砂浜と高専生
「私、魔法少女になりたいです」
「魔性少女?」
「そんないやらしい少女になりたいわけがないでしょう。頭悪いんですか?バカ!バカバーカ!」
「ええ……」
さて、気を取りなおして。
「なんで魔法少女に?」
「かっこよくないですか?」
「確かにかっこいいけど……」
困った。どうやって返答すればいいのだろうか。迂闊に軽口をたたけない。僕の一言が叡智の人生をかえてしまうことだってあるのだ。
さて、どうしようか。
「冗談ですよ。まさかここまで本気にするとは思いませんでした。常識的に考えて魔法少女になるなんて頭おかしいじゃないですか」
超ハラハラした。
叡智の発言に頭をフル回転したので疲れてしまった。僕は水の上に浮かぶ文庫本の上で横になる。
そうしていると、 彼と先輩が僕達のいる文庫本の近くまできて喋りだした。
「海上野外セックスしているカップルがいるぞ」
彼が右手に持ったスマートフォンで僕達の写真を撮っている。
別に不埒な関係ではないのでマズイわけではないのだが何か恥ずかしい。先輩も写真を撮っているが、写真を撮るのに使っているものが携帯などではなく、昔懐かしのインスタントカメラだ。修学旅行の小学生かよ。そうやって写真を撮っても現像されることは絶対にないだろう。撮るだけ撮ったけど、いざ現像するとなるとめんどくさくなって現像しないやつだ。
「ガチで辞めてください」叡智が言い出す。
「ガチ」
何か本当に拒否されているみたいで普通にショックだ。ショックすぎて思わず声に出して言ってしまった。
叡智のお願いも聞き受けられず、今なお写真は撮られ続けられている。
「能登先輩、仕方ないんでセックスしますか」
「なんでそうなるの?どこが仕方ないの?」
頭良い人の考えることはわからん。
「既成事実ですよ」
「既成事実って言葉の使い方間違ってない?」
その後、先輩と彼は飽きてしまったようで、スマホとインスタントカメラを砂浜に広げてあるレジャーシートの上に置いてビチャビチャになった。海の中に入っただけである。
……。
ただ目的もなく会話もなく浮いているだけである。
しばらく海に浸かっていたが、叡智が飽きたようで、
「バレーしません?ボールありますよ」といった。
「四人でバレーって人数少なすぎない?」
「なんで本格的な試合形式にしようとしているんですか。キャッキャッウフフとするバレーですよ。青春目的のバレーですよ」
「なるほどね」
「いや、僕はいいよ」と返事をする。
「僕も遠慮しておこうかな」と彼。
「なに言ってるんですか。誰の家に泊めてもらって誰の家のプライベートビーチで誰の家の食事をとっているんですか。ふざけんなよ」
普通に恐喝されてしまった。これで叡智が怒って「自力で帰ってください」と言われたら、「野生に帰る」しか手段はないのでヘコヘコしておく。社会に出るのに必要不可欠なスキルだ。1年生のころから意識を高くもって日々を過ごしているので社会に順応できるように毎日臥薪嘗胆の日々を過ごしている。
というわけで僕と彼もバレーに参加した。
僕も運動能力が悪いわけではないのだが、他の部員が運動能力が良いので相対的に僕の運動能力は悪いということになる。つまるところ、僕は運動音痴的なポジションでバレーをすごすことになった。休憩しているときにも特訓を受けなくてはいけなくなり、僕はただ1人、休むことなくバレーをし続けた。もう軽い拷問である。言いすぎた。
そうやって海で一通り遊んだあと、別荘に戻った。




