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私はこれを治療とは認めない!認めたくない!

廃墟を過ぎ去って街も離れて走って行く2人の影。


「藍…黒いたよ……」

「えぇ、まさかこんな所で見つかるとは……」


そう言うと私は走りながらポケットに入っていた一枚の紙切れを取り出し歯で自分の指を噛み血が出た所でその紙切れに付けた。しばらくすると血が付いた所が紙切れの全体に広がってひとつの陣が浮かんできた。


「藍です。誰かいますか?」

『あぁ~?藍?いるわよ~今はあたしだけだけど』


その紙切れから聞こえる声に少し不満そうな顔をした後小さくため息をついてまた話しかける。


きいですか。出来ればボスが良かったのですが」

『なによ、あたしじゃ不満なのぉ~?』

「……まぁ、いいです。大事な話しがあります」

『大事なぁ?あんた達下っ端の後始末に行ったんじゃなかったの?』


相手もだるそうな態度から真剣な声色になった。私も態度を変えて真剣に話しを進めて行く。


「はい、確かに回収は完了したのですが……」

『何?何かあったの?』


そう言うと後ろに付いてきてる紫が抱えている男達4人に視線を向ける。そしてさっき見たあのフードを思い出した。


「黒が…いました……」

『っ!黒!?なによそれ!』

「分かりません。ですが確かに黒でした、それになぜだか騎士団と共に行動をしているようです」


彼女もかなり驚いているようでとても色んな事を聞きたそうだったが、私に聞いても分からないと判断したのか黙って情報を整理する事に入った。

私も最初にあのフードの姿を見た時は正直かなり驚いた。無理もない、あれは私達にとってかなりイレギュラーな存在だ。

そしてしばらくすると黙っていた黄がまた質問をした。


『あんた、それ連れて来なかったの?』

「まだ力を持っているかいないかも分からなかったので……報告を最優先にと」

『……まぁ、確かにそれが今は一番いい判断ね』


それから黄は呆れたようにため息を軽くついた。


『分かったわ、ボスには私から報告しておく』

「ありがとうございます。あぁ、あともうひとつ」

『なに?』

「ボスにしろは無理かもしれないとお伝えください。努力はしますが一番の候補だったシープはただの子供だそうなので」

『……そう、仕方ないか。うんそれも伝えておくわ』

「はい、お願いします。それでは」


最後にそれだけ告げると私は血で書かれた陣のある紙切れを破き、またポケットにしまった。

私はまた考えをまとめてくと後ろから来ている紫の声がした。


「藍……まだなのは…どれ?」

「まだうまっていない席は、赤と白。ですがおそらく白の席は消えるでしょうね」


私の答えに紫はふーんと言うだけで、それから私達ははまた無言で走り続けた。




     ※




「打ち身、切り傷、擦り傷、刺し傷、打撲、あざこぶ……で他は?」

「……もう、無いです……」


私の腕を掴んでテキパキと治療をしてくれているアルトさん。凄くありがたいんですけどいや、もう本当勘弁してください。

優しく聞いてるつもりなのでしょうけど、目が笑ってないですよアルトさん、さっきの笑顔とは大違いですね。

あぁ、隣りでシノちゃんが脅えてます。そうだよシノちゃん、これが本当の笑ってない笑顔だよ。私なんかの笑顔とは比べ物にもならないでしょ?

それとついでにアルトさん、打ち身と打撲はほとんど同じ意味ですよ?なにげに数を増やさないでください。


「まぁ、怪我は良くないですよ。うちの騎士団では『命を大切に』てよく言われますからね」


私の近くにいたアードさんが言っている……うん、確かにそれは凄く正しい事なんだけど、そんな言われ方するのは小学生か自傷行為をしそうな心の危ない人だけだと思いますよ。

すると、アルトさんの笑顔に脅えてさっきからずっと喋っていなかったシノちゃんが口を開いた。


「お姉さん…本当に色々、ごめんなさい……」

「いや、別にシノちゃんが謝る事じゃないけど……」


私とシノちゃんの視線がまだ治療を続けてくれているアルトさんの方に向く。

色々…色々かぁ……


「リリア、自分が無茶して怪我人だって自覚ある?」


アルトさんはそう言うとその黒い笑顔を近づけて来た。怖いです、近いです、危険です!


「あります!あります!あります!ありますっ!!」

「ふーん……」

「ア、アルトさんだって倒れてたじゃないですか」

「……」


あっ、傷ついてらっしゃる。いや、そんなに気を落とさないでください、大丈夫ですよ聞いた話しではおもいっきり腹部を剣の取っ手の先で殴られたんでしょ?それで倒れない人なんて多分長官くらいですよ。

殆ど人間の急所じゃないですか。


「しかし、それを除けば俺と団長はほぼ無傷ですね」


てか、なんで無傷なの?私とアードさんはおんなじような攻撃をされたのに私は刺し傷、切り傷に打撲ですよ、しかも結構大きな。なのにアードさんは無傷?なんですか、体の作りが既に違うんですか?


そしてやっとアルトさんが掴んでいた私の腕が解放される。心成しか掴んでいた所がジンジンする気がする、なんか掴まれてる時、結構力がぎゅーっと入っていたような……地味に痛いです。


「はい、終わり」

「ありがとうございま……す?」


突然ごろんと私の視界が反転する。私とアルトさんはボロボロの毛布らしき物をさっき見つけたからそれを下に敷いてその上に座ってたけど、今はそれが私の顔の直ぐ近くにある。

えっと、これ。私がさっきあのシスターにやられていた体勢ですよね?そしてアルトさん、なぜ私の背中の辺りにいるんですか?なぜ私をこんな体勢にしたんですか?……what happen!?


「……あ、あのぅ…アルトさん?」

「背中」

「はい?」

「さっき、壁にぶつけた所。痣になってるよね?」


よくご存知で!?

えぇ、そうですとも腕にあった痣より大きな痣が背中にある事に私は勿論気づいてましたよ。だからあえて隠していたのに、なぜ服の上からでわかったんですか!


「えっ、ちょっと待ってください。まさか今からここで治療するなんて言わないですよね?」


私のその質問にアルトさんはまたあの笑顔をにっこりとしてくれました。時間と空気と私の思考が完全に止まり、もう藁をも掴む思いでアルトさんの返答を待つこと数秒……


「言う」

「わぁああああ!アルトさん、アルトさん!今ここでやらなくていいです!」


て言ううかこんな所でやらないで!いや、場所がいいなら大丈夫なのかと言われたら勿論それでも駄目ですけど……だからって今ここでやっていいことじゃないです!反故ほごまたは放置を希望します!もうこの際保留でもいいですからぁああああ!


「大丈夫、ちゃんと薬があるから」

「何ですかその恐ろしいまでの刺激臭を放つ塗り薬は!?」


どっから出したんですか!危険、危険!原材料の全く分からない塗り薬がいままさに私に使われようとしてる!


「暴れない方がいいからね」

「暴れる程の痛み!?……って、ワンピースに手をかけないでくださいぃいいい!」


アルトさんの手から逃げようとするも身体の自由が全くありません、完全に拘束状態ですよ!さっきのシスターより確実にたちが悪いです!


そして、今まさにワンピースに手をかけようとしているアルトさん、ワンピースとアルトさんの手の距離がもう殆ど無い。

説明しましょう!このワンピースは背中にボタンが付いている形なので(本人の羞恥心を除けば)何の問題も無くそのまま背中の治療が出来るのだ!

……問題ありまくり!本人の羞恥心を除くなぁあ!そこ重要!


「さて、シノちゃん。俺達は少し隣りの部屋に行ってましょうか」

「……うん。お姉さん頑張ってね」


こんな時に変な気を利かせないでください!ちょっと待って、この状態のまま放置しないで!確かに放置を希望したけどこういう事じゃないです!

シノちゃん私頑張れない、頑張れない!頑張れないの!頑張れないんですぅううううう!!


「いゃぁあああああああああああああああああ!!!!」




     ※




数十分後……治療完了。


「あれですねアルトさんは普段は真面目な表情を見せておいて突然ドSに切り替わる人なんですね。」

「何を言っているのか分からないけど?」


あぁ、私の心の涙がボロボロの毛布に染み渡っていく気がします。




【what happen】……(訳)何が起こったぁあああああ!?

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