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とある青年の驚愕

アルト視点再び。

「団長、終わりましたか……あー…」

「ん?終わったが?」

「お姉さん!?」


治療は終わったが、リリアはいまだに敷かれた毛布の上でうつぶせのままずっと黙っている。いや、黙っているように聞こえるがずっと「……プライドがぁ…激痛がぁ……」と呟いているようだ。


「いつも思いますが凄いですね、その塗り薬」

「あぁ、特効薬だ」

「いえ、効果じゃなくて痛みが……」


確かにこの塗り薬はよく効くが、それと同時に激しい痛みが伴う。まぁ、よく効いている証拠だな、その痛みで反省と言ううかもう怪我をしないようにしてくれるといいんだけど。


「リリアさん、立てますか?」

「無…理……」


リリアはうつぶせのまま動かないのではなく、動けないらしい。なんとか腕だけを上げて返事をしている。


「大丈夫かリリア?」

「アルトさん!誰のせいで…ひぐっ!!」


突然ガバッと上半身だけでも起き上がったリリアは起き上がった瞬間、その衝撃で背中に痛みが走り短い悲鳴を上げて固まったように動かなくなった。そしてしばらくするとゆっくりとうつぶせの体勢に戻り小刻みに震え出してしまった。


「……すいません私のせいです」

「うん、分かってくれたならいいけど」


本当にリリアが毎回怪我をするのは止めてほしい。その治療をするたび凄く心配で怖くなるけど、なによりなぜだか分からないがイライラする。


「あの…コレ、ちょっと動いただけですっごい激痛が走るんですけど」

「あぁ、そういう薬だからね。でも効き目は凄いから、多分明日には治ると思うけど」

「明日!?」


しかし、本当にちょっと動いただけで激痛が来るのなら少し薬が強く効きすぎているのか?意外とリリアの痣は大きな怪我だったようだ。


「団長、俺はそろそろ騎士団に戻りますけど報告もしなくちゃいけないですし」

「分かった」

「あの…わ、私はどうしたら……」


そう言ったのは痛みでもがいているリリアのそばにいたシノだった。

窓の外を見るとだいぶ日が沈んだきていた、もう直ぐ夕方頃になるくらいだろう。多分この子もそろそろ家に帰らなければいけないだろうし、このまま家に帰してあげるのがいいんだろうけど。


「君には会ってほしい人がいるからな……」


彼女にはネリに会ってもらって彼女の角の事を聞いた上でなぜ彼女があの協会の奴らに狙われたのかを考える必要もある。


「できればまた会いたいんだが」

「なら団長。俺がこの子を送って行くついでに家の場所を覚えておきますよ。シノちゃんはそれでいいですか?」


アードが最後に彼女に問いかけると彼女は何も言わずに静かに頭を縦に振った。

とりあえず、これでこれからの事が少しは進みそうだ。


「あれ?シノちゃん帰るの?」


痛みで周りの事をあまり聞いていなかったらしいリリアが、隣りにいる彼女の方にゆっくり顔を向けてそう聞いた……目が半分虚ろなんだが。


「はい。お姉さん、またお礼に行きますね」

「ううん、いいよ」

「ですけど……」

「私は自分が思うように行動しただけ」


すると、リリアは動く腕を上げて彼女の2つに結ばれた白い髪に触れるとそのままその髪を撫で始めた。


「でも、自分が思っただけで付けたこのりぼんをシノちゃんがずっと付けてくれてる事、それだけで私はすっごく嬉しいよ」

「は、はぃい……」


髪を撫でられた彼女は頬を真っ赤に染めて少し恥ずかしそうな目でじっとリリアを見つめていた。


そんな2人を無言で見ていた俺とアード。


「完全に2人の世界に入り込んでますね」

「……」

「団長、あれって天然ですか?」

「だろうな……」


で、いつまで続くんだアレは……




     ※




アードとシノを見送るため廃墟の壊れた正門の前まで来た。あの毛布の上から全く動けないリリアは「すいません、私はここにいますので……」と震えた声で言っていた。


「じゃあ団長、騎士団と副団長への報告は任せておいてください!」

「……離してやれよ、その手」


アードに手を無理矢理繋がれて、半泣きでいやいやと抵抗しているシノ。さっきのリリアとは全く違いすぎる反応だ。

そして、仕方ないと思ったのかアードはしぶしぶ彼女の手を離してやった。すると離した瞬間ダッシュで正門の陰まで逃げていった。


「……まぁ、よろしくな」

「はい!団体も気にせずリリアさんとデート楽しんでくださいね!」


……?…――!?――ーー!?!!


「ち、違う!!」

「うわっ!?えっ?違うんですか?」


とにかく違う!俺とリリアはそう言う事じゃない!


「いや、団長。とりあえず落ち着いてください」

「……いたって平常だ」

「へぇー……」


アードの言うとおり一旦落ち着いてみた。確かに俺が1人で焦るような事じゃない。

そうだ、俺はただ否定しただけだ。デ…デートと言うのは好意を持つ男女が出かけて楽しい1日を過ごす事だと聞いた事があるような…無いような……いや、まて。よくよく考えてみたら俺……



そう言う事…よく知らない。


「……アードはなぜそう思ったんだ?」

「なぜって、団長達を見て直ぐそう思いましたけど?」

「はっ?」

「だって団長、リリアさんといる時いつもと全然違う表情なんですもん」


表情がいつもと違う?

……俺は一体リリアの前でどんな風になっているんだ?


「団長ー……聞いてませんね。まぁいいか、じゃあかえりますかシノちゃん!」

「……その手は引っ込めてください」

「えー……」



数分経って。気づいたらアードとシノはいつの間にかもう帰ってしまっていた。

仕方ないので俺もぐるぐると考えるのを止めて廃墟の大きな扉のドアノブに手をかけた時、ふと思った。


開けづらい。


この扉を開けたらあの部屋があるわけだから……


入りづらい。


さっきあんな誤解をされて、まさかあんな事を言われて、そんな状態でリリアになんて……


会いづらい。



いやいや、そんな事でまたぐるぐると悩んでいる場合じゃない!リリアは今動けないのにいつまでも待たせるわけには行かないからな!

しかし扉からは、やはりなんだか入りづらいので裏から入れる所を見つけてゆっくりと廃墟の中に入って行った。


ガタッ!


「!、ここは物置か?」


沢山の壊れた物があふれているが、進めないほどじゃない、物を避けて進んで行く。そんな風に進んで行き、時々「何やってるんだろ、俺」と思いもしたが。なんとかリリアがいるあの扉の付近までやってきた。

ここまで来ると、本当にこんな風に悩んでいる事が馬鹿らしくなってきた。うん、もうさっさとリリアの所へ行ってしまおう。


そう思い勢いよく進んだ瞬間、暗くてよく見えなかったが足下にあった小さな箱を蹴飛ばしてしまった。

大きな音を立てたかと思ったら直ぐに壊れてしまった、もうだいぶ脆くなっていたようだが……


「いやぁああ!!きゃぁぁあ!ああぁぁ!」

「……リリア?」


突然響いたリリアの悲鳴、それを確かめるため少し先に進むとやはりそこにはリリアがいた。

しかし、さっきとは全く違う様子だった。両手で身を守るように頭を抱え、痛い体を引きずりながら少しでも動こうとしている。肩を小刻みに震わせて大きな悲鳴を上げ続けていた。


「あっ……アルト…さん」


俺がリリアのそばまで行くと気がついた彼女は悲鳴を上げるのを止めて、ゆっくりとこちらを向いた。


「……リリア、こういう所。怖いの?」

「ちがっ!違います。そんな事はないです、大丈夫ですから……」


そうやって否定し続けてはいるけど、リリアの体はさっきからずっと震えたままだ。

怖いのに、我慢して強がって。心配かけないようにって無理して1人で待ってたのか。


「あのねぇ、リリア……」


俺はリリアの隣りに来きてしゃがんで膝をつき、リリアと同じ位の目線まで来ると彼女の体をゆっくりと痛くないように起こして支えた。


「怖いなら、ちゃんと怖いって言えばいいんだよ。」

「でも……」

「なんでリリアは他人に優しく出来て自分に優しく出来ないの?」


シノの遠慮に気づけても、自分は凄く遠慮するんだな。

強がりで遠慮がちで人を頼らないようにする。それも、リリアなのか。


「頼ってくれないかな?」

「っ!……頑張り…ます」


そう言った優しい彼女を一体俺はどんな表情でどう見ているのだろう。


「アルトさん?」


少し気になったが俺を見つめるリリアを見たら、とりあえず自然と笑っていた。



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