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高専の常識は世間の非常識  作者: シャバゲナイト老婆
メインエピソード
10/37

高専生と打ち上げ

 僕はグラウンドからでて部室へと向かう。

 部室のドアをあけると先輩がソファに横になっていた。

「ああ、能登じゃないか」

「先輩は競技でないんですか?野球上手かったんでソフトボールとか出ればいいじゃないですか」

「ソフトボールは団体競技だろう」

「なにか問題があるんですか?」

「クラスメイトと一緒に試合する訳だよ。つまり、クラスメイトとなじめていない私は出たところで腫れ物扱いされて終わりだよ」

「自分が変人だという自覚はあるんですね」

「そりゃあ授業を1人だけ教室じゃなくて部室で受けているのに、クラスの人が良く思わない訳がないだろう」

「しかも先輩は1年生の時とはいえ留年してますしね。」

「いや、留年する前でも馴染めていなかったから留年は関係ないよ」

「聞いてるこっちが悲しくなってきました」

「私が悲しくないから大丈夫だ。それより部室に来た理由を聞こうか」

 先輩は僕を壁に押しやって聞く。肩が壁にメリメリとめり込む。

「そんな威圧的に部室に来た理由きかなくてもいいじゃないですか。要件としては、修繕部の打ち上げに誘おうと思ってたんですけど、予定とか入ってます?」

「そうだな。今はトイレに行ってうんこしたいかな」

「そういう話じゃないですよ。あと女子高生がうんことか言わないでください」

「高校生じゃなくて高専生だし、私は今年大学一年生の世代だよ」

「もう先輩の人生は地雷がいっぱいですね」

「成績は良いんだけどな」

「結局先輩は打ち上げいくんですか?」

「行く」

「わかりました」

 グラウンドに行くにもめんどくさいし、教室に行くのもめんどくさかった僕は、部室に残ってテレビを見たり本を読んだりと過ごした。


 昼になると彼と叡智が部室に来た。

「2人とも今までソフトボールの試合してたの?」

「僕は初戦敗退したから叡智さんの応援してたよ」と彼。

「私はずっと試合してましたよ。午後から決勝です」と叡智。

「あの後決勝まで行ったんだ。凄いね」

「決勝は応援に来てくださいね。先輩も」

「別にいいが」と先輩。

「彼さんと能登先輩も応援に来てくださいね。約束ですよ」

「わかった」と僕と彼が同時に返事をする。

「じゃあ、学食に行きませんか?私お腹空いているんですよ」

 叡智はグングンと会話をリードしていく。勢いのあまりこのまま高い壺とか買わされてしまいそうである。

「お昼ご飯たくさん食べて運動しづらくならないの?購買で軽いもの買った方がいいんじゃないの?」

「ゲン担ぎですよ。カツカレーです」

 そうですか。

 どうやら修繕部の全員がお弁当を持ってきていなかったため、全員が学食を頼んだ。

 カツカレー、ビーフカレー、から揚げカレー、コロッケカレー。まさかの全員がカレーだ。狙ったのではない。僕は学食ではいつもから揚げカレーを頼むのである。

 カレーを受け取ってテーブルにつく。食べ始めても、誰も全員がカレーを頼んだことに関して何も言わない。互いに心が通じ合っているから、何も言わなくてもわかるというやつだろうか。違う。

 食事をとって部室に戻る。体育大会午後の部が始まる時間までダラダラと過ごす。叡智はウォームアップしなくていいのだろうか。

 もうそろそろ始まる時間になったのでグラウンドに向かう。

 グラウンドに向かうとほとんどの生徒がウォームアップを始めているようだった。

「叡智はウォームアップしなくていいの?」

「私は動けば動くだけ疲れる人なんでウォームアップいらないんですよ」

 そういうものなのだろうか。運動バリバリ人間にしかわからないレベルの話なのだろう。

「なぁ、能登」

「なんですか先輩」

「キャッチボールしたい。キャッチボールしたくない?」

「僕は午前中にしたんで大丈夫です」

「私はやってないんだよ。大丈夫というのはどっちの意味の大丈夫だ?」

「やらないの方です」

「じゃあやるか。ほら、左利き用のグローブ」

「言葉の壁を感じる」

 外人か何か?

 先輩は僕にグローブを渡すと走って行ってしまった。

 僕に向かって白球が投げられる。それを取って投げ返す。それにしても、試合に出ないのにウォームアップの場所を使ってしまっていいのだろうか。先輩がニコニコしているから良しとするか。先輩は学校でも性格が少しアレなことで有名だから、下手にチョッカイを出す人もいないだろう。

 「バッティングもしたくなった」と言ってきた先輩をなだめているとプレイボールの時間になった。1年化学科と5年機械科の参加生徒が整列をはじめている。僕と先輩はグラウンドの中でキャッチボールをしていたのでグラウンドの隅っこに逃げる。

「じゃあ先輩。キャッチボールは辞めて試合みますか」

「もう少しやりたい」

「後にして今は試合みましょうよ。叡智も出るんですし」

「そうだな」

 素直。

 1年化学科の後攻で試合が始まる。

 先発はやっぱり叡智のようだ。初戦の途中しか見ていないが、見た限りでは5年生にも引けを取らないピッチングだったから良い勝負になるのではないか。

 叡智は投球練習をせずに投げ始めるようでプレイボールの声が響いた。審判も学生だったので響くほどの声では無くて、聞こえたという表現が適切であろう声だった。

 初回、叡智はストレートをメインとした配給だった。

2人目のバッターをフォアボールで出してしまったものの、それ以外のバッターをアウトにして無失点で切り抜けた。

 叡智は4番バッターをインローのチェンジアップでショートゴロに打ち取ると三塁横の草の生えているところに腰かけて観戦していた修繕部一団のところへ来た。

「どうでしたどうでした?凄かったでしょう私の投球」

「変化球はチェンジアップだけか?」と先輩。

「他にスライダーとパームとカーブとスクリューと・・・ドロップぐらいですかね」

「なるほど。頑張れよ」

 なるほどしか言えない。

 なんか球種いっぱい言われた。

 というかソフトボールってそんなに球種あるものなの?分からないけど。

「言われなくても優勝しますよ」

「頼もしいね」と彼。

「それよりも今は打ち上げのことですよ」

 いや、どこからどうみても今はソフトボールのことではないのだろうか。

しかし、試合をしている張本人が、「試合よりも打ち上げのこと」と言っているのだから、これでいいのかもしれない。

「どこか行きたいことあります?というよりも能登先輩がメインで話を進めてくださいよ。部長でしょう」

「はぁ。じゃあどこか行きたいところあります?」

「肉か魚だな」と先輩。

「ぼくは何でもいいよ」と彼。

「バイキングにしましょうか。なんでもありますし」僕は返す。

「能登先輩、一応私の話も聞いてくださいよ」

「叡智はなにがいいの?」

「なんでもいいです」

 そうですか。

「じゃあ守備に入るんで私もう行きますね」

 そういって叡智は直接マウンドに行った。どうやら1年化学科は三者凡退で攻撃をおえたようだ。

 5年機械科は選手のバランスが全体として高く、守らせても打たせても抜け目がない。1年化学科は叡智の絶対的な投手力で決勝まで登ってきたため、5年機械科と比べるとバッティングは上手くない。叡智の打順は初戦こそは7番にいたが、今は5番に入っている。4番と3番に野球部を入れているようだ。

 その後も試合はどちらも点数が入らずに投手戦になった。叡智は毎回僕達修繕部のいるところへやってきては、特に大事な話をする訳でもなく、またマウンドに向かっていった。

 集中しろ!

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