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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
9/37

高専生とソフトボール

 負けた。

 普通に負けました。

 5年生の球速すぎて打てるわけがない。僕の体感だけど200キロは出ている。そもそも、17歳と20歳が本気でソフトボールして勝てるわけがない。

 ソフトボールもそうそうに負けた僕は他のクラスのソフトボールの試合をみることにした。

僕が試合を行っていたグラウンドでは1年生対4年生の試合が始まるようだ。4年生も5年生と同じくらい練習をしているのでこの試合も4年生が勝つのだろう。

そういうものだ。

 3年化学科などは、8時間が週に3つとかあるのに対して、4年機械科などは授業時間が少ないのを、前々から不満に思っている。授業の時間が違うのに、卒業するときは同じレベルで見られるのだ。

 もっと、勉強していることに対して褒めてほしい。讃頌してほしい。胴上げとかしてほしい。

 4年生が圧勝かと思っていたら1年生のピッチャーも変化球を巧みに使っているので試合は思ったよりも白熱しそうだ。

 1年生で、さらに、あんな見た目で、さらに、変化球を巧みに投げられる人に心当たりが1人だけあった。そのうえ、ここからでは良く見えないが女子であることも確認できる。

 ほぼほぼ叡智で確定であろう。

 それにしても投球フォームがソフトボールの、なんちゃらウィル投法というよりも野球のアンダースローに近いのだが、これはセーフなのだろうか。

 ピッチャーがチェンジアップで三振を取ると、こちらに気付いたようで満面の笑みで手を振ってきた。やっぱり予想通り叡智であった。手を振られたので振り返すと叡智がこちらに走ってきた。

「能登先輩来てたんですね」

「僕もさっきまで試合に出てたんだよ」

「負けたんですか?」

 なぜ負けた前提で聞くのだろうか。あっているけど。

「負けたよ」

「じゃあ私が先輩の分の仇を討ちますね」

 叡智が戦っているクラスって僕が負けたクラスじゃないから相手の4年生からしたらいい迷惑って感じだろうか。

 そういって叡智は走ってベンチに行ってしまった。

 次の回になっても叡智は三者凡退で切り抜けた。女子なので球速は男子よりどうしても劣ってしまうが変化球の精度が非常に高いので男子にも十分に張り合っている。

 次の回が終わって、また叡智はこちらに走ってきた。

「能登先輩どうですか。また三者凡退で切り抜けましたよ。すごいでしょう?」

「本当に凄いね」

「じゃあ体育大会の打ち上げで何か奢ってくださいね」

「え、打ち上げするの?」

「あたりまえじゃないですか。修繕部で打ち上げしますよ」

「叡智もクラスの打ち上げとかあると思うよ」

「部活の打ち上げがあるといって断りますよ。能登先輩もクラスの打ち上げ断ってくださいよ」

「わかりました」

 強いリーダーシップ力に押されてつい敬語になってしまった。先輩の威厳などない!

「じゃあ私の打席もうそろそろなんで見といてくださいね」

「わかったよ」

 そういって叡智はそのまま打席に向かった。そんな打つ順番ギリギリまで話をしないで、準備をしておけばいいのに。

 叡智は打席に立つとアウトローに来た初球を流し打ちしてライト線ギリギリに打った。叡智は二塁へと向かう。ゆうゆうと二塁にたどり着いた。素晴らしい才能だ。野球部とかに入ればいいのに、なぜ修繕部に入ってしまったのだろうか。

その後ヒットが続いて1点を先制した。

 このままいくと1年生が勝つ展開も十分にありえる。やはりピッチャーが良いというのは、勝つ上で重要なポイントであろう。勝負に勝つも負けるも叡智次第といったところだろう。叡智の変化球が捉えられることはあまりないと思うが、ストレートを狙い打ちされてしまったら球速があまり速くないぶん、打たれてしまうだろう。もう一球種変化球があればだいぶ戦い易くなるだろうが。

 次の回も叡智は無失点に抑えた。

 そしてまた叡智は僕のところに走ってきた。

「打ち上げの話なんですけど、他の2人にも連絡しといてくれませんか?」

「どこにいるかわかる?」

「彼さんが向こうで試合してますよ。先輩は部室にでもいるんじゃないですか」

「分かったよ」

「じゃあ分かったらすぐ行動する。ほら急いでください」

「はい、今すぐに」

 僕は叡智のリーダーシップ力に従って、なぜか小走りだった。先輩としての威厳というものを神に欲した。

 僕は今の場所よりも奥にあるソフトボールコートに向かう。修繕部のソフトボール参加率が高い。なんせ新入生焼肉大会で野球をするぐらいだから、きっとみんな野球大好き少年なのだろう。おっと、半分は女子であり、さらに野球ではなくソフトボールだ。というツッコミは不要である。これはボケだ。おもしろ!めちゃくちゃウケる!

 僕は1人で寂しくボケていると、いつのまにか奥にあるソフトボールコートについていた。

「あ、能登じゃないか。どうしたんだい?」

 彼はベンチに座っていて仲間の攻撃をみていた。

「なんか打ち上げをするらしいよ」

「分かったよ」

「ずいぶんと物わかりがいいな」

「さしずめ叡智さんに打ち上げしようって言われてクラスの打ち上げを理由に断ろうとしたけど無理だったんでしょ?」

「名探偵」

「普通そこは名推理とか御名答とか言うんじゃないの。名探偵って役職でしょ。まあ、意味は通じるけど」

「細かいことは気にしなくていいよ」

「でもなんでそんなに集まることを毛嫌いするんだい?」

「面倒くさいんだよ」

「そんなこといっていたら一生彼女できないよ。アニメじゃないんだから、草食系だとなんも起きないよ、現実は。そのつもりはなかったけど、気付いたらハーレム状態なんてあるわけないじゃないか。ふざけているの?」

「いや怒りすぎだろ」

「それほどまでに僕は能登のことを心配しているんだよ」

「うーん。でもなあ」

「何をそんなに迷っているんだい。先輩なんて金髪のツインテールで、いかにもアニメ感があるんじゃない?」

「いや別に僕はアニメキャラじゃなくちゃ駄目っていう訳ではないんだけどさ。三次元でも余裕なんだけどさぁ」

「なんだいウジウジして気持ち悪いな。やれやれ系草食系主人公でも狙っているのかい?選り好みしている状況じゃないでしょ」

「女子高専生って、女子普通高生とはやっぱり違う感じがするんだよね。高専の雰囲気が女性を変えるのかなぁ」

「何度も言うようだけど、能登には選り好みしている余裕なんてないじゃないか。言っていることも分かるけど」

 じゃあ僕はもうそろそろ攻守交代だから行くね。打ち上げは参加するよ。と言って彼は守備についていった。

 つい女性の話をしてしまったな。やれやれ。

やれやれ系主人公の誕生である。


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