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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
25/37

お祭りと高専生


 高専祭当日。

 この日は学校全体がお祭りの雰囲気に包まれる。僕のクラスでも高専祭の出店でアメリカンドックを出すそうだが、僕は参加していない。

 高専祭でのバンドライブは、演奏場所が小さい場所であれ、軽音部に入部していないと出演できない。しかし、先輩がゴリ押しして修繕部としてでも参加を無理矢理認めさせて、しかも、後夜祭の体育館でのバンドライブの出演まで約束したようだ。

普通なら体育館でライブをできる人は何年も軽音部に入っている人しか演奏することができない。

 先輩が軽音部の部長と1年生の頃に同じクラスだったため、仲良し特典で体育館のバンドライブの枠をゲットしたそうだ。他の軽音楽部の部員からしたら、ただの迷惑である。

 高専祭は前夜祭を含めた3日間開催で、それは毎年のように体育館で全校生徒が集まる前夜祭からスタートした。

 僕達修繕部は、部室で練習をするという口実で集まってダラダラしていたら前夜祭の入場時間になっていたので、結局その日は練習することなく前夜祭に参加することになった。

 大丈夫なの?という疑問がよぎるかもしれないが、大丈夫だよ!

 自己暗示。

 体育館に入ってみると、結構早い時間に入場したため、前夜祭にはまだ少し時間があったのだが、すでに全校生徒の8割くらいで体育館はややキュウキュウしていた。

 部活やクラスで出店する準備のために体育館に来られない人もいるのだが、それでももう少し人が入るだろうと予想できるくらいの入り具合だった。

 僕達修繕部は体育館の後ろの方に腰をおろした。最前列は活気ある男達の無法地帯と化していて、あの中に入っていったら腕の骨とか折られそうだ。

 しばらくしていると体育館が暗転して会場が静かになる。

 その後、体育館前方にプロジェクターで流石は高専生と言ったような誰が作ったのかは分からないカッコいい映像が流しだされた。

 この高専が開校してからの学科名の移り変わりがカッコいい映像で表示されていて、流れているカッコいい音楽と相まってとてもカッコいい。

 貧相なボキャブラリー。

 最後に高専祭開幕の文字が大きく出ると、会場は完全な暗闇に包まれ、ステージ横から4年生と思われる2人がでてきた。と同時にその2人にスポットライトが当たる。

「はい、というわけで始まりました高専祭」と高いテンションで喋りはじめる4年生2人。あんなカッコいい映像を見せられたら誰だってテンションは上がる。

 もちろん、修繕部部員もテンションは上がっていた。

 叡智は1年生だから、初めて見る衝撃でテンションがあがるのもわかる。だが、4年目3年生の先輩もテンションがあがっていた。まあ、この人はいつでもテンションが高そうなイメージはあるが。アリとか踏んでもテンションあがりそうだ。一方、彼は寝ていた。暗転して暗いから仕方がないということにしておこう。彼は部室でも寝ていたので、よっぽど寝たいのだろう。

 その後にビデオコンテストが始まった。ビデオコンテストとはその名のとおり、自分達が作ったビデオを会場で流してナンバーワンを決めるものである。

 ビデオは全部で3本あり、1本は写真部のお涙頂戴ビデオで、もう1つは3年生のレーシングゲームのようなビデオ、3本目は5年生によるもので、高専の先生と5年生で勝負をするものだった。1本目のビデオとは系統が違うから比べられないが、2本目と3本目のビデオはどちらも面白かった。とくに3年生のやつは1枚ずつ少しだけ場所をずらしていきながら写真を撮っていき、それをコマ送りでパラパラ漫画のように進めていっていたので大変に手が込んでいた。

 貧相なボキャブラリー。

 そもそも映像を字だけで説明しろってのが無理だよね。普通に。

 ビデオコンテストが終わって、ビンゴ大会に移った。が、ビンゴというものは八百長以外で当たる訳がないので、リーチすらもならずに終わった。修繕部全滅である。

 先輩とかビンゴがあまりにも当たらないからってビンゴシートを食べてしまった。大丈夫かこの人。

 ビンゴ大会の終了と共に体育館の出口に高専生が一斉に向かっていった。僕もその集団に埋もれるようにして出ていく。

「能登先輩この後部室に来てください」

 叡智が帰宅の雪崩にもまれている僕に向けて言った。この集団の中では僕の声も聞こえないであろうから、僕は手を上にあげてサムズアップのポーズをとった。漫画とかなら“グッ”と空中に文字が浮かびそうなほどのサムズアップであっただろう。

 サムズアップマスター。

 僕は集団に揉まれて玄関に出たのち、部室へと向かった。部室には鍵がかかっていたので僕は鍵を取り出そうとしたら、鍵が開いた音がして中から叡智が出てきた。

「なんで先にいるの?」

 なぜ先に部室にいるのだろうか。体育館を先に出たのは僕のはずなのに。

「超能力ですよ」

 そんなわけがない。

 わけがないのか?確かに常識的に考えればそんなわけがないのだが、はたしてこのメンツに常識が通じるのだろうか。

「嘘ですよ」

 嘘だった。

 ソファに座ってテレビを見る。テレビに映っている番組はどうみても今の時間帯にやっているバラエティ番組ではないので、そのことを聞いてみたら、いつのまにかビデオデッキを買っていたようだ。今はブルーレイレコーダーというらしい。ハイテクノロジー様様である。

 昔は部室でよく本を読んでいたのだが、今となっては部室にテレビやパソコンがあるため、あまり本を読むことはなくなった。昔といってもほんの半年前なのに昔と言ってしまうなんて、この半年間は自分が思っているよりも、よっぽど内容が濃い半年だったのだと知らず知らずのうちに再確認された。

 部室にいてもゴロゴロすることが増えたので、今日も例に漏れずにゴロゴロしていたのだが、体育館で部室に呼ばれていたことを思い出した。

「そういえば僕を呼んだ要件はなんだったの?」

 叡智は答えた。

「あ、そうでしたね。いや、明日のことなんですが。バンドライブは後夜祭なんで明後日じゃないですか。それで、明日は最終練習したいんですけど、修繕部は軽音部の部室使えないんで私の家に泊まりますよ」

 やっぱり決定事項であるようだ。泊まりますか?じゃなくて泊まります。なんだよなあ。

 まあ僕も確かに練習したかったので決定事項でなくてもぜひ参加するところだったが。

「なんで叡智の家に?」

「私の家って広いんですよ。なので、どんなに大きな音を出したとしても近所に迷惑はかけないんですよ」

「泊まりって全員で?」

「はい」

 先輩の方を見る。夏休みの合宿で本人から聞いた限りでは、先輩は両親とあまり仲が良くなくて別居状態にあるらしいのだが、先輩は大丈夫なのだろうか。

「あ、能登先輩、お姉ちゃんのことですか?それは問題ないですよ。今はもうそうでもないんで大丈夫ですよ」

 なんかボンヤリとしていてよくわからない返答だったが「そうでもない」と言うので、そうでもないのだろう。

 先輩の方を向いてもヤレヤレといった仕草をしていた。そんなヤレヤレで済むようなことなのか?親子同士の争いってのはもっとドロドロとしたものではないのか。

 どちらにしても第三者が首を突っ込む問題ではないだろう。

「じゃあ明日はとりあえず午後の1時ぐらいに部室に来てくださいね」

「わかったよ」

「彼さんもよろしくお願いしますよ」

「別に下野でいいよ」

「わかりました」

 僕も今度から意識して下野って呼ぶことにしよう。

「能登はだめ」

 まだ話していないのに否定されてしまった。

 心を読まれているのか、それともめちゃくちゃ仲が良いのか。

 後者であることを切に願った。

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