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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
30/37

坂と高専生

 翌朝、メイドさんの粋な鍋をお玉でカンカンする伝統的なアレで目が覚めた。

 お目覚めは最悪である。今時そんな起こし方する人がいるとは思わなかった。というかそもそも、その鍋とお玉はどこから持ってきたのだろうか。わざわざキッチンから持ってきたの?なら普通に起こせばいいのに。

 という疑問を飲みこむ。朝から揉め事は嫌だった。というか揉めても勝てる気がしないので揉めない。負け戦はしない主義である。

 それぞれの部屋にちゃっかりと洗面台があるので、ちゃっかりと顔を洗って昨日の夜と同じように叡智の部屋に行って、全員で朝ご飯を食べた。

 朝ご飯は白米に納豆、卵焼き、鯖の塩焼きにお味噌汁、カットフルーツ、そして牛乳だった。普段は朝ご飯をおろそかにしている僕だったが、こんなに美味しそうな朝ご飯を目の前に出されたら食欲も湧き出てしまう。朝ご飯は美味しくて、これなら500円を払ってでも是非食べたいものであった。いつもは100円の菓子パンとかで朝ご飯をすませたりしているので5食分相当と考えてもらえたら結構である。


 朝ご飯を食べて満足な気持ちでいると先輩が話を持ち出した。

「ボウリングでもいかないか」

「ボウリングですか?なんで急に」

「私はボウリングが好きなんだよ」

「でも今日の夜にライブがあるのに腕を酷使して大丈夫なんですか?」

「そんなこと言って能登先輩、自信ないんでしょう」

 叡智が僕をからかうように会話に入ってくる。高校生でボウリングに自信がある人なんてなかなかいないのではないのだろうか。そもそも自信の有る無しとかではなく、普通にライブまで腕が持つか心配なだけなのだが。

「能登は成績悪いからきっとボウリングもヘタクソなんだよ」

 さらに下野が僕を煽るように言った。というよりもこれはもはや煽っている。

 じゃあやってたろうじゃないか!!!!この野郎!!!!!

 とはならない。ならないのである。

「別に行ってもいいけど」

「いや、嫌ならいいんだが」

 と先輩は少し残念そうに言った。

「嫌ではないですよ」

「無理しなくていいよ。なんかすまなかったな」

「いやいや、なんでそんなことになってるんですか。行きましょうよ」

「仕方ないな。まったくもう、ワガママなんだから」

 いつのまにか僕がお願いする形になっていたが、まあそれはいつものことだと僕の心の中で昇華させて揉め事にはさせずに、まあなんやかんやで、僕達は夜にバンドライブがあるのにも関わらずボウリングに行くことになった。


 ボウリング場は叡智の家から近くにあるアミューズメント施設的なところで、1階はゲームセンターで2階はボウリング場、3階は映画館となっている。

 アミューズメント施設に入ってゲームセンターをぶらりと回って、2階に行くために階段を上るところで叡智が足を止めた。

「どうしたの?」

「いや、この映画ってここでもやってるんだなって思って」

 この映画とは、少し前に2期のアニメが放送されていた女の子がいっぱい出てくる学園アニメであった。女の子がいっぱい出ながらも決して日常系になることはなく、ワンクールでみても話の筋がしっかりとしていて、ときにはハラハラさせることもあったりと、俗に言う中身があるアニメで円盤も万単位で売り上げていたはずだ。

「確かにだいたいは札幌でしかやらないから珍しいね」

 下野が言う。

「これ見るか」

 先輩が言った。誰も反対する人はいないようで賛成の意の返事をする。僕もみたかったので賛成である。

 全員オタクだった。

 まあ高専生なので仕方がないのかもしれない。

 2階のボウリング場を通り過ぎて3階の映画館に行く。

 時間的にもうそろそろ上映だったので飲み物を買って入場する。日曜日の午前中とだけあって、なかなかに人がいた。どうやら修繕部各々で好みの席があるようで4人が4人ともバラバラに座った。僕は真ん中より少し後ろの、向かって左側の席である。真ん中に座ってしまうと冷静になれない自分がいるような気がしてなんか嫌だ。

 

 映画は終始熱い展開だった。

 飲み物が入っているコップを握力でグッシャリと潰して横にいた見ず知らずの人にビッシャリとかかってしまった時は一気に冷静になった。

 ともあれ、映画を観終わった。

 そう、僕は泣いていた。

 感動して泣いてもいるし、なにより、もうこの子達と会えないことに悲しくて泣いている。この子達は大学生になってからはバラバラになってしまうけど力強く人生を生きてほしい。

 時間はお昼だったので一旦叡智の家に帰ることにした。ちなみに先輩も泣いていた。感受性豊かである。小学生みたい。


 お昼ご飯はカレーだった。

 牛肉が凄く美味しかったので肉の名前を聞いてみたが「秘密です」と言われてしまった。カエルの肉が牛肉と似ていて柔らかくて美味しいと聞いたことがあるのでたぶんカエルであろう。

 お昼ご飯中に打ち上げも叡智の家ですることになった。というよりも叡智が決めた。そこまでやっかいになるのは悪いと僕が言うと「私の家はお金持ちですよ。それ以上になんの問題があるんですか」と言われてしまった。なんだかよくわからないけど男前である。

 お昼ご飯を食べて学校に向かうことにした。3時から体育館でバンドの全体練習があるためである。昨日、物理的に死にそうなほど練習したが、やっぱり本番と同じ舞台で練習しておかないと不安要素がやっぱり残ってしまうのである。


 楽器を持って自転車で学校へ向かう。僕のキーボードは専用の背負えるケースに入れているので、重いという欠点を除けば自転車でも楽々である。

 高専の前にある長い坂になると、キーボードの重さが、僕の体によりいっそう負担をかけてくる。

 しばらくは立ち漕ぎをしていたが、立ち漕ぎで進み続けるのは辛くて自転車を押すことにした。下野は軽音部が持っているドラムセットを借りるのでスイスイと進んでいく。叡智と先輩はベースとギターを背負っているのに、なぜあんなにスイスイと進んでいくのだろうと悩んだりもしたが、そんな悩みは自転車を見ればすぐに解決した。

 電動アシスト自転車だったのである。

 このお金持ち軍団め。

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