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とある青年の葛藤

とは言ったものの……


「騎士団…お、及び?あぁ、騎士団及び上級騎士団か……」


あれから数時間位経っただろうか。リリアが隣りで騎士団の資料をたどたどしくも一生懸命読んで確認しながら判を押していっている。

まだこの世界の文字を速くは読めないからか一枚一枚ゆっくりと慎重に確認してくれているのはとても有り難いのだが、その資料は俺が終わらせたのち全て確認し終えている。本来ならリリアはこんなに時間をかけて確認せずとも判子を押せば直ぐにでも終わるのだ。

なぜかそれを言わない俺がいなければ。


(いや、やはりリリアのためにもしっかり言った方がいいはずだ)


ひたすら騎士団の資料を凝視して夢中に取り組んでいるリリアをもう一度見ると一瞬迷った自分がいたが覚悟を決めゆっくりと切り出した。


「リリアその資料なんだが……」

「この資料がどうかしましたか?」


一度資料の文字から視線を離なすとそのままこちらを見たリリアはそう聞いた。

だから後は「その資料の確認は既にさっき終わらせたんだ、だから判子さえ押してくれればいいよ」…と、普通に言えばいいんだ。

そう、普通に言えば…いいはずなのに……


「か、かなり量があるがルウやフレアの事も大丈夫かと思って」


……なぜ言えない。訳が分からない。


「大丈夫ですよ、フレアさんにはミキがルウちゃんにはテナさんとサリアさんがついてます。それに看病の方法は全部説明しましたから」

「そう……」

「えぇ、何よりこの家の事はテナさん達の方が分かってますし。私は…この家の事を全然知らないので」


ここの事を…全然知らない?

なぜリリアがそんな事を?とそう思ったその時、不意に俺の頭の中にエルと父の言葉が浮かんだ。


『仕方ないんじゃない知らない世界で他人の家に暮らしてるんだから』


『リリアさんの両親は一体どうなっているんだい?』


そうだ、俺はこんな事でぐるぐると考えている場合ではないんだ。リリアに聞かなきゃいけない事が…話してほしい事があるのだった。


「とにかく安心してください、ちゃんと予防の方法から空調の仕方まで完璧に伝えておきました。それに私はずっとここにいても決して病気は移らない自信がありますよ!」

「……リリアは病気になった事が無いんだっけ?」

「はい。とは言っても私が覚えている時からはですけど」


リリアは机の上の書類に承認と掘られた判子をしっかりと力強く押した。そして一山終えた書類をひとつにまとめながら言う。


「さすがに凄く小さい頃は病気になってたかどうかなんて覚えてませんから」

「……聞いた事はなかったのか?両親…とかには」


ピクッと、リリアの手がその言葉を聞いた瞬間小さく反応した気がした。そして一度手を止めるとびっくりしたような表情でこちらを見る。

リリアは一体なんと言うだろうかと少し不安になりながらも俺は静かにリリアの言葉を待った。

しかしそれはもの凄く意外な物だった。


「えっ、まさかアルトさん。そんな事を昨日からずっとぐるぐる考えてたんですか?」


……そんな事?

俺がそう思っているといつの間にかリリアの表情はびっくりしたものから呆れた表情に変わっていた。


「アルトさんの様子が昨日からなんとなくおかしいとは思っていましたが……」

「ちょ、ちょっと待て!話してくれるの……?」


リリアが俺が昨日から何か考えていた事に気づいていたのも驚いているが、なにより俺のその質問に対してリリアの答えはけしていいものではないと分かっていた、だからこそずっと聞けなかったのだから。なのに、そんなにあっさりと……


「聞いたのはアルトさんじゃないですか。別に聞きたくないのなら言いませんが……」

「そうじゃなくて、リリアは話して大丈夫なのか?」

「……確かに話して楽しい物ではありません。でも、アルトさんが話してほしいと言ったのならそれぐらい話しますよ」


あぁ、そうか。リリアはこうなんだ。


『リリアちゃんが話さないからって聞かなきゃいけない事はあるはすまよ』


母の言葉を聞いた後俺はそうだと思った。いや、それよりも前からリリアに聞かなくてはいけないと考えていたんだ。聞く勇気がなかったのか、怖かったのか……きっと後者だろう。リリアがその答えを、聞いた俺を拒んでしまうかもしれない事が……

けど、そんな事心配する必要はなかったんだ。リリアはちゃんと向き合ってくれているのだから。


「それに、もうずーっと前の事ですよ。きっと大丈夫です!」

「きっとって……」

「誰にも話した事がないのでどうなるかなんて私自身も分かりません」

「それでいいのか?」

「いいんですよ」


そう言ってリリアは笑って見せると椅子をこちらに向けて座り直した。


「アルトさん…私は何を話しましょうか?」

「リリアの…前の世界での両親や周りの事を聞きたい。聞かなきゃいけないと思ってる」


するとリリアは少し考え込んだ後「わかりました」と言った。


「私の両親、お父さんの名前は『晴上はるうえ たくみ』お母さんの名前は『晴上はるうえ 百合菜ゆりな』と言います」




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