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道中

歩きながらアーヤにこの世界のことを質問してみる。


「この世界って暑くなったり寒くなったりするのか?」コクッ


「野獣が出るって聞いたけどこの道は大丈夫なのか?」コクッ


「お腹空いてないか?」ブンブン


こんな感じだ。傍から見ると変かもしれないな、でも1人よりは何倍もましだ。

走行していると目の前に分岐が見えた。


「アーヤ、どっちに行けば良い?」


するとアーヤが目をウルウルさせて、更なる八の字眉でこっちを見ている。察しはついているが、そんなの関係なく女の子の上目遣いはかわいいな!


「わかんないんだな?」 アーヤがうんうんと頷く。


さぁて、どうしたものか。まぁ悩んでもしょうがないし、右、左どっちに行くか迷ったら右に行った方が良いってマンガで見たな。そんなんでいいよこの際!


右の道を歩き出す。その時アーヤが俺の袖を引っ張った。


「うん、どうした?」振り向くとアーヤが何かを俺に差し出している。これは・・・ペンダント?


「これを、俺に?」アーヤが頷く。なんでこのペンダントを俺に渡したのかわからないが、受け取っておこう。もしかしたらばあちゃんから預かっていたのかもしれない、たとえ今覚えていなくても。


ペンダントを身に着けて歩いていると、行商人っぽい大きめな荷物を担いで歩いている男が見えた。

うーん、どうしよう。この状況は良いとは言えない、適当に道を決めてテキトーに歩いているだけだ。とりあえず話しかけてみよう、ちょっとスピードを上げてその人に追いつく。


「あの~、ちょっといいですか?」男が振り向く


「はぁ、はぁ。え?どうしました?」


「僕らクルトから来たんですけど、な・」


「君たちクルトから来たのか!?よく生きてたね!」食い気味で返してきた


『ビンゴ!』心の中で叫ぶ


「何か知ってるんですか!?僕は運良くその時クルトにいなかったんです。でも、この子が巻き込まれちゃって。何があったか教えてもらえませんか?」


「はぁ、はぁ。いいよ。でも俺は商人なんだ、タダというわけにはいかないね!」


『いきなり交渉なんてハードル高いよー!』アーヤが喋れていたらと思わずにはいられない


「そうだなぁ、はぁ、1000ヤンでぇ、どうかな?」


ヤン?この国のお金の名前か。ていうか相場が全くわからないから1000ヤンが良いのか悪いのかわからねー!せめてもうちょいこの世界を見た後だったら!


「アーヤ、今俺たちは1000ヤン払えるのか?」


アーヤは頷くが眉毛が八の字のまま、きっと何かあるんだ。でも相手は商人、うかつにボロは出せない!

あー!さっきから首のあたりがざわざわするな!


「さはぁ、払えるなら早くしてくれるかな!」


『くぅー!』どうする!?どうする!?


気になる首をさすりながら相手を見ると、そういえばさっきからやけに辛そうにしている。呼吸が荒い。ちょっと揺さぶってみるか!なるようになれ!


「やけに辛そうですけど、どうかしたんですか?」


「え?ちょっと、ね、長旅で疲れていてね。でも野宿は危険だから、はぁ、次の街までは止まるわけにはいかないんだよ」


「もしかしてー、喉渇いてません?」


「あぁ、よくわかったねぇ。クルトに寄れなくてずっと歩きっぱなしなんだよぉ」


ここしかない!


「あの~、僕ら水だけはあるんですけど、水と交換でどうです? この辺で水がある所はあの山の近くまで行かないと無いですよ。この水はそこで汲んだんですから」


『この近くに水があるのかは全く知らないけどな!』


行商人の顔が歪む。かなり考えているようだ。


「ほら、うまいよ!」これ見よがしに水を見せつける。バイトで客相手に物を売る経験がこんなところで活きるなんて!


「わかった!教える!教えるから水をくれー!」ダムが決壊したかのように行商人が叫びだした。


とりあえず勝った!だけどまだだ!とどめを刺す!


「こっちは物、あんたは情報だ。水を飲んだ後しらばっくれないとは限らない。先に教えてもらおうか、クルトで何があったのか、そしてここから街までの道をな!」


下手に出ていたところから一気に声を張り上げて相手を脅しにかかる。こういう相手には手加減をしてはいけない。ちょっといただく情報も水増ししてある、水だけに!


「クルトを襲ったのは帝国軍だ!何やら帝国の占い師が災いをもたらす者が現れたとか言い出して、居そうなところを片っ端から襲っているらしい!あぁ、あと、チスタにはここからあっちに行けば着く!だから頼むー!」


「いいだろう!」俺は荷車の中から水の入った小樽を1つ取り出し、やつに投げる。男は一心不乱に水を飲んでいる。喉の渇きが限界に近かったのだろう。


「ふぅ。アー」後ろのアーヤに言いかけると


アーヤが俺の袖をぐいっと引っ張った。そのまま振り向くと、パチパチと笑顔で拍手してくれた。


「ふふっ」俺もつられて笑顔になる。


「ちょっとは手を貸せこのやろー!」アーヤの頭をわしゃわしゃする


アーヤは笑いながら「やめてよー!」と言っているようだ。


ぐったりと座り込んでいる行商人を尻目に歩き出す。


何もわからないけど、とりあえずなんとかなった。そしてこれからもなんとかしていこう、この笑顔が見れるのなら

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