第39話 製作素材を集めよう
オウカがメールで送ってくれた製作に必要な素材リストは以下のとおりだ。
・ハムの粗皮×20
・ラムのフリース×20
・ウサットの毛皮×8
・綿花×80
・ゴムの樹液×6
・鉄鉱石×40
・星の石×2
ハムの粗皮、ラムのフリース、ウサットの毛皮はモンスターを倒した際のドロップアイテムで、カエデとリリーの二人が所持している数を合わせれば必要な数量に達している。
次に綿花、ゴムの樹液、鉄鉱石だが、これは採集クラスで手に入れることが出来るアイテムである。
「お兄ちゃん、これは採集で手に入るの?」
カエデが素材リストを指差しながら質問した。
「そうだな。綿花は園芸師の草刈り、ゴムの樹液は木こりの樹液採集、鉄鉱石は採掘師の採掘で手に入れられる」
「へえ」
「それじゃあ、サブクラスを取得しないといけませんね」
アックスが答えるとカエデが相槌を打ち、リリーがサブクラスの取得を提案した。
「いや、今回は別の方法で手に入れよう」
「別の方法?」
「冒険者ギルドの納品依頼クエストが解放されただろう? モンスターのドロップアイテムを納品すると報酬でお金かアイテムを選択出来るんだ。ちょっと試してみろ」
「分かったー」
カエデが冒険者ギルドのNPCに話しかけてラムのフリースを納品すると報酬の選択画面が空中に浮かび上がった。
報酬はシュテルもしくはアイテムを一種類だけ選択出来るようになっている。
カエデは交換可能アイテムリストの中から綿花を選択した。
同じようにリリーもアイテムを納品してゴムの樹液と鉄鉱石を必要な分だけ手に入れた。
「なんか簡単に集まっちゃったね」
「あとは星の石だけですね。でも納品依頼で交換可能なアイテムリストの中に星の石はありませんでした」
「星の石はネームドモンスターのドロップアイテムだからな」
「ネームドモンスター?」
「ああ、ネームドモンスターっていうのは――」
アックスは二人にネームドモンスターについて説明した。
ネームドモンスターとはフィールドに一体しか存在しない二つ名を持つモンスターのことで、通常の敵よりも強く、倒すのが難しいモンスターである。
レアなアイテムをドロップするため狙うプレイヤーは多い。
一度倒すとリポップするのに時間がかかるため、フィールドで沸き待ちをするパーティーがいるくらいだ。
「この星の石を手に入れるには『流星のプルトガ』というゴーレムを倒すかプレイヤーバザーに出品されている星の石を購入する必要がある。星の石を手に入れる方法は二人に任せるが……どうする?」
手に入れる方法は一つではない。
倒すか、購入するか。
アックスは手に入れる方法を二人に決めさせることにした。
「ちなみに星の石はバザーにいくらで売ってるの?」
「前にバザーで見た時は2,000シュテルだったかな」
「高っ!」
アックスが質問に答えるとカエデは目を見開いて驚いた。
ゲームを始めたばかりのカエデの所持金とほぼ等しい金額であったからだ。
「私たちだけでそのネームドモンスターを倒せるのでしょうか?」
「流石に二人だけでは倒せないだろうから、倒しに行くなら俺も手伝う」
「なるほど」
リリーはアックスの言葉を聞いて何やら考えながら頷く。
カエデとリリーは「どうしようか?」とひそひそと少し相談したあと、アックスに向き直る。
結論が出たようで、二人は口をそろえて声を発する。
「倒しに行く!」
「倒しに行きます!」
アックスはその言葉を聞いてゆっくりと首を縦に振る。
二人がネームドモンスター討伐を選んでくれて良かったとアックスは思った。
バザーで買えば簡単に素材が揃うが、それだと簡単過ぎてつまらないなと思っていたからだ。
「本当にいいんだな?」
「お兄ちゃんが手伝ってくれるなら倒せるでしょ」
「まあ、多分な」
二人はアックスが手伝ってくれるなら倒せるだろうと期待しているがネームドモンスターは通常フルパーティーで討伐するモンスターである。
過度に期待されて討伐に失敗した時に落胆されても困ると思い、アックスは曖昧に返事を返した。
しかし、負けるつもりはない。
「良し、それじゃあネームドモンスター『流星のプルトガ』を倒しに行くぞ!」
「おーっ!」
「おーっです!」
アックスが拳を宙に突き出して声を上げると、カエデとリリーも真似をして楽しそうに声を上げる。
こうして三人は星の石をゲットするべく、パーティーを組んでネームドモンスターを倒しに向かうことになった。




