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鏡のボク

作者: 狂水

 「さぁ、次は誰だ?」

ゆらゆらと揺れる微かな灯に照らされて、少年は問う。

「僕だよ。じゃあ、早速やるね。」

また一つの灯が消されるために語られる、物語の始まりである。


 …数年前のことだったと思う。始まりは一枚の手鏡を拾ったこと、なんだろうね。

ある日の下校の時に、鏡が落ちているのを見つけたんだ。黒くて凝ったデザインの鏡を。

いつもは落ちている物なんて気が付かないのに、ましてや気づいても拾わない僕がそれを拾ったのはなんてなくで、見えない誰かに命令されているみたいに気づけばそれを手に取っていた。

もしかしたら、あの時は本当に誰かに指示でもされていたんじゃないかと今では思うよ。


 初めに異変が起こったのは鏡を拾った日の夜のことだったと思う。

夢実が悪くて夜中に起きてしまった僕は、洗面台の鏡を見ようとした瞬間に頭が痛くなって、倒れてしまったんだ。

数分間ぐらいで気がついた僕はそのままベッドに戻ってもう一回眠ったんだ。


 次に異変が起こったのは、次の日の朝だった。

顔を洗うために鏡を見れば昨日のように頭が痛くなったんだ。昨日よりはマシだったけど、それでも頭が痛いのには変わりなくて、倒れるほどじゃないとはいえとてもきつかった。

でも、そこから少し離れればスゥーっと痛みは退いていって何だったんだろうかと思いながらもその日は大事を取って一日家で寝てたんだ。


 その次の日も、そのまた次の日も顔を洗おうとしたり手を洗おうとしたりして洗面台の前なんかに立てば痛みは襲ってくる。

他にも、学校の女子が使っていた手鏡を見ても頭痛になるし。

ここまでくれば、鏡を見ることが原因なんだとわかってきて、それから鏡を見なくなったんだ。


 鏡を見なくなって三日が経った頃だった。

前に拾ったあの黒い手鏡のことがなぜか頭をフッとよぎって、なんでかわからないけれど、ずっと引き出しに入れっぱなしだった手鏡を持って覗き込んでたんだ。

鏡を見れば、あのキツい頭痛が襲ってくるってわかってたから、最近はずっと鏡を避けていて頭痛がなかったのに。あの時は本当に無意識だった。

そして、鏡を覗き込んだけど頭痛はなくて、鏡の中の自分と目が合った瞬間、鏡から黒い腕が飛び出してきて僕の手をつかんだんだ。

(何?!)って思ったとたん、その手が僕を鏡の中に引きずり込んだんだ。

抵抗していたけど指先が鏡の中に入った瞬間に意識が遠のいていって、最後に覚えているのは何を言っているのかはわからない。

「……なの~ボクだ…るなん…ふこうへ~ばしょ、ちょうだ…」

僕と同じ、『ボク』の声が聞こえた。


 「…その後、気がついたら僕はベッドで寝てたんだ。数日は鏡を見たりするのも警戒してたけど何もなくて。ああ、終わったんだなって思った。」

そう、もう終わったんだ。

「はい、これで僕の話はおしまいだよ。」

そう、これでおしまいだ。あの時の言葉どおり、『僕は鏡の仲で一生眠り、代わりに『ボク』がでてこれた。

そんな結末さえあれば…

「同じ存在なのに、ボクだけ閉じ込められるなんて不公平だよね。だから、君のその場所、ボクにチョウダイ?」

その結末さえあれば、もうイイヨネ?

フッ

また一つ、灯が消えた。

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