緊急事態?
おかしいなぁ、何でだろうなぁ?私はほんの数分前まで闇の塔の1階でファイさんやネリさんと一緒に今の戦況なんかを聞いてたりしてた筈なのに……なのに…なぜ、何故こうなった!!!?
「よーし、光の塔潜入&暗殺作戦始めるか」
「にゃは、まぁせいぜい頑張れよお主等」
私とファイさんの2人でアルトさんの暗殺作戦だなんて(ネリさんは見学と言う名の高みの見物。)……この状況、絶対的に何かがおかしい。
本当にどうしてこうなった。
数分前……
「ヤバいな……」
おそらくこれが、あんな事になった全ての始まりの一言だったんだと思う。
それまでのファイさんの説明で、今の戦況は私達のトラップが上手くいった事もあってどうやら闇チームが優勢に事を運んでいたらしいのだけど。
しばらくしてやってきた伝令係の人の話しを耳打ちで聞いたファイさんは不意にそんな事を呟いたのだった。
「どうかしたんですか、ファイさん?」
「どうやら、こちらの考えが読まれていたらしい」
「あぁ、向こうにはレイがいるからの」
レイさん?
するとファイさんは私達が囲んでいるこの“蒼穹の塔”の模型が置かれているテーブルにに目をやった。
黒い塔が私達、白い塔がアルトさん達。塔は5階立てで、1階、3階、5階と全部で3つの橋がかかっている。
そして、いろんな階に白や黒色の凸型の模型が置かれていて、ファイさん達が色々な作戦を考えていたらしいのだけど……
ファイさんは唐突に、塔のを持ち上げるガラガラ――!と置かれていた模型を全て地面に落とした。
「ふぅ……」
「いやいや!ふぅ…じゃないですよ!なにやってるんですかファイさん!?」
「ん?全部の作戦が無駄になったからな、もうこれは必要ない」
だからって、だからって普通落としますか?もっと他にやる方法が無かったんじゃないんですか?てか、ありましたよね、確実に。
「まぁ、気持ちだ気持ち。ここまで読まれ尽くしてたとなると、少し自分が忌まわしくてな」
「一体、なにがあったんですか?」
ファイさんの話しによると、光の塔に送り込んでいたこっちの隊が光チームの隊に挟まれてしまい大変らしい。
それに残りの隊の人達もそれをどうにかするために出てしまっていると言うことだ 。
「で、残っとるのは?」
「私の隊が少しと伝令、それとここにいる私達だけだ」
「……なんでそんな少数に?」
「向こうの塔攻めるのに投入し過ぎたかなぁ?」
「かなぁ…じゃないわ、かなぁじゃ。お主少しは戦術と言う物を考えろ、戦闘しか頭に無いのか」
完璧長官さんにも、どうやら苦手な事があったようです。
料理に関しては苦手とかそう言う次元を越えているとして。
「だって、戦術はいつもレイとネリにたよってたし……」
「儂は今回手伝わんからな。見学を突き通すんじゃ」
「えー……」
……何だろう?ファイさんが異様に可愛らしい。いや、本当に可愛く見える。
ファイさんがこう見えるのは大体レイさんかネリさんが一緒にいる時だけだけど、こういうファイさんは見ていてなんだか微笑ましい。
「仕方ない、私達…もとい私とリリアとで逝くか」
「どちらに!?」
「おぉっと、間違えた。逝くではなく行くだったな」
「とんだ言い間違いの仕方ですね!行きませんよ!断じて私は行きませんからね!ついでに逝きもしませんから!」
もう今の話の流れからして、ついて行ったらとんでもない事に巻き込まれそうな香りがぷんぷんしますもん!
誰がそんな明らかに怪しい場所に好んで行くって言ううんですか!
心霊的な意味合いで怪しい場所に好んで行きたがる人はついさっき最前線へと駆り出されていきましたよ!なんなら連れ戻してきたらどうですか!
私は断じて行きません!!
「いや、行くのは最上階だ」
「はっ?」
また…最上階に……?
※
そんな半信半疑で一応付いて来たものの……
「聞いてない、聞いてない、聞いてない!暗殺作戦って何ですかファイさん!!」
「言葉のままの意味だ、今から相手チームの指揮官…即ちアルトを暗殺しにいく」
「なんで暗殺何ですか!?」
出来れば私はそんな恐っろしい事には巻き込まれたくはないんですけど……しかもそのターゲットがアルトさんともなれば色んな意味でお断り致したいのですが。
「それしかもう、残っとらんからじゃろ」
「へ?」
「ファイがバカやっ……ミスをしたせいで闇チームは挟み撃ちにあいルールである5分の4がやられるのも時間の問題じゃ。となればお主等に残された道はひとつ、相手の指揮官を倒して勝つしかない」
「……」
そんな事態になってたからですか。なるほど分かりました、確かに今の状況では残った私達だけでもアルトさんを倒してこの演習に勝つしかない。それは分かりました、とてもよぉく分かりましたが……
「だったらなんで暗殺作戦なんて物騒な言い方したんですか」
「ん?最初に言っただろう、正々堂々殺る気でやれって」
「そんな危ない言い方はしてませんでしたよね!」
言い方1つでここまで恐ろしく感じられるとは私も思いませんでしたよ!
普通に侵入作戦とだけ言ってくれたのなら私もこんなに戸惑ったり嫌がったりしなかったですよ。だけどね、そこに暗殺の一言が入った瞬間拒否反応がで――
「よぉし、突入ー」
「人の話しは最後まで聞くためにあるんですよね!」
「いいからさっさと行くぞ、あまり時間も無いんじゃ」
あぁ…この人達と一緒にいる事がなにより私の体力を削っていっている気がする……
既にぐったりですよ、とんだ消耗戦だよ。
「とにかく、この闇の塔の最上階から橋を渡って光の塔の最上階にいるアルトの所まで行かなきゃな」
「そんなに上手く行くんですか?」
そう言いながらも私達は光の塔へ向かう橋を渡り始めた。アードさんと私が仕掛けたトラップやその残骸が幾つか残ってはいたものの、とりあえず今のところは問題なく進めてはいる。
でも、この先何が起こるか……
「大丈夫だ、まさか相手も指揮官である私がわざわざアルトと戦いたいが為に突っ込むだなんて思わないさ」
「もう完全に趣旨が変わってますよね?サラッと本音を言いましたね?」
「まぁ、ファイには戦術より戦闘の方が向いとるかっ――…あー……」
「ネリさん?どうしたんですか?」
ネリさんは私達が進んでいる通路の向こうの方をじっと見るとなぜか耳を傾け始めた。
そして、しばらくするとゆっくりとファイさんの方を見ながら告げる。
「ファイ、どうやら儂等は少し侮っとったのかもしれん」
「あぁ、私もたった今気が付いた」
「?」
ファイさんも何かに納得したかのように首を縦に振ったかと思うと、ネリさんとファイさんはガシッとそれぞれ私の腕を片方ずつ掴むとただ一言。
「「走るぞ!」」
「はっ?……いぃいいいいいいいいいいいいい!!!?」
その一言と同時に全員で全力疾走で走り出したかと思ったら向かっていく光の塔の方から1人2人、3人4人と数十人の騎士団の人達がわらわらと出てきた。
そして、私達が向かうその先の真ん中に立っていたのは、真っ白な服に身を包んだレイさんだった……。
「長官、やっぱりこう来ましたか」
「レイ、君には随分と驚かされてばかりだ」
「にゃあ、戦闘じゃ!!」
誰か…誰かこの状況の説明をしてくれぇええええええ!




