血清の鬼人16
ダンジョン内を進んで行くと、中ボス部屋の前に辿り着くことができた。
中ボスモンスターは傀儡龍と傀儡龍を操る【ビッグ傀儡師パペッター】だ。
ここでゴルゴン戦の敗北(いや、負けてねーよ。戦略的撤退だよ。)を払拭したいところだ。
ボス部屋の頑丈そうな扉を開くと、作り物の口を大きく開き、とぐろを巻くように構える体長が12メートルほどの傀儡龍がいた。
ちなみに傀儡龍には翼がない。
なのでドラゴンと言うよりも中国系の龍をイメージすると分かりやすい。
部屋の中はかなり広い。あ、この傀儡龍が飛び回ったりするんだろうな。
戦闘態勢に入った傀儡龍は胴体を繋げる関節をカクカクと鳴らして、体をバネの要領で縮こませて力を溜め、俺に向けて顔から突っ込んできた。
あごで地面を抉り喰いながら迫って来るそれは、痛覚のない傀儡だからこそできた攻撃だ。
俺は右手に剣を持ち、ゴロツキAを引っ張りながら身体をねじって避ける。
すれ違いざまに操り糸を攻撃したのだが、上手く斬れなかった。
上位種だから糸の耐久性も上がったのだろうか。
取り敢えず、ゴロツキAが邪魔だ。
部屋の外に置いてくれば良かったかも知れない。
★☆★
意外と予想外な結末を迎えた。
一応勝ったんだけど、ゴロツキAくん大活躍です。
俺が傀儡龍の攻撃を防いでる間にゴロツキAには【ビッグ傀儡師パペッター】を倒してもらうことに決めた。
まあ、うまくいったら儲け物って感じの作戦だったのだが、追加で出てきた傀儡人形の三体にも引けを取らない動きを繰り出してくれたゴロツキAは見事に【ビッグ傀儡師パペッター】を倒してくれた。
それと同時にコントロールを失った傀儡龍は重力に引かれるままに地面に激突しそうになったが、そこは俺が落ちる寸前に【異空間収納】で回収する。
グジョッブだぜ、ゴロツキA。
どうやら【血の眷属】の効果で身体能力が上がっているらしい。
あと俺が持っているスキルも劣化版にはなるがいくつか使えるという。
[フィールドボス“ビッグ傀儡師パペッター”を討伐に成功しました]
[達成パーティーは討伐報酬として“操糸鉤爪”を贈られました]
[次層への挑戦権を得ました。次回からの対戦は任意となります]
地面から現れた宝箱とビッグ傀儡師パペッターの死体を回収し終えて、今日のところは地上に戻る事にした。
回収したビッグ傀儡師パペッターは今夜に食べます。
中ボスモンスターがどんなに美味いのか、俺にどんなスキルをくれるのか。
楽しみで口からよだれが止まらない。