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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
17/37

夢と高専生

 先輩は右手に持っていたシャチを僕に渡してきた。

 膨らませろということなのだろう。

 別荘の中でも言われたので僕も抵抗せずに無言で受け取ってふくらます。

 思ったよりもサイズが大きかったので膨らまし終わったころの僕の体には若干の疲労が生まれていた。

「まあ、ここにポンプがあるんだがな」

 早くいってほしかったですよ先輩。

「という訳でこれもよろしく」

 手渡されたのはこれも空気で膨らませるタイプの表面積が大きい文庫本みたいな上に乗ることができるものだった。

「ちょっと大きすぎないですか?これ」

「思うんだが」

「なんですか先輩?」

「こう私に特別な力が宿らないものかな」

 何を言っているのだろうかコイツは。

 さっきまで重いことを考えていたと思っていたのに今は超能力的なことを考えているとは。結局先輩は何を考えているのかよくわかんない。

「いきなり何を言いだすんですか先輩」

「いや、私一人の力ではいずれは限界が来てしまう。私がこの修繕部のみんなを最後まで面倒みきるには力不足なんだよ。もちろん君のこともだよ。能登君」

「先輩ってよくわかんないですね」

「私も自分のことがわからないよ。だからこうやって模索し続けているわけだよ。たとえそれがどんなに小さなことでも、どんなにイカれたことでもね」

「じゃあ部室に寝泊まりしているのもそのためだったんですか?」

「いや、それは登下校が大変だからだよ」

 もうなんなんだこの人。先輩のことをわかった気もしたけど結局何もわからなかった。

「なんの話をしているんだい?」

 僕と先輩がパラソルの下で寝そべりながら話をしているところに彼はやってきた。

「どうせ薄々感づいてはいるだろう?」

「かいかぶりすぎですよ」

 なんで今日のみんなはシリアスというかそんな感じのモードなのだろう。旅だからはしゃいでいるのだろうか。はしゃぐ方向性を間違っている。

 もっと雑にはしゃげ。

「叡智はどこにいるの?」

「あそこで埋まっているよ」

 言われた方向を向いてみるとそこには砂で固められた叡智がいた。叡智は砂で固められたままスヤスヤと爆睡していた。きっと旅の疲れがでたのだろう。だからといってそこで寝るのはどうなのだろうか。

 そうしていると文庫本みたいな水に浮くヤツも膨らまし終わった。

「じゃあ泳ぎますか?」

 と僕は提案した。

「海って泳ぐものなのか?」と先輩。

「あんまり泳いでいる人はみたことないですね」と彼。

「じゃあなんのために海に?」

「目的も無くマッタリするためだよ。叡智の過ごし方が正しいね」

 はたして海に正しいも間違っているもあるのだろうか。好きに過ごしたいものだ。だが、郷に入っては郷に従えである。僕も砂かけに参加しようではないか。

「じゃあ僕にも砂かけてくれない?」

「いやじゃ」

「先輩」

「やらん」

「冷たくないですか?」

「海が冷たいのとかけているんだよハッハッハ」

 つまらないシャレ。

 何をいっているのだろうか。旅だから気分が盛り上がってしまうのだろうか。

 そうしていると叡智が目を覚ましたようだ。

「あ、おはようございます。砂とってくれませんか?動けません」

「先輩行ってあげてくださいよ」

「なぜだ?能登が行けばいいだろう」

「女性に触れてしまうと理性が。」

「なるほど。それは合宿後半にまで取っておいてくれよ」

 合宿後半なら事が起きても大丈夫なのだろうか。先輩は渋々といった様子で叡智のところへ向かい、砂を右足を使ってどかしていた。

 せめて手でとってあげたらどうだろうか。

 砂を大方とってくれた叡智がドッコラショと起きてこっちに走ってきた。

「海に入らないんですか?」

 そういって叡智は海に向かって走り出す。僕も後を追うように海に向かう。叡智はいつのまにか手に文庫本を持っていた。文庫本といっても実際の本ではなくて、もちろん浮くヤツである。2メートルはありそうなサイズの文庫本は手に持つというよりは引きずっているという表現が適切だろう。

 靴を脱いで砂浜を歩くと、やっぱり砂浜は暑くて足の裏から暑さが伝わってきて思わず僕も駆け足になってしまう。

 海に入ると、若干海は冷たくてジャバーンと勢いよく肩まで入れない。

 先に心臓に水をかけるのが心臓に負担が少ないと聞いたので水をかけて、そろーっと入る。叡智は文庫本の上にのってマッタリしている。

 僕もシャチを持ってくればよかったと思った。海って入ってもすることがない。ただ冷たいだけである。

「その文庫本にのせてくれない?」

「文庫本ってこの板のことですか?いいですけど」

 文庫本の上で寝ていた叡智が端に移動する。僕は文庫本の上にヨッコラショと乗ろうとしたら叡智にとめられる。

「なんでこっちから乗るんですか!バランス的にひっくりかえっちゃいますよ!」

「ごめんなさい」

 僕は反対側に回って乗りなおす。初めて文庫本の上に乗ってみたが、これは波に揺られる感覚が心地よい。太陽も良い感じに全身を照らしてきて心が穏やかな気持ちになる。これは海も悪いものではないな。

 僕が文庫本の上でマッタリとしていると叡智が僕に話しかけてきた。

「能登先輩って将来の夢とかあるんですか?」

「なんで急に」

「ちょっと考えるところがありまして」

 たしかにこの15~16という年頃というのは色々と考えがちになる。僕も去年は色々と考えることがあった。進級できるのだろうか。とか、進級厳しいなら高専を辞めようか。とか、しっかり勉強すれば全て解決する問題だが。

 とりあえず返答をする。

「将来の夢は特にないかな」

「私将来の夢があるんですよ」

 叡智は学力も優秀だから進学も容易だし、1年生だから高専を辞めて進路変更も容易である。とりあえずできる限りはアドバイスをするべきだろう。

「差しつかえなかったら聞いてもいいかい?」

「私、魔法少女になりたいんですよ」

 アドバイスできない。

「つまらないシャレ?」

「ガチです」

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