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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
31/37

メタフィジカルと高専生

 学校に着いたら時刻は2時を指していた。

 体育館に行くには早すぎたため部室に行くことにした。

 来年からは名前が変わるらしい、修繕部の部室である。本来ならこの高専祭期間中は部室に入ることは禁止されているのだが、しかし合鍵を持っている修繕部にはそんなことお構いなしである。

 部室に着いたら、いつものように特に何をするでもなくダラダラとすごした。

 これから数時間後には大勢の生徒の前で演奏するというのにこの落ち着き用は何だろうか。そう言いつつも僕もダラダラとしてしまっていた。やはり人間は怠惰に勝てない。

 学校の中では、出店の多くは売り切れになったため後片付けをしていて、図書館前ロビーでは学生会主催のイベントが行われている時間帯だろう。

 時刻が3時前になったので体育館に移動する。体育館では前のバンドがステージの上で練習をしていた。それを見ていると僕もあのバンドのようにステージに立つことを嫌でも想像してしまい、緊張してしまう。

 ゲロを吐いた。

 嘘です。

 前のバンドの練習が終わったので僕もステージに上がる。キーボードを置くためのアレをセットして、その上にキーボードを置く。アンプ的なヤツにセットしたり、チューニングしたりと全員のセットが終わってから、一通り流して演奏する。一通り流すと20分弱かかるので、最初でラストの練習だろう。演奏してみると、自分でも驚くほどに大きなミスをせずに演奏することができた。そして、この時間は思いのほか早く過ぎていった。無我夢中というか無意識というべきなのか。

体育館で演奏することによって、より本番が近付いてきたと実感してきて、緊張がよりいっそう強くなってきた。

 その緊張は部室に戻っても変わることはなく、僕は無意識のうちに顔に緊張が出てしまっていたようで下野に心配されてしまった。

「大丈夫かい?」

 下野から大丈夫という言葉がでるとは思えなくて僕はそっけない返事をしてしまった。

「ああ」

「やれやれ、なんだい。僕の人生は不幸の連続だ!みたいな顔しないでくれよ。能登の人生はそれなりに幸せだと思うよ」

「いや、そんなことは思っていないから安心してくれ」

「いいかい、人間っていう生き物は自分にとって良いことは好きなだけ想像できるけど、悪いことはある程度までしか想像できないように脳がストップをかけているんだよ、たぶん。そうしないと人間は絶望を感じて全員自殺してしまうからね。だから、良いことばかり想像してしまって、でも自分の人生は想像とかけ離れてしまっているから自分はダメな人間だとか悲しい人間だとか感じてしまうんだよ。ゲームや小説とかのバッドエンドを大きく数種類にカテゴライズできてしまうのは脳がストップをかけているからなんだよ」

「その持論を言いたかったために僕に話しかけただろ」

「ばれてしまったね」

 下野はいつも適当なような、でも的を獲ているようななんとも定義しづらい発言をする。どれが本当でどれがジョークなのかわからない。

 でも、下野のお蔭で若干だが緊張がほぐれたような気がした。

「ねえ能登」

「なに?」

「次回はいよいよ演奏するから」

「と」

「ん?と?」

「突然のメタフィジカルウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 混じりっ気のない、突然のメタフィジカルだった。

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