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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
8/37

高専生と体育祭

 新入生歓迎焼肉も無事に終わり、授業もツカツカと進んでいった。

 僕も授業に置いて行かれないように、今年は絶対に進級するという意気込みで勉強を頑張った。過去形なのはもう頑張っていないからである。

 授業中に携帯を使うのは高専生にとって当たり前のことである。先生が「寝るのはいいけどスマホは辞めてくれ」と言ってしまうほどである。そんな高専生でも実験をやらせてみれば、そこら辺の大学生よりもテキパキできるのだから分からないものだ。

 そしてそして、時期は高専体育大会の時期になった。

 高専体育大会はクラス別で行い、競技の順位によって点数が振り分けられる。点数の合計点で総合の順位が決まるというオーソドックスな方法だ。

 競技はソフトボール、サッカー、バスケ、バレー、メドレーリレー、駅伝、バドミントン、ウォークラリー、そして決意表明である。

 決意表明というのは体育大会の開会式と同時に行われるもので、簡単に言ってしまえばクラス対抗一発芸大会みたいなものである。

 僕はソフトボールに参加することになった。競技には何種目参加してもいいのだが、僕はクラスの中心人物で尚且つスポーツバリバリ人間ではないので、この中でも比較的足を引っ張ることもなく、比較的楽なソフトボールだけに出ることにした。

 その気になれば全種目不参加ということもできるのだが、クラスメイトからの批判をかってしまうので、1つだけエントリーしておけばいいだろう的な話である。

 あるあるだ。

 入学してから5年間ずっと同じクラスというのは、つまりスクールカーストが5年間変わらないということである。クラスで避けられている人は5年間ずっと誰からも避けられてしまうのだ。とにかく、一度落ちてしまった信用や信頼は相当な努力をしないと戻らない。戻さなければいけない大変な努力と、落ちないようにする少しの努力のどちらかを取るかと聞かれた僕は、落ちないようにする少しの努力を取ったのだ。

 いつものように坂を上って高専に行く。

 今日は登校している高専生のほぼ全員がジャージを着ている。こんなことは年に1回、体育大会がある今日と明日くらいだろう。

 教室に着くとクラスTシャツが配られていた。クラスTシャツはイギリスの有名なサッカーチームのユニフォームをベースとして、背中に好きな文字を入れられる仕組みになっている。僕が入れた文字はSNSのアカウント名である“大魔王”である。正確なアカウント名は“ちんちんちんぽこちんちん大魔王”なのだが、Tシャツを洗濯に出す時に、親から何か言われるだろうし、自分でも着ていて恥ずかしいので辞めておいた。ちんちんちんぽこちんちんの部分のインパクトが強すぎるため、大魔王と呼ばれることはない。“ちんちん”か“ちんぽこ”のどちらかである。

 クラスメイトからTシャツを受け取って着替える。クラスメイトも着替え始めている。しばらくすると放送が流れて全校生徒が体育館へ行くようにアナウンスが入る。

 クラスメイトがゾドロゾドロと体育館へ向かう。

 僕も体育館へ向かう。

 入学したころは教室の近くにある情報処理演習室に到着するのにも一苦労だったが、今となっては教室からだいぶ遠い距離にある体育館にも迷わずに行けるようになった。

 体育館ではクラス順に2列で並ばされた。このときの僕は、体育館の前方で行われる決意表明が見たいため、前の方に並んだ。なにかと行事があるときは大体前の方に並んでいる気がする。ただの朝会のときは迷わず後ろに並ぶが。ただの朝会は純粋におもしろくないしね。

 全校生徒が並び終わると生徒会の司会で体育大会開会式の始まりが告げられる。最初のプログラムは校長の挨拶のため、校長が登壇する。

 校長が話し始めると同時に降壇を促す拍手が在校生から挙がる。

 校長は「すぐ終わるから待ってね」と言う。

 在校生からは笑い声が聞こえる。1年生の頃に校長だった人は、在校生が拍手をすると怒り出したため、今年の校長は前回の校長よりはマシなのではないかと多くの在校生がこの瞬間に思ったのではないだろうか。この人はノリが分かる人だ。と。

 その後校長が降壇して、生徒会長の挨拶、体育大会の諸注意と続いて決意表明になった。1年生から発表を始める。いかにも1年生らしい、初々しい発表だった。発表を辞退したクラスは、そのクラスが発表を行わないとアナウンスされると同時に、会場からブーイングが上がる。1年生なら不参加でも仕方ないし、ブーイングも本当に非難を浴びせたくてブーイングをしているのではないだろう。

 1年生の発表が終わり、2年生以上の発表になる。

 去年経験しているだけのことはあって、1年生と比べてもレベルが高い。僕のクラスである2年化学科は、留年生がコントじみたことをしている。会場のウケはなかなかのようだ。なかには、校長にお弁当をあげたり、今期の人気学園アイドルアニメの踊りを全身タイツで踊っている人もいた。アクティブなオタク。

 決意表明も終わって、体育館はバレー大会の会場になった。僕は特に見たい種目もなかったし、もう少しで僕が参加するソフトボールの大会がはじまるので、体育館を抜けて第二グラウンドに向かうことにした。

 高専には野球場に加えてサッカーやラグビーなどができるグラウンド、地面が土で出来た第二グラウンドがある。さらにテニスコートも軟式と硬式各三面あり、剣道場、柔道場、円盤投げ専用のスペースもありと運動ができるスペースは結構あるのだ。さらに、本校舎に男女寮、駐車場に実習工場などもあるので高専全体の敷地は膨大な量になる。

 ソフトボール会場に行ってトーナメント表を確認する。初戦の相手は5年制御科だった。

基本的に5年生は授業時間が少ないため放課後に練習をするので仕上がっている。ぶっつけ本番の2年生と戦っても話にならない。戦う前から負けることが決定している。

 クラスのソフトボール出場選手と話をしてオーダーを決定した。僕は7番サードだ。体育の授業でソフトボールをやっていたため、基本的には授業と変わらない守備ポジションをベースとした。

 野球部は出場者数が2人と制限されているためクラスの野球部が1人控えにまわった。

 まもなくして僕の出場する試合が始まった。


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