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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
12/37

高専生とバイキング


 目が覚めたのは午後3時半で思ったよりも睡眠していなかった。部室では叡智が未だに寝ているが先輩と彼はトランプをしている。

「能登おはよう」

 僕が目覚めたことに気付いた彼が返事をした。

「ああ、おはよう。なにしてるの?」

「ババ抜きだよ。参加するかい?」

「いや、いい」

 僕はまた眠りに入った。


 また目が覚めたのは午後4時だ。思ったよりも短いスパンを刻んで寝ていたな。

 目が覚めたら部室には誰もいなくなっていた。予想外の出来事だったため一瞬何がなんだかわからず、

「あれえ、おいていかれたぁ?」

 と情けない声を発すると

「私たちがおいていく訳がないじゃないか」

 先輩の声が聞こえた。

 その声と同時に、いつも布団が入っている場所、掃除機やぞうきんが入っている掃除用具入れ、ソファの後ろから3人が勢いよく出てきた。

「うわああああああああビックリしたああああああ!!!!!!!」

 おもわず情けない声をあげてしまった。おいてかれたの発言も情けない声だったので情けない声二連続だ。

 3人はケラケラと笑っている。

「そこまで笑うことないだろう」

「こうも簡単に引っかかるとは思いませんでしたよ」

「僕の硬派なキャラクター像がぶれてしまう」

 また3人がケラケラと笑い出す。そこまで面白い発言でもなかっただろう。もしかして僕には笑いのセンスがあるのではないだろうか。いや、これは僕を調子にのらして次の発言で全員が真顔になって僕に辱めを受けさせようという作戦だろう。僕はその手にはのらない。人間は考える葦だからな。葦が何かは知らない。たぶんフットの方の足ではない。

「もういいから」

「あれ?いつもの能登君ならさらに調子乗って発言するところなのに具合でも悪いの?もう少し寝たら?また驚かしてあげるよ」

「いたって正常だよ。そうやって僕を陥れようとしたってそうはいかない訳だよ。僕はかしこいから」

「じゃあ打ち上げのお店まで距離があるんでもう出発しますよ」

 叡智の掛け声で全員が部室を出る準備をする。テレビを消してエアコンを消してパソコンをシャットダウンした。

 僕が戸締りをして自転車に乗って高専を出発して坂を下る。そのまま川を渡ってお店に着く。学校から10キロ強の距離にあるその店はバイキングの割には比較的安い値段で食事を取れて、味も申し分ないものである。

 時間は6時過ぎといったところだったが、平日ということもあって待たずに入ることができた。

 席について説明を聞いた後、とりあえず食事を取りに行くことにした。机には焼肉の網が備え付けられていて焼肉も食べられる。

僕は網で焼く用の肉と白米、あとちょっとしたものを持ってきた。他の部員もお寿司だとかアイスだとかを持ってきた。

 もうアイスかよ。

「じゃあ乾杯しましょうか。部長挨拶をお願いします」

「え、じゃあカンパーイ」

「普通ですね」

「ありきたりだね」

「センスが無いな」

 と叡智、彼、先輩が僕の挨拶に苦言をていしてきた。乾杯の挨拶なんて普通の高校生なら知らないだろう。なんで僕はマゾでもないのに、こんなにも責められなくてはいけないのだろうか。納得がいかない。

「じゃあお手本をみしてくれよ」

「いやです」

「遠慮しとくよ」

「少しは自分で考えろゴミ」

「ちょっと先輩だけ当たりが強くないですか?」

「そんなことはいいから乾杯の挨拶をしたらどうだ」

「カンパーイ」

 僕が挨拶をしてから食事を食べ始める。

 肉を焼いたりお寿司食べたり、アイスを食べたり。ちなみにアイスを食べているのは先輩である。成績優秀で変人で偏食な金髪のツインテールとかキャラクターが濃すぎる。こんなライトノベルの登場人物みたいな人が実際にいるのだから高専は恐ろしいね。高専には世間の常識は通用しないのである。ライトノベルと違うところといえば、紙面の残念系美女と比べて“残念”の域を超えているところだろうか。物語の残念系でも授業中に逆立ちはしないし、部室で授業受けようとは思わない。

「先輩いきなりアイス食べるんですか」

「食前と食後にはアイスをたべる主義なんだ」

 糖尿病になりそうな生活習慣だ。しかも出費も大きくなりそう。メリットがなにもない。唯一あげるならば美味しいぐらいだろうか。

「じゃあさっそく高専祭のバンドのことに入りますけどね」

と叡智が言って続けて、

「なにか弾きたい楽器とか曲とかってあります?」

 と聞いてきた。さっきまでは僕に部長だからどうのこうの言っていたくせに、今はもう叡智が部長なのではないかという感じのリーダーっぷりである

 そもそも修繕部としての活動ではあるが企画は叡智なのだからこれが正しいのではないのだろうか。知らないけど。

「僕はドラム経験者だからドラムかな」

「私はなんでもそれなりにできるぞ」

「能登先輩はキーボードでいいですよね?」

「え?なんで?」

「私がボーカルとギターをやる」

「そして私がベースとサブボーカルやるんで能登先輩が必然的にキーボードになりますね。そういうことです」

「叡智と先輩は既に決まっているのか」

 いつのまに決めたのだろうか。この2人が話合っているところを想像するだけでも難しい。でも、なんだかんだで息が合いそうな気もする。悪友がどうのこうのって話をどこかで聞いたような気がしないでもないけどやっぱり聞いていないのだろう。

「彼さんは楽器もってますよね?」

「持っているよ」

「じゃあ楽器持っていないのは能登先輩だけですか」

「キーボードなんて持っていないよ」

「じゃあ私の持っているキーボードあげますね」

「あげる?貸すじゃなくて?」

「我が家に使っていないキーボードがあるんですけど、別にグランドピアノもあるんで本格的に用無しで邪魔なんですよね」

 家にグランドピアノがあるとか次元が違う。そのくせして自転車は9800円(税抜)で買えそうな安物なのは最近の金持ちの流行りなんだろうか。金持ちの考えることはわからん。

 しかしこうも簡単に人から物を貰うのはどうなのだろうか。

 僕は少し考えて、

「じゃあ貰うわ」

 と言った。

 部長としての、先輩としての、年上としての面目が全て見事に潰された瞬間であった。背に腹は代えられない。プライドとかあってないようなものだ。

「弾きたい曲とかありますか?」

「私は何でも歌えるぞ。へヴィメタでも演歌でも」

「私も特に歌えない曲はないですかね」

「僕も特に意見はないよ」

「能登先輩は何かあります?どうせアニソンですか?」

「どうせとは何だ、どうせとは。アニソンを馬鹿にするなよ」

「いや私もアニメみますけど、先輩は学校でもアニメの話するじゃないですか。公私わきまえてくださいよ」

「そりゃ普通の場所なら話をしないけど高専なんてどこでもアニメの話をしてるから問題ないでしょう。男子の割合が高いから下ネタも授業中でも休み時間でもジャンジャカジャカジャカと話されているし」

「まあそうですけど」

「じゃあ一人一曲ずつ演奏したい曲を用意しておくことにしようか」

「先輩のわりに無難な案ですね」

「成績優秀だからな」

 前々から思っていたのだが先輩は金髪のツインテールという最高にロリ要素満載なのに口が悪いのはどうなのだろうか。ツンデレという感じの口の悪さでもないので、ただただ口が悪いだけである。

「悪かったな口が悪くて。」

 おっと聞こえていたようだ。

「いや、先輩はナイスツインテールですよ」

「それ見た目褒めているだけですわよ」

「気持ち悪い語尾の使い方」

「もう絶対使わない」

「いやそこまで落ち込まなくてもいいですよ」

 その後も話こそはしたものの、バンドに関する話をする訳でもなく、かといって他の重要な話をする訳でもなく、打ち上げは終わった。

 打ち上げといっても明日も体育大会はあるので何に対する打ち上げなのかはよくわからない。準優勝おめでとう会とかでよかったのではないだろうか。そして誰もそれを突っ込まないのは何故だろうか。

 タイムリミットの時間が来たので食事を終えて会計をした。タイムリミットの時間って意味が重複してしまっているが、国語力がなんとかかんとか。高専生は国語力が普通高校と比べてどうのこうの。

 会計が済んで帰宅した。

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