幕間 焦燥
間が空いちゃいました。
仕事いそがしす。
今回は初めての幕間。短い。そして美人聖騎士登場。
女騎士いいよね。勝気で凛としたパツキン女騎士。亜久里明日さん的な。
ちなみに女騎士団長さんのステータスは平均200くらい。
人狼なら3,4匹に囲まれても危なげなく勝てる。MP高くて魔術得意だから。
一流冒険者もこんくらいのレベル。
ラジアータ王国、一角聖馬騎士団団長のフィオナ・アルデンティオは焦燥感を抱いていた。
団の執務室で身を休めるが、じりじりと焦がすような焦燥感に心は休まらない。
その原因は昨今の魔物の活性化による被害への対処だ。
数年前から魔物達の襲撃による被害が、常駐兵団のいない農村地帯や交易路を行き来する商人達を中心に深刻化している。
王国に所属する騎士団は度々出征し、付近の強力な魔物を討伐任務に追われている。
一角聖馬騎士団は女性のみで構成されており、その任務は基本的に要人の警護や有事の際の王城防衛であり、臣民への人気取りが一番の重要任務と言ってもいい。
一昼夜を馬で駆けて野営を張り、魔物の棲み家を捜しだして襲撃して殲滅する過酷な出征任務に投入される事はまずない。
とはいえその実力は決して他に劣るものではなく、王都近郊ならば魔物討伐も行っている。
常ならば討伐任務でそこまで忙しくなることはなかった。
1.例年に比べて一度の討伐任務にかかる期間が長く、騎士の損耗率も高い。
2.普段は人里近くには現れず、大きな群れを作らないオーガやトロールなどの強力な魔物が集団で現れる。
3.討伐依頼の件数が多く、ギルドに流れた依頼も処理しきれずに山積みとなっている。
こんな事は例年にない事であり、まさしく異常事態だと言える。
が、誰も彼もが目の前の任務に忙殺され、冷静に考える事ができずにいる。
フィオナは首を真綿でじわりと締められている様な錯覚を覚える。
大森林を超えた先のデイン村ではCランク魔獣であるワーウルフの群れが棲みついて、甚大な被害を村にもたらしているという。
被害報告と討伐依頼が届いて相当期間が経つというのに、未だに討伐できていないのは馬で2ヶ月もかかる僻地まで出征する余裕が王都の騎士団にないからだ。
大森林をまっすぐ突っ切れば徒歩でも1ヶ月でいけるかもしれないが、ワーウルフを狩ろうと思えば正騎士であっても3人がかりだ。
群れが何匹で構成されているか調査してみないと分からないが、大軍で森を進めば魔物どもの格好の餌食となるだろう。
中隊規模の戦力を2ヶ月も王都から離せる余裕は今の王国にはない。
どれだけかかるか分からないが、魔物による被害が沈静化するまでは村を救う事は難しいだろう。
悲痛さに胸を痛める。
こんな事を考え続けていれば、気が休まるはずもない。
無理やりにでも仮眠を取ろうと、フィオナはワインを一息にあおり、眼を閉じて皮張りの豪奢な椅子に身を預けた。
王都に駐在する騎士団は白鱗聖竜騎士団、黒鱗聖竜騎士団、白翼聖馬騎士団、黒翼聖馬騎士団、そしてフィオナが長を務め、女性だけで構成される一角聖馬騎士団の五つである。
騎士団は基本1000人前後で構成され、個々人の戦闘能力もさることながら、高い士気と騎馬の機動力を持ち、戦闘向けの魔法に習熟、一糸乱れぬ戦陣を構成する結束力を併せ持つ彼らは国民の憧れであると共に、王国が誇る最精鋭部隊でもある。
騎士団の所属人員は貴族と平民で概ね半々であり、聖竜騎士団には各団長の意向もあって貴族の構成割合が高く、聖馬騎士団はその逆である。
一角聖馬騎士団は継承権を持たない貴族の娘が多い。
平民の娘で剣や魔法を学べる者達は親が冒険者などでないと難しいからだ。
騎士以外の兵団は第一から第四まで4つあり、それぞれ2万程の兵士で構成されており、東西南北の各地にある拠点に駐在している。
王都の戦力は警備兵などを除けば、全て騎士団で構成されている。
一角聖馬騎士団のみ構成員数300人と数が少なく、女性だけで構成されているが、決してお飾りやお仕着せではない。
一般的な平均で、男性に比べてATK(物理攻撃力)やHP(生命力)では劣るものの、MAT(魔法攻撃力)とMP(魔力量)で女性は勝り、戦闘向けの魔術スキルさえ所持していれば男性と変わらない戦果をこの世界の女性は挙げる事ができる。
とは言え、戦場は男のものという思想は王国内で根強く、しばしば極限状況に置かれた兵士達(敵味方問わず)の下卑た欲望の対象となるという事情もあり、成り手が少ないというのも紛れもない事実であった。
この女性騎士団が生まれた歴史は300年前に遡り、その時に起きた「魔侵戦争」で活躍した聖女アリス・アルデンティオの偉業に倣わんとする女性たちの声に、当時の王が答える形で創設された。