く追い掛け回し、「ええ……」と心の底から引かれて気味悪がられながらになで回す勢いで付きまとった結果、ぱっと見での判別は難しいが多めに装備したレースによってフェミニンさを演出している女子ゴブなどから「本当にむり」と、断固とした真顔の拒絶を受けたりする内に日暮れが近くなってきた。

 なんとなく、人権感覚や配慮についてあまりにも問題をかかえすぎてはいるが錬金術師がちょっとだけかわいそう、みたいな気持ちが胸にあふれる。

 そして同時に、ただそれはそれとして本当にむりと言うのも全く矛盾なく納得できてしまった。

 錬金術師、相手の様子とかうかがわず自己都合でぐいぐい行きすぎんのよ。コミュ力がマイナスに振り切れてるから……。かわいそう……。

 で、多分だが、ダンジョンの攻略は一応済んだ。いまだゴブリンはゴブリンの姿ではあるけども。一応。一応ね。

 夜間の森は油断ならないし、我々がうっかり連れてきてしまった子供らもいる。

 野営に慣れた兵士や冒険者がほとんどであっても、ゴブリンのままの人員も多く不安要素を数え上げればキリがない。私とか。

 やだよね。外で寝るの。夜、暗いし。虫いるし。虫で済めばいいほうで、魔獣とか出るし。おしゃれキャンプとはちょっと話が違うよね……。いのちだいじに。

 それで今日のところは一旦撤収。

 急いでラオアンの街へと戻ると、現場まで出向くほどではないにしろいくらか気にしてくれていたのか、某メルヒオール少年が街の入り口でなんか待ってくれていた。

 そして、それをなんとかするために張り切ってダンジョンへ行ったのにまだ小さいゴブリンの姿をしたままの人類。

 また、その人ゴブにはあはあよたよたと付きまとう黒ローブの集団。

 中でもなんかやるせないような表情で子供らにずるずる抱っこされ、もはやされるがままのゴブリンと化したメガネやテオなど我が家の男子らを思いっ切り指さしたメルヒールから、「あはははははははははは!」と泣くほど笑われて一日が終わった。

 ひどい。

 でも解る。私も笑う。おもしろいもん。仕方ない。

 いや、なにがってね。こんなぞろぞろと、そしてみんな大体どんよりしてるのに普段からどんよりしてる黒っぽい錬金術師たちだけがはあはあと元気に帰ってきたらそれはもうなんか……むりじゃん。おもっくそ笑う。

 なお、これはあくまでも一般論であり誰でもこうに違いないと言う話で、決して我々に人の心が足りないとかのあれを認めている訳ではないのでそこは本当によろしくご理解いただきたいと思います。

 人聞きが悪いと察したら主語を大きくして全人類を巻き込んで行くのも辞さないからな私は。

 そんな感じでこの日は目的のダンジョンを攻略したのにゴブリンはゴブリンのままだし、メルヒオールにはバカ笑いされるしで、なんだか疲れちゃったよとか言いながらごはんだけはしっかりいただきうだうだと休息。

 お宿はラオアンの街の冒険者ギルドだ。

 たもっちゃんやテオを含めて人類ゴブリン化現象がまだ続いた状態なのでほかのゴブリンと合わせて経過を見たいのと、料金を払える冒険者なら誰でも利用できる宿泊室に、とは言え普段なら断られてしまうトロールの金ちゃんや白き毛玉の自称神たるフェネさんも泊っていいと許可が出たのだ。

 副ギルド長がこちらの事情をかんがみて、「仕方ない」とだいぶ譲歩してくれた感触がある。助かる。

 逆に言うと普通なら断るところなんだなとも思ったが、テイマーが連れたちゃんとかしこい従魔ならともかくフェネさんはあまりにフリーダムにキャンキャンしすぎた毛玉でしかなく、トロールはどこまでもトロールなのでそれこそ「仕方ない」と言うような気持ちは我々にだってなくはないのだ。仕方ない。

 あと、中身は人間の冒険者ではあるが、我が家のゴブリン男子らも泊めてもらえて本当によかった。かさばりませんので……。見た感じがあれですが。ちょっとしたネコくらいのものなので……大きさだけで言うと。

 こうして、決して豪華ではないけどもちゃんと安心して眠れる寝床を確保して、我々も、やるだけはやった。もうなにも解らん。みたいな気持ちでどろどろと眠り、翌日。

 全然やるだけやってもなかったなとじわじわ気付きつつ、我々は冒険者ギルド一階の酒場を兼ねた食堂で数ある丸テーブルの一つに陣取りその中央にそっと置かれたグレープフルーツ大の魔石をしんみりと見詰めた。

「レイニーさあ……」

「この件についてはリコさんも同罪かと思います」

 とりあえずなんか言おうと思ったらレイニーが食い気味に反抗し、いまだゴブリン姿のメガネが「言い訳が早い」と妙な感心まじりにうなずいて称えた。言い訳が早い。

5話更新の3。

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