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第17話 鉄血の侍オウカ

 半裸状態でホルンに覆いかぶさっているところをオウカに見られて、アックスは慌てた。

 この体勢はどう見てもメイドNPCを襲っているようにしか見えないだろう。


「オ、オウカ、これは違うんだ……」


 アックスは起き上がり、この状況について弁解を試みた。


「何が違うんだ? 俺にはお前がホルンを襲っているようにしか見えなかったが?」

「誤解だ。バランスを崩してつまづいたんだ。な、ホルン、そうだよな?」

「は、はいっ」


 必死になって誤解を解こうとしたのだが、オウカの目は性犯罪者を見るかのように冷たいままだ。

 オウカはホルンに手を差し伸べて立ち上がらせ、守るように背後に下がらせる。


「ホルン、アックスに胸を揉まれていなかったか?」

「揉まれましたっ」


 オウカの質問にホルンが答えた。

 このNPCは本当は中に人間が入ってるんじゃないかと疑いたくなってくる。


「この変態が……」

「誰が変態だ。偶然触ってしまっただけだ」


 あくまで偶然左手が胸に添えられていただけであって断じて揉んではいない。これは不幸な事故だ。

 変態呼ばわりは心外である。


「それに変態だって言うならホルンをこんな巨乳にデザインしたオウカも変態だ」

「お前と俺を一緒にするな。メニューオープン」


 オウカは空中に浮かんだメニューパネルを操作して、プレイヤーハウス管理者権限を執行した。


「プレイヤー名アックス、強制退去、敷地内への入場禁止」

「ちょ、待てっ――」


 止めようとしたがもう遅い。

 次の瞬間、アックスの身体は建物の外に投げ出されていた。

 再びプレイヤーハウスの敷地内に入ろうとするのだが見えない壁に阻まれて入ることが出来ない。

 アックスは壁を叩きながらオウカに呼びかける。


「オウカ、何するんだっ。入れてくれ!」

「ホルン、塩を外に撒いておけ!」

「はいっ」


 ホルンは意味が分かっているのか分かっていないのか店の外に出て、調理アイテムの食用塩を庭にパッパッと撒いた。


 それから数分後――

 ホルンとオウカに謝罪をして誤解を解き、なんとか許してもらえた。


「反省しているか?」

「反省しています。だから俺を店に入れて話を聞いてください」


 明日のために装備を修理してもらい、お金を貸してもらわなければならない。


「ところでアックス、お前、その格好は追剥にでもあったのか? 最近、この辺りでPKの被害が続出していてな。たしかPKの名前はペロとかいう弓使いだ」


 オウカは半裸のアックスを見てプレイヤーキラーに襲われたのかと思い顔を顰めた。

 アックスはそれを見て敷地内に入る妙案を思いついた。


「ああ、ペロってあのプレイヤーキラーの実況者か。ああ、襲われた。ここにいたらまた襲われてしまう。だから入れてくれ」


 アックス胸の前で手を組み、涙目になってオウカに敷地内への入場許可を懇願した。

 瞳を潤ませて今にも泣きそうな表情のアックス。

 これが少女なら可愛いものだが、半裸の無精髭の大男がやるとなるとはっきり言ってキモい。


「……プレイヤー名アックス、敷地内への入場許可」

「お、壁が消えた」


 見えない壁が消え、アックスは敷地内にやっと入ることが出来た。


「それで、プレイヤーキラーはどこにいるんだ? 始末してくる」


 オウカが呪文を唱えると足下の地面に幾何学模様の光り輝く魔法陣が現れる。

 そして魔法陣から侍の霊体が浮かび上がった。

 オウカの肉体と侍の霊体が重なり一体化してゆく。


「憑依召喚、剣豪マサムネ」


 作業着姿から一変してオウカは真紅の武者鎧を着た侍へと変身した。

 オウカは自分が製作した刀を腰に差し、柄に手を添える。


 DTOにおいてサモナーは召喚士というより霊媒士に近い。

 サモナー専用のサブアームであるミストルテという依り代の人形にソウルジェムという英霊やモンスターの魂の宿る石を嵌め込み、仮初めの肉体を与えることで遠隔操作型の使い魔として使役することが出来る。

 また、ミストルテを使わずに自分自身を依代に召喚することで、英霊やモンスターに変身することも出来る。

 オウカが使ったのは剣豪マサムネのソウルジェムを装備した状態で霊体を召喚して自分自身に英霊を憑依させる憑依召喚という上位召喚魔法だ。

 今のオウカは顔は変わっていないが、剣豪マサムネの霊体を肉体に宿した侍である。

 DTOで剣豪マサムネのソウルジェムはオウカしか見つけておらず、今のところオウカだけが使えるレア憑依召喚となっている。

 ビリビリと殺気が伝わってきて戦闘準備万端といった感じだ。

 戦う気になっているオウカであったがプレイヤーキラーはアックスが倒してしまったので存在しない。

 アックスは申し訳なく思った。


「あ、すまん。さっきの話は嘘だ」

「嘘? どういうことだ?」

「襲われたのは本当だが、ペロとかいうプレイヤキラーなら返り討ちにしてやったぞ。今頃、アルバトロス監獄島にいるんじゃないか?」

「なんだと? とりあえず店の中で詳しい話を聞こうか」


 アックスは店の中に移動した後、店内の商談用のテーブル席に座り、森でプレイヤーキラーに襲われていた初心者を助けたことを話した。

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