海と高専生
メレンゲ入り冷やし中華も食べ終わり、食器洗いくらいは自分でやろうと思ったのだが食器洗浄機に入れとけば終わるそうなので食器洗浄機に入れた。
ハイテクノロジーを感じる。
「午後は海でも行きますか」と叡智が聞く。
「練習はしないの?」
と僕は答える。
「高専祭は10月の終わりなんで別に今急いで練習するもんでもないですよ」
「ええ……」
なんのための合宿なのだろうか。合宿の根底から覆してしまいそうな発言だ。もしもこの世が感嘆符を自由に付けられる世界だったならば150個くらいは付けているだろう。
「そうだな」と先輩が答える。
そうなのか。
「じゃあ天気も良いんでお昼からは海に行きますか」
「ふぁい」
こうして午後は海に行くことになった。別荘には砂浜に差す大きな傘とレジャーシートがあるようなので、僕は命令されるようにして納戸に行ってゲットした。
ゲーット!!!!
若干テンション上がり気味である。
海は好きだ。
軽くスキップをしながら別荘に戻った。まだ水着じゃない。戻る途中に目の前に広がっている海をチラリとみる。
ビーチにはあまり人がいないようだが、ここは周りにある別荘の人専用のビーチなのだそうで、夏真っ盛りのピーク時でもそんなに混まないようだ。
別荘の中で水着に着替える。
僕は中学生のころからずっと使っている色あせたトランクスタイプの水着を着る。本当はハワイの柄がプリントされているが、色あせて灰色のハワイが広がっている。今にも台風が発生しそうな天気のハワイがプリントされている。
といっても、基本的に北海道には台風がこないので現実感はでない。
水着のまま部屋を出る。
廊下を進んでいくと叡智がいた。
叡智が来ている水着はローライズだった。
ローライズとは布の面積が他の水着のなかでも凄く小さくて、ひとこぼれの奇跡があれば見えそうな感じさえある水着である。
奇跡は諦めずに願う人だけに訪れる。
「あ、叡智先輩どうですか?この水着」
「ローライズは目のやり場に困るな」
「見たいですか?」
「そう聞かれたら見たいけど、もしも見てしまったら今後の交友関係が複雑になりそうだから遠慮するのが得策かな?」
「先輩はイマイチキャラクターが安定しませんよね。なにキャラ目指すんですか?エロキャラですか?」
「マジメキャラにもなりたいけどリア充キャラも良いし、エロキャラも美味しい展開がいっぱいあるから捨てがたいね。とりあえず水着他に持ってきていないの?」
「そこまで言うなら普通のビキニに着替えてきます。あ、スクール水着も持ってきていますけどどっちがいいです?」
「リアルでスクール水着を見たことないからスクール水着で」
「スクール水着ってそそるものがありますよね」
それ自分で言うのか。そそるって自分でハードルあげているようなものだろう。
叡智は自分の部屋へと戻っていった。
水着のままリビングのソファに座って待つのもなんだか嫌なので、階段の前で待つことにしていると先輩が来た。
先輩が来ている水着は水色をベース色としたパレオだった。そして先輩は右手になにか持っているようだ。
「先輩、それなんですか?」
「シャチだ」
「ああ、浮くヤツですか」
「あたりまえだ。本物のシャチを抱えながら海に行くわけがないだろう。ほら」
先輩は右手に持っていたシャチをこちらに差し出してきた。
「あ、くれるんですかやったー大切にしますね」
「ふざけているのか」
「本気で言ってませんよ。膨らませろってことですよね。海に行ってからでいいですか」
「ああ」
その後に彼と叡智も来た。
「遅かったな、彼」
「これを着るのに時間がかかってね」
彼は全身を覆うウエットスーツを着ていた。顔以外全部隠れるタイプのウエットスーツで、ギャグみたいな見た目である。
「なんでウエットスーツなの」
「色々あってね。知りたいかい?」
「遠慮する」
彼は闇が深すぎて詳しく聞いたら損しそうな気がする。まず名前を呼ばれるのを拒む時点で闇が深い。でもきっと刺青でも入っているんだろう。予測できてしまう。
叡智は言っていた通りスクール水着を着ていた。普通のスクール水着で胸に名前を縫って、剥がした跡が見える。
流石に名前が縫い付けてあるのは恥ずかしかったのだろう。
なんだろか……。
初々しいな。
全員が集合したところで階段を降りて海に向かう。さっき玄関に置いた大きな傘みたいなヤツとレジャーシートを持ちなさい、と先輩に目で合図されたので無言で持つ。言葉で言ってくれてもいいのに。アイコンタクトに絶大な信頼を寄せないで。
そのまま歩いて海まで向かう。
徒歩で5分とかからないで着くことができた。
とりあえず大きな傘を砂浜にたてる。
そっと立ててもすぐ倒れたので、思いっきり振りかぶって地面に立てると刺さったが、「折れるかもしれないのでゆっくりやってください」と普通に怒られた。
彼と叡智は2人で話をしているようで、こっちには先輩と僕の2人だけだった。
「この大きな傘ってなんていうんでしたっけ?パスカル?」
「パラソル」
必要最低限の言葉だけで返答されてしまった。ですます口調とまでは言わなくても何かつけてほしかった。
別にいいが。
「それにしてもあの2人が話し合ってるのってあんまりみないですよね」
「2人ともしっかりと自分の考え方を持っているからな。必要以上に話し合う必要がないのだろう」
「確かにあの2人がバカ話しているの想像できないですね。つねに耳が痛くなる頭が痛くなる話ばっかりしていそうですね」
「あの2人は考えすぎるところがあるからな。頭が良すぎるというか賢すぎるというか。どうにかしたい感じはあるんだがな。どこまで手をだしていいものか」
先輩って全然考えていないようにみえてしっかりと考えているようだ。
伊達に4年目3年生ということもない。自分のことで手いっぱいになることはなく、みえないところで他の人にも気を配っている。実は僕の気付かないところで僕もサポートして貰っているのかもしれない。
僕もこれくらいカッコいい生き方をしたいものだ。
それにしても、この先輩はこんな青空の下で足もとには綺麗な砂浜が広がっていて目の前には綺麗な海が広がっているのになんて重いことを考えているのだろう。
こんなときぐらい面倒くさいことなんか忘れてはしゃげばいいのに。
というより誰もはしゃいでいない。頭の悪そうな大学生だったらこの展開でウェイウェイしているだろう。
高専生は大学生にコンプレックスというか僻みという気持ちがある。
それは高専が5年制だから普通高校の人は大学デビューしたり、大学で楽しんだりしているのに高専生は女っ気の少ない生活で1年生のころから変わらないクラス構成で新しい出会いも特になく、編入したとしても大学3年生に編入することになるので、大学での友達関係は既に構築されてしまって、世間でまことしやかに噂されているサークル活動とやらも3年生から入ったところで馴染めることはなく、上辺状ではなかよくしてくれる人がいたとしても、やっぱり途中から入ったという違和感は消えないのだろう。
これは本当に辛いので週一ぐらいのペースで言っていきたい。辛いというよりも高専に入ってしまったという後悔の念が強い。
なので週一のペースで公開していこう。後悔と公開でかけている。
つまらないシャレ。




