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絶賛絶叫中!

真っ直ぐ、どんな物にも臆することなくただひたすら真っ直ぐに突き進むファイさん。

進む先に見ているものはただひとつ。ファイさんの前に立ちふさがっているレイさんだけだ。


「私が道をあける、リリアは…いつも通りでいい」

「はいっ!」


その小さな会話を最後に、レイさんだけを見据えていた私達の視線は一気に何人かの(しろ)チームの人達によって途切れた。

右と左の両方から数人ずつ、どちらかと言うと右側を走っているファイさんの方に向かっていく人の数の方が少し多い気もする。


各々いろんな武器を手に私とファイさんの2人に向かってきた……のはほんの一瞬だけだったようだ。

気づけばファイさんの方に向かっていった人がら順に綺麗にぶっ飛んでいってしまった。


「やはり、私には戦闘(こちら)の方が性に合ってる……なっ!」


勿論、ぶっ飛ばしたのはこの方ですが……

ぶんっ!と勢いよく振られた剣が私達の前に立ちふさがった人達の最後の1人に向けて振り下ろされた。胸についているコサージュをちゃっかり壊しながら。


相変わらず、見ているこっちが呆気にとられるような圧倒的な戦いだ。

無駄な動きなんて一切ない、流れるような剣。まるで、鋭い風が吹き抜けて鎌鼬(かまいたち)ができたたかのようだ。


なんて思ってるとファイさんが(しろ)チームの人達をぶっ飛ばしたお陰でレイさんまでの塞がれていた道のりが切り開かれた。


「今は…敵……!」


目の前にいるのは確かにレイさん、でも今は…今だけは戦わなきゃいけない。

思い出せ、私。

あの感覚を…周りの全てを敵として切り抜けていたあの頃を……

……あれぇ?ちょっと変質者(あいつら)の事を思い出しただけなのに。なんだか物凄くイラついてきた!

どうしよう!今なら私、男性と言うだけで見境なく誰でも蹴れる気がしてきた!最悪のリミッター解除法だよ!コンチクショウ!!


「ああ!もう!!」

「――!?」


グッと力を溜めるのとほぼ同時に、私は力強く地面を蹴りレイさんの脚に目掛けて蹴りを繰り出す。

そう、とにかく今はそんな事どうでもいい!

目の前のレイさんを倒してアルトさんの所に行かない限りは何も始まらないんだっての!


「せいっ!」

「――っ!」


しかし、私の蹴りは何度もレイさんにかわされたり、あしらわれたりして一向に当たらない。

……レイさんのコサージュには、やっぱり私の蹴りは(ちょっと)届かない。


「で…もっ!」

「リリア!」


私とレイさんの蹴り合いの最中(さなか)後ろにいた残りの(しろ)チームの人達をリタイアにしてやってきたファイさんに名前を呼ばれた。


「ファイさ……へっ?」

「突破する」


ファイさんの手によって何故かいきなり抱え上げられたと認識したときにはもう、ファイさんは私を持ち上げたまま一気に走り出した。

目の前のレイさんをガン無視しながら。


「えぇえええええええええ!?」


なんで!?

どうして私達は目の前のレイさんスルーしながら(しろ)の塔に向けて走っているんですか!しかもまた私は抱え上げられた状況で!懐かしいなこの感じぃい!!


「ファイさん!どう言うつもりですか!」

「無視だ」

「はっ?」

「レィ…文官と私達じゃ相性が悪すぎる。時間も無い今、一番いい策は文官達を倒さずに突破する事だ」

「だ…だったら始めにちゃんと告げておいてくださいぃいいいいいい!!」


誰ですかいつも通りでいいって言ったのは!私のいつもにこのような行動パターンはインプットされておりませんが!?


ひぃい!なんて事言ってる内に後ろからわらわらと騎士団の人達が追ってきた!しかもヤバいくらいの剣幕で!

何!?何があってそんな顔付きに!


「逃がすなぁあ!あの長官を逃したらもう地獄しかないぞ!」

「今向かわなかったら料理で死ぬぞ!」

「「「死んでも止めろぉおお!!」」」


あぁあああああ!?

騎士団の志気を上げるためにとファイさんがやった事が、ここに来て全て仇になって返ってきた!

ヤメテ!そんなおっかない顔して追っかけて来ないで!……後ろににファイさんの料理が思い出されてるっ!?

既にみなさんトラウマ有りですか!


「どうするんですか、このままじゃアルトさん達の所に着いた瞬間終わりですよ!」

「まぁ、待て。今策を考えてる」

「今ぁあ!?」


そんな呑気な!ヤバいですって!

あの顔はヤバい!大量の男性に追われて……!!

その瞬間、私の視界にある物が入った事で私の体と言葉は無意識に動き出す。


「ファイさん!あそこに下ろしてください!」

「…?――あぁ、いいだろう!」


ファイさんもそれに気付いたのか、そう返事するとグイッと向きを変え。私の示した場所に向けて勢いよく……


「な、投げてくださいとは言ってなぁああああい!!」

「行くぞ!リリア!」

「――っ!もう!!」


どうにか上手いこと着地すると私はその場にあった縄を手にとった。

それは、アードさんと私が仕掛けたトラップの残り。どうやら自分で引っ張るタイプの物だったようだ。


「何が起きるかは…ちょっと分からないけど!」


覚悟を決めて力強く引っ張る。

するとその引っ張った縄はピンッと勢いよく張られ、その力は長いこの橋を横切るようにセットされた別の縄に繋がった。

タイミングよく(しろ)チームがその縄を通り過ぎようとしたその瞬間に。

急に地面にピンッと張られた縄は(しろ)チームの人達の足に引っかかり最前列を走っていた人達の何人かがおもいっきり地面に倒れた。


「あの草結びと似たようなトラップか……!」


でも、これじゃあまだ駄目だ。最前列の人達はどうにかなったけどまだ(しろ)チームの人達は何人か残ってる。

そう思っていた私の横からファイさんが急に声を掛けた。


「リリア、こっちにも似たような物があったぞ」

「本当ですか!ファイさん、直ぐに引っ張ってください!」

「勿論だ!」


私と同じようにファイさんも側にあった縄を引っ張った。

これで上手くいけば他の人達も引っかかる、それなら多分やり過ごせるはず――!


しかし、待てど暮らせどファイさんの引っ張った縄は何も起きず、どこかの縄が張られた様子もない。


「……ハズレか?」

「いや、さすがにアードさんでもそれは……」


いや、有り得る!あの人なら遊び心だの何だの言ってハズレの縄の一本位作っていてもおかしくない!


「とにかく、逃げるぞリリア!」

「はぃっ……!?」


ゴゴゴゴゴ……


私が返事をしようとしたその時、私やファイさん、果ては(しろ)チームの人達がいる所よりも後ろの方から怪しい地響きが聞こえてきた。


そして、ドオォオオオオン!!と言う大きな音と同時に私達の視界には有り得ない、しかし何処かで見たことがあるような物が現れた。


「ま、まさか……」


そう、あれは…探検系の物語によく登場する巨大な丸い岩の塊。

しかも、突然それが私達の方向目掛けて物凄い速さで転がってきた!


「いゃああああああああああ!」


その橋にいた人間、全員が一斉に走り出す。ある1人の人を除いてほぼ全員が真っ青な顔になりながら。

マジか、マジですかあの人!いや、だからってこんなの思い付いても実際に現実でやる人間なんていないはずですよね!

こんな…こんな……


「んなベタなぁああああああああああ!!!?」


こんな展開は今要らないんだよ!何処のトレジャーハンターだ私達は!!

てか、私が見てない内にいつの間にこんな大掛かりな仕掛け作ったんだよ!本当素晴らしい技術ですね!惚れ惚れするほどあなたを殴り倒したい気分ですよアードさん!


「と言ううか、あれは命に関わると思うんですけど!!」

「いや、よく見ろリリア。あれは本物の岩じゃない。軽い素材で作られた偽物だ。ふむ…なかなかいい腕だな」

「感心してる場合ですかファイさん!どっちにしろ潰されたらアウトですよ!」


逃げる、逃げる、必死で逃げる。死ぬ気で逃げる。とにかく逃げっ――!


「ぎゃああああああ!!」

「ひぃい!?」


後ろの方から野太い悲鳴が聞こえてきた。恐らく私達より後ろを走っていた(しろ)の人達だろう。

どうやら私達の作戦自体は上手く行ったようだ、ようだけど……


「ぎゃああああああ!?」

「あぁあぁああああ!!」

「嫌だあぁあああああああ!!」


怖い!怖い!怖い!怖い!被害者が続出してる!

そして私の中の良心がめちゃくちゃ痛い!ごめんなさい!本当ごめんなさい!こうなるとは思って無かったんです!!


「――!リリア、あと少しで(しろ)の塔だ」

「っ!ファ、ファイさん後ろ……!」


私達は必死に走りながらもどうにか後ろを確認した。

そこには(しろ)チームの人達もいなければ長い橋の先も見えない。


ただ、目の前にまで迫り来る岩の塊だけが視界いっぱいに広がっている。


「は、走るぞリリア!」

「既に走ってますよ!?」

「とにかく走るんだ!」


そんな中、私達の前には(しろ)の塔への入り口が見えた。

もう、あと少し……


「間に合えぇえええええええ!!」


死亡フラグだと誰かに言われても、とにかくそう叫んでいた。




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