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欠けていた存在。

「なんかスッゴい面白い声が聞こえたのはここ――ぐはっ!」

「そもそもお前があんな無駄話をしなければ起きなかったのだと自覚しろ!」


救・世・主!!

暴走しまくるテナさんと謎の男性の前にヒーローのごとく現れたアルトさん!……と、エルさん。

入って来ると同時にエルさんに見事な手刀が入ったけれどもまぁそれは見なかった事にしておいて。この状況をどうにか出来る救世主が現れました!


「あのおちびちゃんが隠し子ではなくアルトのならばそれは私の孫ではないのか?えっ、違う?アルトのはアルトのでも娘ではなくもっと近い関係?……あぁ!なるほどやっと分かった!つまりは嫁……」

「わぁああああぁあああああ!?」


アルトさん!?

いきなりどうしたんですか!?確かにすっごくぶっ飛んだ話しをしてますが大丈夫ですよ!完全に勘違いですから!私がアルトさんの娘になるはずないですよ!(主に顔とか身長とか身長とか……)

そう言えばこの人何か言いかけてたような……『よ』何とかって。何だったんでしょうか?


「おぉ、アルト!いたのか!む?君の親友が隣りで苦しんでいるぞいいのか?まぁお前が気にしていないのなら別にいいのだが。

いやいや、そんな事はどうでもいい!いやぁ、まさか私がいない間にお前にそんな事が起きていたなんてな。そう言えば挨拶も何もしていなかったんだった。あのおちびちゃんにはしっかりと挨拶を……おや?おかしいなさっきまでそこのソファーの後ろにいたんだが、おーい?おちびちゃーん?おぉ!そんな所にいたのか!しかしいつの間にそんな柱時計の中に隠れてたんだい?はっ!もしやかくれんぼ中か!ならばかってに話してしまって申し訳ない。大丈夫だそこならきっと見つからないだろう。まさかそんな狭い所に人がいるだなんて思わないよ。小さい君ならではの――」

「「あっ……」」

「ち、ちっさい言うなぁあああああああ!」


こっちだって好きでこんな所に潜り込んでるんじゃないんですよ!あなたが怖いからこんな事になってるんです!もう半泣きなんだよ!そしてさっきからさりげなく私をおちび呼ばわりしないでぇえええ!


「あらあら、言っちゃったわねNGワード」

「ふーん、この面白い事の原因はあの人だったんだ」


私の前で慌てふためく謎の男性。

ゆるりティータイム中のテナさん。

半ば放心状態のアルトさん。

ひたすらからかうだけのエルさん。


そんな状況に終止符を打ったのは……


「お父さんが帰って来てる!」


突如扉から現れて謎の男性を指差したルウちゃんだった。

……て言ううか、えっ?お父さん?




     ※




「ルーバス・フローリア。フローリア家現当主にして、俺とルウの父親だよ」

「よろしく、黒いお嬢さん」

「は…ぃ。よ、よろしくお願いします……」


怖くない怖くない怖くない怖くない。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


「……大丈夫なのか?」

「んー、多分あの人ってリリアちゃんの一番苦手なタイプの人なんだろーね」


ま、まさかこの人がアルトさんとルウちゃんのお父さんだったなんて!そうですよ、よくよく思い返して見ればこの人が来た時は『帰って来た』とか言ってた。テナさんだってこの人の事を『あなた』って読んでたし……


「敵意むき出しならまだしも、あの人は完全に誠実な態度であぁな訳だからね。天然ほど怖い物は無いわけだ」

「……なんでお前は凄く楽しそうなんだ」

「いやぁ、お前とリリアちゃんの反応が予想以上に面白く――危なっ!?」


……アルトさん?エルさん?何やってるんですか?なんでエルさんの直ぐ近くの壁にケーキ用ナイフが刺さってるんですか。それさっきまでティーセットの中にあった奴ですよね?いくら切れ味のいいナイフだからって壁は切れませんよ?


「お父さん、黒いお嬢さんじゃないよ。リリアお姉ちゃんはリリアお姉ちゃんですよ」

「ほう、そうか。リリアさんか……ってお姉ちゃん!?」

「義理だ」


アルトさんがすかさずおかしいな勘違いが起きるのを阻止してくれました。ありがとうございます。本当にありがとうございます。このままだったら私確実に隠し子認定されてました。


「義理?」

「リリアは訳あって今はフローリア家で預かっている」


それを聞くとルーバスさんはぱぁあと笑顔になったかと思うとスッキリしたのかにこにこと笑いだしました。


「ハッハハ、なぁあんだ、そう言うことなら始めから言ってくれればよかった物を。うんうん、つまりは養子のようなものだろ?」

「えっ……はぁ…多分そう?…です」


なぜ私に聞くんでしょうか。

て言ううか、なぜいきなり立ち上がるんですか?近いですよ?怖いですよ?


「詳しい事情はまだ知らないが、しかしこれから一緒に暮らすんだ。ならば家族も同然!いや、一緒にいて双方が家族と思っていればそれは誰がどう言うと家族だ!」

「えっと……?」

「これからよろしくね、リリアさん!」

「ひゃあ!」


わしゃわしゃと言うような表現がぴったりな程の豪快な動きでルーバスさんは私の頭を力強く撫でた。アルトさんのような華奢なようで優しい手とは違い、大きくて厚く固い手は私にとって初めての感覚だった。


そうだ……この人は、私が初めて知る父親と言う存在なんだ。




     ※




「お父さんと遊びたかった」


そう言ってほっぺを膨らましているルウちゃんの姿は可愛いような微笑ましいような光景だ。


「忙しいって言ってたし、私じゃ変わりになれないかもしれないけど一緒に遊ぶからね、ルウちゃん」

「リリアお姉ちゃんが遊んでくれるの!」

「うん、何をして遊びたい?」

「かくれんぼ!」

「そうだ!確かこの間ミキが積み木を持ってきてくれてたはずだっけ。私の部屋にあるから取りに行こうかな」


ごめんねルウちゃん。本当もうかくれんぼは却下で。


「積み木…積み木もいーなぁー」


そして私は一度だけアルトさん達が残った部屋の扉を見つめるとルウちゃんの手を引いて歩き出した。

その部屋の中での会話の内容を私はなんとなく分かっていた。




     ※




「どうやら君も関わっているようだし君にも話してもらうよエルルク君?」

「俺が答えられる所までならば」

「それじゃあ、アルト。そろそろ話してくれ、彼女の…リリアさんの事を……」

「はい」


そして、俺はまた嘘をつく。




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