しょーとすとーりーず12
道を歩ルクおんな、夜祭りライトに照らしダされかならずキラめいてユレている金魚いりの水風船・ガ踊どッテイる、揺らめかせて、浴衣ノ少女ハカエッテイク、アスハマタニチジョウ/ヒール鳴らシ彼女は日々、歩ルイテカエル、きおくの岐路、ココハ帰エリノミチ、買って、ぶらサゲル、水風船越し、金魚を交わしてピンと張られたスカートは往復し、黒いストッキングノシタニは、なま足が匂い経てている。勤務姿のおんな、まいにちかようペットショップ常連の、コノオンナは。
ぽちゃん・・・波紋のひろがりを眺メぼー、トスルジカンヲサマヨッタ、のは何時ノコトデアったものか・・・
濃いムラサキノ花弁、うちがわ、湛えられた薄めノピンクノべとり蜜をうすめたヨウナ溶腋が、ソレハ、最、キケンドヲタカメタ溶腋ジシンノ本能ニノットッタ喰い荒しの恍・惚・状・態、血管血潮(ち・の・く・だ、ち・し・お)、ハラワタの屑、神経ノイト、砕ダケタホネ・・・
ぷかぷかト浮カビすうと沈ズム。
コットンをかおのでっぱりニソッテウゴカス、器用な指ビ先キ、艶をホドコシタ爪がケショウダイへと装飾を加えた、おんなはマイバンノコトココデ素顔ヲスマセ、ぼー、トスルジカンヲ暫時ノタメ始ジメルノデある、一種の、エイエンとよべるシロモノ・・・
そののちジムテキナ意識に返るとオンナハ風呂場へむかうのだった。
シャワーを当てると乳を刺激して両手に延ばした油分のべっとり豊富なぼでぃくりぃーむで乳ぜんたいをそれからコダカイやまを性感帯のてっぺんヘトゆび登山ゆび下山をイキツモドリツ、止メラレナクなってゆくイツモノ習慣にいしきを絡め取られたおんなは、無心であった。
生命のイブキが呼び鈴を鳴らしている。
薄皮を破れば指ビ先キに纏トワリ付ク愛腋ガ甘マイ香オリを放なち蜜となり溢ボレおチタ。
おんなハこの果実の感度ヲ探グリ、愛撫を深め、吐息漏ラした果肉ヲ頬張り噛みツイテ、舌サキでエグりながら啜吸リニ、啜吸ッタ・・・
事の発端はやはり、ソウル市街であった。
なぜなら、美への追及、殊更、黄金律・ヘノ執ジャクヲ強ヨメ加ソク度ヲアゲなガラその欲ク望ウの漏斗ヘト精神の蒸留ブツ・ヲ迎カワセる・そんナそん在イは、コノ☆惑星☆の地ヒョウに貼リ付クスベてのセイ物のなかで、人工の楽園・ノ建設を宣誓シタ、ソウル市民・ヲ置イテ、他カニ無かったからである。
つまり、パンデミックはコノ地ニ因果した。
ソノムカシギリシャノチョウコクニイキウツシヤドラサレタビノメガミガミユウソウナルカミガミソノイキタリョウガフタタビコノチヒョウニスガタヲアラワシタ。
スナワチこのやまいは、マネキンビョウとよばれ定着シテイク運命ニアッタ。
風呂場から上がり体を清めたおんなは全裸だった。
皮膚はますますしろく透き透おっていた。
ぼでぃらいん、むねやおしりはほうまんで美しく、うえすとやあしくびはひきしまっている、えろてぃっく、マネキン病にかかったコノおんなのうつくしさは、顔の端整さのみではなく、病状の進行に比例してまいにちがぜんしんにやどるえろすへとあらわれていくのだった。
全裸のままおんなはベッドのわきにそなえている麗わしの果実の鉢から、かじつをひとつもぎ取った。
ぱちんと香おりは弾じけへやじゅうにヒロがるのだった・・・
楊貴妃はライチをこのみそれをえるためにとおくつかいをだしたほどである。
クレオパトラはいちじくの実にひそませたコブラの毒で自殺を図った。
しかし、いずれの伝承にも、ことのほか、濃いムラサキの花弁、そしてそのうちがわ湛えられたピンクの蜜と溶腋のありさまが、ありありとのこされていることはおそらく偶然ではないことだろう。
ライチはムラサキイロノカベンヲモッタあの麗わしの果実であり、いちじくはあの麗しのムラサキイロノヒトクイバナになった毒の果実にホカナラヌノではないか・・・
無類の雑食性をかかえたこのヒトクイバナに、クレオパトラが自殺のため、部屋中埋ずもれた金の装飾品のひとつを喰い溶かさせていた、という想像は、飛躍よりもなお一層に現実メイている。
キケンドヲタカメタ溶腋ジシンノ本能ニノットッタ喰い荒しの恍・惚・状・態、金の装飾品は砕ダケ、崩ズレ、金粉を撒き散らし金の渦ヲツクッテ呻メキヲあげ、眩バユク発光シテ、溶かし去る、すぐさまにはじめにもどって元の溶腋、以外なにものこらない・・・
いちじく大に肥大した毒の果実がずしっと実のっていた・・・
おんなは病の猛烈に蔓延するソウル市へ渡った、4度目の、挑戦、と呼べるそれは代物であった。
この頃におんなは、ヒトクイバナに与えるのが、金魚、が最も適しているダロウ、という結論を見出していた。
第一に安価であること、第二にコノハナにおいては不可欠な要素を満たしていた、ヒトクイバナの解剖学的異常性、フェティシズム、変態趣味、最、重要であることは、ヒトクイバナを満足させてあげることにほかならぬ。
金魚とくゆうのばらばらとくずれ、喘ぎ、あばれながらもはてにはしずかに堕ちていくサマハ、ヒトクイバナの嗜好性にみごとに相性した。
満たされることにて、すなわち、甘くかおりたかく、なによりも美容効果のインフレーションを起こすのである。この、びっぐばんこそが、世界各地に発生したウチュウヲユラス奇跡の現象なのである。
しんくろするようだが、おんながやまいをはっしょうするうんめいにあるのだったら、このかじつを食べつづけなければ、じゅみょうは3年ともたぬであろう。
この旅行のゲーム性は、規則にのっとっていた、当然ながら、病の帰結は死、であるため、ルール上、感染はゆるされない。
ムジュンしているようだが、おんなは、感染をもくてきとしている。
ルール、感染のためには、法の目を掻い潜らねばならない。
病は血液感染である、女性のみが、感染し、男性や、ほかの生物を介することもない。
世界的に、パンデミック、とはいうものの、異常なまでにソウル市を顕著に、韓国のみに爆発してしまった理由は、そしていまだなお根絶されない理由とは、ソウル市民よりぬぐい去ることのできなかった美容への妄執にほかならず、しかるに、女性のみ、というルートが世界規模ではそれでも拡大を押さえ込んだ大きな要因の一つ、それともう一つ、すでにワクチンは開発されてある、という事由である。
しかし、世界中より根絶されることはない。
そしてソウル市内では、いじょうなる美への偏愛、のおかげで、規制に完全にはいたれなかった、というひとつのウヤムヤヲフクンダ流れに収束していった。
ソウル市。
今やおもてじょうは美のメッカ、であり、裏じじょうでは病のメッカ、であった。
世界中に蔓延、拡大し、ワクチンの完成までかかった5年間のあいだに、HIVの抑制に長けたアメリカを中心として、世界中は結束してその感染の予防に努めた。
ソウル市のみが、美容整形を施していたその代用として、自発的に感染を望んでいった。母から娘へ、知り合いへと。
ルール、血液の譲渡は、違法である。
これは、世界中の決定力である。
そして、パンデミックのさなか、世界中が感染予防に努める裏腹で、ソウル市では、感染者の血液が、高値で取引されて、ぐろーばるしてんでながめると、注射針が、ソウル市局地へ、豪雨した。
ルール、いまやソウル市においてさえ、血液の譲渡は、重罪である。
しかし、なお、取り締まることのできない不可侵領域が、ソウル市に保たれていた。
それが、ワクチンをもってさえ、いまだに根絶できない原因でもあった。
ひとつは、闇医者、問題。
ソウル市には、病にかかっても恐怖感情はだれももたない。
実際、韓国では感染者が病が原因でなくなるより、寿命でなくなる数がうわまっている。
韓国女性の国民的感情において、この、マネキン病に対する危険意識は無に等しい位で、二十の祝いに施されるステータス意識、としての、興奮作用をともなった、あたたかく包まれて家族内でなされる儀式的風習の側面がむしろ凌駕しているのだから。
そして、恐怖のコントロールは、闇医者の存在に握られてもいた。
韓国には、病気の検閲をくぐるクロイ問診書、もしもの体調不良を支え誰にもばらすことのない、診療所が各所にあり、ノウハウがあり、個人個人が秘密を厳守しながらサポートしてしまう経験と技術と秘密裏であるクロノ学校教育。そして寿命を健常態に維持するため何よりの特効薬、アノヒトクイバナの果実が、世界的な名産地である韓国国内には、単なる美容の健康食という建前で非常に安価に、スーパーでもコンビニでも通販でも、近所の駄菓子屋にでも売っていることは、なによりのささえであった。
取り締まることのできないもうひとつの不可侵領域は、恋愛である。
感染ルートは血液であっても、男女間では感染はありえないため、HIVに比べて、感染への敷居は高い。
その上、血液の譲渡が厳しく取り締まれた。
それでもこのやまいのともしびが途絶えない理由、女性どおしの性行為は、事実上不可侵領域として残ったからである。
ソウル市内、特に繁華街の裏通りに、この手の対女性へのサービスを提供するマネキン嬢専門の風俗店が、ソウル市地下、暗黙に蔓延している。
日夜、マネキン病に侵された風俗嬢とマネキン病に侵されたい女性客とのあいだに、なにがおこなわれているのかは、憶測しかできない。
検閲に対して、一切の物的証拠を残してはならないからであり、徹底的に秘密厳守がなされているからである。
そして、いかなる潜入捜査に対しても、性的サービスのわくをこさなければ違法ではない、さらには、その違法性が取り締まられた類例が、ただのいちども、ない。
おんなは地下室より地上へとまいあがった。
息があがっている、瞳がうるわしくうるおい、はだはきもち張りがあたえられた。
4度目、このおんなはツイニ感染した・・・
タンブラーには冷やされた水道水が注がれていた。
おんなは、ただの冷やし水道水を、麗しの果汁を絞って最高のふるーつじゅーすへとかえてしまう。
下着はきぶんでつけない日がある、うすいきゃみそーる、数分前よりさらにうつくしいぼでぃーらいん姿見にうつし、つぎにスッキリシャープな鼻をうつす、よけいなにくはうしなわれていくけれど、しかし張り艶柔らかさは度合いをマシテイク・・・
美ツクシイワタシワマネキン。
鼓動ガキコエルワタシワマネキン。
ワタシハギリシャノメガミガミニ見初メラレ、タンジョウシタバカリノオンナ・・・
TVからは情報番組の映像がながれていた、マネキンノセカイへ誘ざなわれたオンナハ、イマ現実ヲワス
レサリモウヒトツノ時間ヘトナ流ガサレテイクノダッタ・・・
深夜のわいどしょー、死に様市、への潜入。
世界標準として知覚されたマネキン病、韓国ではステータスとさえされている状況、この病は、何よりセレブの証し、である。
じっさいのはなし、感染女性がそのみごとなビルドアップにより、美貌が世界中を虜にしてしまい、せれぶりてぃを掴んだという例証がつぎつぎゴマンと存在し、その更新の記録を築き続いているのが世界的な現状ナノである。
反面。オソロシイゲンショウもうまれている。
そもそもこの病は、ウィルス感染であるが、その症状として、女性の容姿をふくよか且つスレンダー、理想的な容姿、顔立ちと、肌質、肉質をあたえていく、女性あこがれ、羨望の状況をほどこしていくである。
しかしその代償として寿命が縮んだ。
パンデミックの黎明期には3年という非常に短命な不幸が蔓延した。
だが現在では、寿命への特効薬にて、健常者とかわらぬ寿命となっている。
そしてそれでも、なによりの代償が、残っている。
ルール、マネキン病患者は、死後、マネキンとしてあつかわれる。
マネキン病の結末・・・
死後硬直によって、非患者とは違った素材へと変貌し、それはいっさいの腐敗をヤドサナイ、そしてソレハタマシイまでをもうしなわせてしまう、ソウ信ジラレテイル。
マネキン病末期だんかい、特効薬の量、と、容貌、に、ひれいして、患者女性の肉質は、人間ばなれをみせていく。
特効薬の飲み忘れは即死をいみする。
それは突然やってくるのだ。
きけんを顧みず、末期だんかいへとチョウジリをあわせて、その後よせいを過ごす究極のセレブだって世界中すくなくはない。
飲み忘れ、という煩わしさや危険にちょくめんするのだけれども、特効薬のおかげで長寿はまっとうできるから。
リスキー。
しかしおんなが末期だんかいへすきこのむりゆうはある。
ぷろぽーしょん、そしてえろてぃっくは、おんなとしてのきょくげんじょうたいをぐげんする。
わかさ、もねんれいとはきゅうきょくのはんぴれいをしめし、しょじょのからだしょうじょのはりとうるおい。
そして、にくしつが、人工的、究極のねばりとこしをそなえたそざいへとへんぼうしてしまう。
この、にくしつは、世界中で、空前のヒットを記録と記憶をもたらした。
世界中の男性が、その人工的エロティックな性体験へとあこがれた。
世界中の女性が、その人工的カワイイイ女性像へ羨望した。
天然女性時代の終焉・・・
その人工性、に異議をたてたがるだんせいやじょせいも、あるにはあった。
しかし、その懐古しゅみもじっさいの末期患者のうつくしさを目の当たりにしてしまえば、ソノ反旗を翻す、いがいニみちハなかった、そのように、抵抗しがたいホンノウへの魅了、魔性がアルのだった。
ふたたび、りすきー・・・
これだけはいっておく。
じょせいにとっての理想像、その、半面、は絶対的なのであり、そのはんぶんの劇嬢的価値に、おおくの女性が、じぶんのすべてを賭けてみる、そのほんのうとよっきゅうはしぜんはっせいなせつりでもあろう。
・・・しかし、わすれてはならない、マネキン病の不幸な結末という症例、のもたらし、もあるのだ。
死に様。
今はもう、武士のじだいではあるまい。
コノジダイデハ、死に様とは、字義通り、オンナたち、のものであるのだ。
ほんとうに、マネキンオンナたちには、死に様にふかーくかんけいしながらすごしている、よせい、が、わたされる。
マネキンオンナたちの運命。
死姿、が、永久に保存される・・・
死の瞬間、のすがたが、永久瞬間凍結状態で保存されてオンナハ、ずっとマネキンのごとくに、字義通り死後の世界へと維持されてしまう。
ルール。
いつしか、そしてどういういきさつであるか、イマヤひとびとはソコニ執着してないが・・・
ただ、げんじつてきに、マネキン病患者の死体を、にんげんの死体として扱ってはならず、破れば法を犯すこととなる、ソレガ、このあたらしいせかいの秩序として久しくナッタ。
オンナタチのしにざまは、もやされずいきされず、それは骨董品として、ギリシャ彫刻とならぶほどに国宝級に扱われたり、王室御用達の空気人形とされたり、最高級品とレッテルされてえいえんにサマザマナシーン、王位かねもちときには庶民へ、さまざまな位のひとびとのてをわたっていくうんめいであるのだ。
それは、たかねで取引される。
つうじょう、ひとが、最、きをぬくしゅんかん、であるはずの死に際、むかしのさむらいのごと、おんなたちはきをひきしめて、しんでいく。
しかし不幸にもあわれなる死に様や、犬死に、を果たしたしたシタイ、変死体などがまれに発見される。
それはより、よりたかねで取引される。
世界中の笑い種にされて、それは、ある、地下室、死に様市、とよばれる、世界のとある場所への、アワレナマネキンオンナタチの陳列、そののちのオークションによって、はじまる、せかいで、最、狂熱てき祭典のひとつとして。
・・・世界中より集まった選りすぐりのその死に様のかずかずを、次週、お届けしよう・・・
おんなはセクシーな衣装、セクシーなぼでぃ、セクシーなにおいたつ寝室で、うたた寝をしてしまっている、カラーバーの映像の光が、ピンクの溶腋の表面にさらりとうつりこんでいた・・・
花が咲き乱れている。
黄金のマワリヲ花弁のいちまいいちまいが、取り囲んでいるのだ。
正円をえがいた黄金の球体、花弁のいちまいいちまいが半透明の色彩で、隣なりアッタそのいちまいいちまいの色彩がすべて異り並んでいる。
風にゆれている、ちぐはぐ、いちまいいちまいが花弁をゆらしている、肢を生やした半透明の色彩の群れ、あるき、羽ばたき、風ごとに散っていく。
ざわツイテ、無風のかぜに揺りウゴかされ・・・
蔦がならんでいる。
金色の蔦、自己増殖のスピードのたかまり、ほそく蠢ゴメく群れは絡ラマッて、自己増殖のすぴーどでかたまり、細密なデザインへたかまりならんでいく・・・
ほそいミミズのむれがうようようよ金粉に群れ金粉を喰い金粉を排泄している。
金粉に塗ぶされたほそいみみずのじこぞうしょく、うようようよと美しい幾何学模様にあつまって、それは蔦でありほそいミミズの絡まりだった。
正円の黄金の球体から、花弁がはなれた。
2つの色彩がペアとなった半透明の翅、まえ翅はおおきくうしろ翅はちいさく4つの色彩が羽ばたいていく。
半透明のカゲロウの翅は発光しているため黄金をよりいっそう輝かせるのだった、カラフルないちまいいちまいのともしびが、黄金を極彩色に照らし出し、百花繚乱無数のしきさいを点滅させて一面むげんに転ろがる黄金の球体よりいっせいに、カゲロウの大群は飛び放った。
黄金の球体と、黄金のほそいミミズをいっせいに闇が覆いこんだ。
跡形もなく、ここにはなにひとつけはいすらかきけされてしまっていた。
沈黙がやどった・・・
地響きである、おもおもしくゆらしているきょだいなあしおとは、はじめにその震源地の苛烈さを脳裏に直覚させ、しだいにそれはこの地へとちかづいているということをいっぽいっぽものがたり、伝播しているまぐにちゅーど。
闇の奥のおくより、眩バユイヒカリガ射シ、ソレハやがてぜんたいのやみを拭ぐいさってしまった。
みずから発光する黄金のキョダイナブッタイがあるいてくるのだった。
たいようよりもまばゆきひかり・・・
・・・大仏、みずから発光する黄金の巨大な、生きただいぶつが、ちょりつしているのだった・・・
・・・大仏が口を動かすたび空気を裂く軋み、地中深くよりぷるぷるぜんしんの受容器を覆いこむ地鳴りが雷鳴のごと、きしみわたる。
大仏は経を唱ナエテいる。
シカシ、つうじょうこのきょうれつなハツゴをとらえることはゼッタイニデキナイ。ナゼナラソレハ、寺院に下がる釣り梵鐘にとじこめられたにんげんのかんじる、その梵鐘を、地固め機械ランマの衝撃力で長時間高速度で叩き続ける衝撃音と同じであるからだ。
ただ大仏の眺メル先キに閉ジコメラレテ、身動ゴキモトレず、破壊サれてしまった受容器の血シブキニサエ冷淡サヲうカベテおとならぬしょうげきのむこうへみえる、めにみえぬもの、きこえぬもの、しかしなによりきょうりょくにかんじるものをかんじているのだった。
じかんせい、もののへんかすらとおりすぎ、ふへんのせかいえいごうのじかんをとらえ、とらわれていたここはてんなるじごくじなるてんごく。
・・・私は、経が、地割レヲおコシ、ソレガ広ガッテユクさまをチョッカクシタ。
経ハツヅク・・・佇立した生きた大仏の傍を、あしもとの地割レノ深カク地ノ底ヨリ這イ出タ鬼ガ、ゲキレツな黄金ノ太陽ノ放射ニ皮膚ヲ焼カレテ、シカシその金属質ノカラーにはより磨ガキが掛かッテ、ゾクぞくと長蛇のレツヲツクッテイク。
黄金の太陽、極彩色の金属の輝き鬼の皮膚の照り返し、やまない経長蛇の列・・・
鬼は赤ん坊をかかえていた。
鬼に抱えられて、赤ん坊は泣き喚く、しかし大仏の放射に赤ん坊のすがたはぎらぎら光の闇に葬り去られ、大仏の経に赤ん坊の泣き喚きも衝撃する地鳴りへとかき消されて沈黙しているに等としかった。
無量大数のおにのさんれつ、やがて、えいごうむへんの経を唱えおえた大仏が、なにかを手のひらへと収め闇へとあるきはじめた。
おうごんのてのひらに吸いついていた、それは遺灰だった、ソノ遺灰コソワタシノモノデアル、ト当然ナガラワタシハチョッカクシテイタ・・・
朝がやってきた。
おんなはなぜだか純金のおおきなピアスを徐もむろにはずし、濃いムラサキノ花弁、うちがわ、湛えられた薄めノピンクノべとり蜜をうすめたヨウナ溶液へと落とし込んでしまった。
ぽちゃん・・・波紋のひろがりを眺メぼー、トスルジカンヲサマヨッタ、のは何時ノコトデアったものか
・・・
おんなは死んだ・・・
純金成分煮詰めた毒果実を血液ジュウにクギ刺シテ。
しにたくもないのに、そして、どくかじつであることもしっていながら、おんなはなぜだか半透明な自殺を遂げた・・・
-り・ゆ・う・な・ど・な・に・も・な・い-
おんなは火葬された・・・
ほうりつがあるのに?
だれが?
いえ。
理由など、何もない。
ただ。
おんなは、マネキンとなって、焼かれ、灰となった・・・
法衣を着た僧、であろうか・・・
何、ではない、何か・・・である。
じっさいかれは、何者でもよい、のであるし、ある面からすれば、現実も世界だって、何者でも、ない、のであることが、このうちゅうのしんじつなのであるのだから。
かれは、小舟を漕いでいた。
行く先は?ここは小川?ここは海?ここは砂漠?ここは大平原?ここは大山脈?ここは大都市?ここは焼け野原?・・・
ここはすべて、である。
ここは、だいうちゅう。
そのすべてに風が吹き込んで、わたし=女=マネキンの、遺灰・・・は、僧侶によって撒き散らされてしまった。
わたしは、まかれていく・・・・・・
しのかんかくとは、こういったものか。
マネキン病の真実について、終焉たるいまの今、やっとのことで、わたしは気がついてしまった。
マネキン病患者、死とともに、物体として処理されてしまう悲劇のヒロインたちの、結末・・・
しかし、彼女たちは、永遠に、終わらない・・・
なぜなら、わたしは、いま、しってしまったのだ。
かのじょたち、まねきんおんなは、しご、えいきゅうに、意識が宿って離れない・・・
あたかも、物体にたましいが宿るように、世界中の、たかねで取引される、高嶺の花・・・
その億万長者たちの手元で、それぞれの用途にあわせて、おんなたちの意識が・・・
永遠に死ぬことなく息づいていくというジジツ・・・・・・
遺灰となったわたし、のいしき・・・そんななか吹き込んだかぜにのって、わたしは、千の風になって、かくさんされて、わたしは、やがて、せかいじゅうへと、ひろがっていくのである。
その、すみずみさえ、こまかくちぎられた、ひとびとのもとからは、消え散ってしまったとされてしまう微塵なるクズ、そのひとつひとつに、隈なく、美人なるわたしの意識が、鮮明に宿り、いきづいているのである。
わたしは、ぜんたいだ。ぜんたいそれぞれがあって、それはねっとわーくのようでつながっているのであって、やっとひとつ、わたしがかくりつする、あいはんして、わたしの、わたしといういしきは、ちりじりにこなごなにフンサイされてしまったそのイチイチニ、ぶんべつされてアルわたしがやどっているのであり、それらは、カクジ、個別の意識をもっている。
光子と光波のかんけいのようだ。
わたしのいしきは、せかいじゅうへ、やがては、うちゅうじゅうにむけて、ひろがり、そんざいしつづけていく・・・・・・
・・・・・・まねきんおんなの意想外なるけつまつなのよ・・・・・・