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第34話 カエデとリリーのレベル上げ

 素振りの練習を始めてから数十分後――


「それじゃ、お兄ちゃん、レベル上げしてくる!」

「私も行ってきます」

「ああ行ってこい」


 アックスは北の平原の戦闘フィールドに向かって突撃するカエデとリリーの後姿を見送った。

 二人は武器を手に握り、ポップしたモンスターに向かって攻撃を仕掛ける。

 カエデの相手はモグラ型のモンスターの「モッグ」で、リリーの相手はヒツジ型のモンスターの「ラム」だ。

 ハムはレベル1だったのに対してモッグとラムはレベル2でハムよりもやや手強い。


 モッグとの戦闘で注意しなければならない点は鋭い爪と突進による攻撃だ。

 地面に潜って身を隠したかと思うと、急に地面から飛び出して襲いかかって来るので油断出来ない。

 ラムとの戦闘で注意しなければならない点は鼻から噴射される触れると爆発するシャボン玉と体毛による防御だ。

 シャボン玉を避けながら攻撃をしなければならないことに加え、モコモコした体毛は攻撃の威力を吸収してしまうためダメージを与えるのが難しい。

 二人とも初めて戦うモンスターの行動パターンに戸惑い苦戦している。

 アックスは二人のその様子を見て少しだけアドバイスをすることにした。


 まずはカエデからだ。


「モッグが地面から飛び出す瞬間、地面に亀裂が入る。飛び出す場所を見極めて攻撃するんだ」

「分かったー」


 カエデは短く返事をしてアドバイスに従ってモッグの地面からの飛び出し攻撃を避ける。

 そして――


「せーのっ!」


 飛び出すのを待ち構えていたカエデは空中で無防備になっているモッグにフルスイングする。

 素振りの練習の時と同じ綺麗なフォームだ。


「ホームランっ!」


 モッグは石の斧に強打されて吹っ飛び、カエデはアックスの方を見ながらどうだとばかりに自慢げに笑みを浮かべた。


「カエデ、まだ敵を倒してないぞ。油断するな」

「えっ?」


 カエデは背中にモッグの突進攻撃を受けてダメージを食らった。


「あ、痛っ! このぉっ!」


 調子に乗って油断するからだ。

 カエデが再び攻撃を加えるとモッグはポリゴンの粒子となって爆散した。

 油断さえしなければカエデは問題ないだろう。


 次はリリーだ。

 リリーはラムの鼻から噴射されたシャボン玉をウッドシールドで防ぐ。

 ウッドシールドにシャボン玉が当たると弾けて小さな爆発が連続して起こり、その衝撃でリリーは体勢を崩して後ろにのけ反った。

 正面は危ないと判断したリリーはラムの側面に回り込み木剣で攻撃を仕掛ける。

 しかし木剣の攻撃はラムのモコモコとした体毛に衝撃を吸収されてほとんどダメージを与えられていない。

 ラムは攻撃を受けると俊敏な動きでリリーと距離を取り、再びシャボン玉を放った。


「リリー、胴体の体毛に攻撃してもダメージにならない。側面に回って脚を攻撃するんだ」

「はいっ!」


 ラムはまず体毛のあまり生えていない脚を攻撃して動きを止める必要がある。

 リリーがシャボン玉を避けながら側面に移動して脚を攻撃すると、ラムの頭上のネームの隣に移動速度低下の状態異常アイコンが追加された。

 ラムは逃げることなくリリーの方に顔を向けて口を開き、気の抜けるような雄叫びを上げる。


「メェエエッ」


 攻撃されると思ったリリーは慌てて盾を構えた。


「大丈夫だ。シャボン玉は連続して使えない。弱点の頭を攻撃するんだ」

「は、はいっ!」


 リリーはスキル「クロススラッシュ」を放ち、ラムの頭に二連続の斬撃を叩き込む。

 すると、ラムは「メェエエ」と悲鳴を上げた。

 シャボン玉を避けながら側面に回り込んで脚と頭に攻撃を繰り返すこと数回、ラムはポリゴンの粒子となって爆散した。


「やりましたっ!」


 リリーが勝利に喜んでいると――


『レベルアップ! レベル2』


 頭上にファンファーレと共にポップアップメッセージが浮かんだ。


「アックス先輩、レベルが上がりました」

「おめでとう。ステ振りするのを忘れずにな」

「はいっ」


 リリーはステータスメニューを開くとVITにステータスを振った。

 しばらくして――


「お兄ちゃん、わたしもレベルが上がったー」


 カエデもレベルアップしてレベル2になり、ステータスを振った。

 本来はVITに振るべきなのだが、カエデがアックスと同じステ振りを望んだのでSTRに振ることに。

 これでもう後戻りは出来ない。


 レベルが上がったことで戦闘は楽になり、二人のレベル上げは順調に進んだ。

 アックスは戦闘を見ながらたまにアドバイスするだけだ。

 二人のレベルがある程度まで上がって戦闘に慣れるまでは戦闘に参加しないとアックスは決めていた。

 パーティーを組んで、アックスがモンスターを倒してもレベルは上がるのだがそれでは意味がないからだ。

 カエデとリリーはそのままレベル上げを続けた。

 しかし二人がモンスターの戦闘に慣れてくると、アックスがアドバイスをする必要はあまりなくなり暇になってきた。


 手持ち無沙汰になり、アックスが二人の戦闘を眺めていると――


「あのー、すいません。良かったら僕らにも指導をお願い出来ないでしょうか?」


 初心者らしきランサーとグラップラーのプレイヤー二人組が話しかけてきた。

 アックスの指導する姿を見て自分たちもと思ったようだ。


「すまないが……」


 一瞬断ろうと思ったアックスであったが、カエデとリリーの二人は黙々とレベル上げを続けている。


 レベル上げは順調そうだし、少しの間なら問題ないだろう――

 無下に断るのも悪い気がするしな――


「まあ……少しの間ならいいぞ」

「やった!」

「ありがとうございます!」


 アックスが指導を引き受けると二人は嬉しそうに感謝の言葉を述べた。

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