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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
26/37

うどんと高専生


 次の日になった。

 待ち合わせ場所である部室に行く前に、少し校内を1周してブラブラと出店でも見ようかと思い校舎に向かうと偶然下野にあった。

「あ、下野。おはよう」

「おはようというよりはこんにちはだね」

 下野と呼んでも嫌悪感を出されなかったのでこの呼び名を継続していこう。

「で、なんでここにいるんだい?」

 下野が聞いてきた。

「いや、少し学校の中を見て回ろうと思ってね」

「僕の予想だけど、部室で集まった後に学校の中回ると思うよ」

「言われてみれば僕もそんな気がする」

「じゃあ部室に行こうか」

 そう言って下野は歩き出す。僕は下野がなぜ玄関にいたのかを聞いていない。というよりも、聞かせない雰囲気が下野からでている。滲み出ている。世の中には聞かない方がいいこともある。というより、うっかり興味本位で聞いてしまって面倒くさいことになるのは嫌なので聞かない。

 下野と一緒に部室に向かう。時刻は12時50分で約束の時間よりも10分早かった。鍵がかかっていたのでマイ鍵で開ける。

 中にはやっぱり誰もいなくてソファに座る。

「なあ下野」

 僕はこの2人しかいないタイミングを狙って下野と話をする。

「なんだい」

「下野ってなんなの」

「ちょっと抽象的すぎるね。プロの俳句人にでもなる気なのかい。それは無理だろうね。叡智は国語力ないし」

「え?なんだって?」

「難聴系主人公にキャラクターチェンジとか許さないよ。しかもそれって、好きですよアピールに気付かない時に使うものであって、自分の欠点を指摘されたときに使ったら、ただの悲しい人だよ」

「そこまでボロクソに言わなくても」

 しかも指摘が的確なんだよなあ。非情にも。

「それで、質問をもう少し具体的にしてくれないかい」

 下野は本当に興味がなさそうに聞いてくる。どうせ興味ない質問するんだろ?という感じがダラダラと液体になって床を濡らしている。

 でも話す。

「なんかずっと思っていたけど下野って周りと雰囲気違うよね」

「いまさらそれを聞くのかい」

 確かに1年と半年過ごしてきて今更な感じはある。だが夏休みの合宿を挟んで下野との仲もよくなった気がする。もちろん先輩との仲も、だ。

「まあ、別にいいけど」

と下野が言ってさらに続けて、

「でもこの部活って全員が全員、雰囲気が違うっていうか、まあ、言ってしまうならば、浮いてるよね」

「それを言ってしまうか」

「僕は言うことは遠慮せずに言うタイプだからね。僕の雰囲気が違うのはたぶん僕の中学校時代にまでさかのぼらなくちゃいけないよ」

「じゃあいいや」

 僕はベットの上に横になる。

「自分から聞いたんだからもう少し関心を持ち続けようよ」

「アハハハ」

 僕はテレビをつける。

「ちなみに僕は宇宙人だよ」

「アハハハ」

「急に関心が無くなりすぎじゃない?せめて顔をテレビからこっちに向けてくれないかい。その笑ってなんとかしようとするのは見逃すから」

 ここが話の終わりだと判断した僕は聴覚を完全にテレビへと移行した。僕も冗談がうまくなったものである。と思ったら下野がおもいっきり殴ってきたのでやっぱり僕は冗談がヘタクソだった。

 しばらくしていると扉が開いた。叡智と先輩は一緒に登校したようだ。

「はやいですね」

「まあね。今日は一緒に登校したの?」

「お姉ちゃんがバイクで送ってくれたんですよ」

「あらかじめ両親に挨拶してきたんだよ。事前に会っておかないとなにかまずいことがあったときは君たちにまで迷惑かけてしまうからね」

 先輩が言った。先輩の表情をみるに、良い結果がもたらされたのだろう。どこか落ち着いたような表情である。

「先に学校の中を見て回りましょうか」

 叡智が言った。下野は、「ほらな、僕の言った通りだろう」といった顔でこちらをニタニタとみてくる。そういえばそんなことを言っていたな。

「わかりました」

 僕は、今日も決定事項に特に反対する理由もなく、決定事項の返事をして決定事項的に付いていくのだ。

 叡智と先輩は部室の入口に立っていたので、部室の一番奥のソファに座っていた僕が部室の鍵を閉める。

 校舎に入ると、どこからか甘い匂いが匂ってくる。この甘い匂いはたぶん5年制御科のチュロスか3年電気科のメイドカフェであろう。メイドカフェといっても女性ではない。男性のことをメイドと呼ぶ風潮があるのかどうかは分からないが、服装はメイド服なのでメイドカフェなのかもしれない。「あーん」のサービスもしてくれるそうだ。いや、やらないけど。

 あえて電気科というところが粋なものである。

 叡智や先輩についていくと、アメリカンフットボール部が出店しているうどん店に着いた。

「うどん?」

「うどんですよ」

「うどんだ」

「うどんか」

「うどんだね」

 この言葉の掛け合いの中で「うどん」という言葉がどれほど出てきただろうか。足りない語を補うと、

「うどんに食べにいくんですか?」

「うどん食べたいんですよ。だめでしたか?」

「うどんだ」

「うどんですか。いいですよ」

「うどんいいね。僕もうどん食べたかったよ」

 という訳である。ちなみに話した順番は僕、叡智、先輩、僕、下野の順番である。先輩だけ話している言葉の補填が要らないのが、昨今のエコを重視した地球に優しい社会にマッチしている。

 うどんの味は学校祭の出店でなら十分に美味しいレベルで、こんなものだろうな。というものであった。

 うどん店を出てまた校内をブラブラしていると、メイドカフェの前に通りかかった際にキャッチの高専生に叡智が声をかけられた。ここで食事していきましょう?と声をかけられた叡智は僕の腕を掴んで、私には彼がいるんで。と笑いながら言っていた。

 僕は誰よりも正直であると自負しているので、はっきりと言ってしまうと、僕は潔いくらいに嘘をついた。

 本当は僕の腕を掴んでもいないし、私には彼がいるんで。とも言わなかった。叡智は普通に拒否をしたのだ。悲しいものである。

 悲しいのは僕の脳みそだ。

 アメリカンドックを買ったり、なぜかもう一度アメリカンドックを買ったりしながら校内を巡り巡って、叡智の家に行くことになった。

 叡智と先輩はバイクで来たようなので僕達に叡智の家の住所とそれまでの道のりを教えて先に行ってしまった。

 一緒に行くとかの発想にはならなかったらしい。

 別に良いけどね。

 でもやっぱり、こうもさっさとバイクで行ってしまうと。

 悲しい。

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