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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
15/37

夏休みと高専生

 夏休みになった。

 合宿は夏休みに入った次の週からなので今週はゆっくりと休む期間になった。

 朝は昼過ぎに起きてパソコンをしたりゲームやテレビ、買い物や本を読んだりして太陽が出てくる時間になったら眠りにつく。

模範的な自堕落生活である。自堕落コンテスト高専生部門とかあったら良いところまで行けそうな気がする。

 そうしてすぐに合宿の日になった。

 集合場所は前回の新入生歓迎焼肉大会と同じ駅前。今回は滞在期間が1週間ということもあって先輩も自転車で来たようだ。バイクとママチャリなら駅前に1週間放置して、もしも盗まれたときのダメージが段違いに軽い。

 そうして集合したのと同じタイミングで窓から顔をだす叡智が見えた。今回もキャンピングカーに乗ってきたようだ。叡智がキャンピングカーから顔をだして「乗ってください」と言った。

 乗り込む。

 乗り込んで合宿の説明を一通り受ける。

 合宿地には楽器はもう用意されているそうで、合宿地には管理人的な人がいるので掃除とか食事はやってくれるが節度を持って生活して欲しい。練習の他にも花火と海とバーベキューとやるので覚悟しておかなければいけないらしい。夏を満喫する予定を1週間でほとんど詰め込んだようだ。本当にこれは合宿なのだろうか。

「今更なんだけど1つ聞いていい?」と叡智に聞く。

「なんですか?」

「なんでバンドをやることになったの?」

「青春と言えばバンドですし、高校生といってもバンドでしょう。なんで楽器業界が潰れないか知ってますか?高校生になって青春をしようと思って楽器を買ってみるものの、下手なままでは見せたくないので練習をしてから見せようと思ったけど自分が下手だから練習をしても楽しくないから結局練習をせずに楽器が納戸にしまわれるんですよ。その学生によって楽器業界は生き延びているんですよ」

 ひどい偏見である。というよりも高校生に対する憎悪が言葉に滲み出ている。これは高校生に対する憎悪というよりも高校生だからといって自分達が特別な存在で、自分達なら何でもできると周りに迷惑と無駄なエネルギーを振りまいている高校生が憎いのだろう。

 わかる。ちょーわかる。めちゃくちゃわかる。わかりすぎて困る。わかりすぎて逆にわからない。

「あともう1つ質問いい?」

「はい」

「なんでキャンピングカーなの?」

「普通の車よりも電化製品があるじゃないですか。そしてなによりも見た目が強そうですよね。車で競うカードゲームとかあったら絶対重量級ディフェンスタイプですよ」

「そうですか」

 言いたいことがわからなくもないけど、わかったところで得るものはない。

 その後キャンピングカーはノンストップで合宿地である叡智の別荘についたようだ。

「つきましたよ」叡智がガラガラと扉を開けてキャンピングカーから降りる。

 叡智に続いて僕達も車からおりる。目の前には木製で高い天井に、いかにも大きくてゆっくりと回りそうな換気扇が付いていそうな家があった。しゃれた庭もあって、家の後ろには大海が広がっている。今日は天気もよかったので海面がキラキラと光っていて汚れが良く落ちそうだ。

 それは界面活性剤。“かいめん”違いである。

 化学科ギャグ。

 別荘に入ってリビングの天井を見上げてみると、やっぱり天井は高くて換気扇があった。これに名称があったような気がする。

「この天井が高い仕組みってなんて名前でしたっけ?ぶちぬき?」

「吹き抜けだ」

 よりにもよって先輩に指摘されてしまうとは思わなかった。僕のぶちぬきでもほぼ正解ではないだろうか。

「じゃあ部屋に案内しますね」

 と言って叡智は2階にあがっていった。階段を上がると左側に3部屋、右側に3部屋あるようだ。どうやら一人一部屋システムのようで、僕と彼は左側に、叡智と先輩は右側の部屋に宿泊することになった。

 部屋の中に入ると右奥にはベッドが、左側には窓があり窓から海が一望できる。他には簡素な机が1つ左手前にあるぐらいで他には何もない。

 荷物を置いて窓からの景色を眺めたりしてから部屋をでると、ちょうど彼も同じタイミングで部屋から出てきた。

「能登の部屋からは海が見えたって感じかな?」

「そっちは森の陸地の方に窓が着いているってことか」

「おお、察しがいいね」

 とりあえず1階に降りるとリビングには先輩と叡智がいた。

「まず食事でもとりますか。冷やし中華でいいですか?私の得意料理なんで」

 叡智はそう言ってキッチンに向かっていった。料理とか作る管理人的な人は今日の昼過ぎから来るため今日の昼は自分達でつくるそうだ。

「私も手伝うよ」そう言って先輩が立ち上がった。それに続くように僕と彼もキッチンに向かう。

「冷やし中華って4人でつくるような料理じゃないですよ。なによりお客さんですし、座っていてください」

「そういう訳にもいかないよ」と彼。

「私は料理でも一通りできるから安心していい」と先輩。

「僕も料理はそれなりにできるよ」僕も負けずに言う。

「いや、私の特別な方法でやるんで手伝って欲しくないですね」

 叡智がここまで言うならと僕達3人は引いた。

 なんだか少しガッカリ意気消沈。

 とまではいかないけど。

 リビングに戻ってマッタリしていると叡智の料理が完成したようで「できましたよ」の掛け声とともに料理を持ってきた。

 見た感じでは一般的な冷やし中華と比べても変わった感じがしない。料理は見るものではなく食べるものなので、さっそく食べてみる。

「どうですかどうですか?」

 叡智がニコニコしながら聞いている。どうですかと言われてもこれは……。

「普通だな」

「普通だね」

僕が返答に困っていると先輩と彼が答えた。あんなに自慢げに言っていた叡智に迷わず普通と言うとは、なかなかシビアだ。

「能登先輩はどうですか?」

「普通かな」

「そうですか。私の自慢の料理なんですけどね。ちなみにどこを工夫していたか聞きたいですか?実はメレンゲを入れていたんですよ」

「メレンゲって卵白を泡立てた?」

「そうですよ。他になんのメレンゲがあるんですか」

「冷やし中華のどこの段階でメレンゲを入れるタイミングがあるのだろうか。どこで空気を含ませた卵白を入れるタイミングがあったのだろうか。そもそも空気を入れたところで何か変化があるのだろうか。詳しく聞くのは辞めておこう。この世には聞かない方がいいこともある。別に聞いてもいいことだが」

「全部声に出てるよ」

 彼に指摘されて自分がベタベタなボケをしていることに気がついた。

「今度こそは美味しい冷やし中華を御馳走しますね」

 はたして今度はいつ来るのだろうか。もう一生来なくてもいいかもしれない。変なものを入れられる可能性がある。カブトムシの抜け殻とか入れそうだ。食感のパリパリを追及した結果として。

 そうして僕達は普通に美味しい冷やし中華をチュルチュルと頂いた。

本当に普通。

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