とある青年の出会い
アルトさん視点のお話です。
彼女と出会う数日前の事……
「どういう事だ、これは……」
今、俺の前には何故か修道服が置いてある。なぜだ…
「悪いんけどさ、今回の潜入捜査、アルトがやる事になったんだよ。」
「なぜだ。」
「えっ、お前以外に誰がやるんだよ。」
「そうじゃない!何故修道女なんだ!」
今回の潜入先は教会、だから修道服はある意味間違ってはない。いないが…
「あぁ、ソレしかなかったんだってさ。」
「今回…潜入先の調査員は誰だ。」
「ん?俺だけど?」
「お前か!」
お前……まさかわざとじゃないよな…。
「いやいや、俺も悪いとは思ってるんだぜ、俺がシスターの役しか潜入先を見つけれなかったんだからな。」
「で、なんで俺しかやる人がいないんだ?潜入隊がいるだろ?」
「いやぁだって、お前ほど、やっておもしろ…女装が上手い奴はいないだろ。」
言い直したよな!しかも言い直してなお悪いだろ!
なんで、こいつはいつもこうなんだ?……」
「まぁ、冗談はこれくらいにして…」
「冗談…なのか?」
「いや……冗談じゃ無いが…今回の事は本当にバレたらまずいだろ。」
確かにな……
精霊信仰の過激派が精霊様召還の儀式を計画している。その情報が入ったのが数日前……
あの事件以来、精霊様召還の儀式は大罪となっている……
「大罪とわかっているのに……何故あそこまでしようとするんだろうか。」
「餓えているんだろうな……幸せと言うものに……」
幸せ…か。
今、この国はあまり良い国とはまだ言えない…幸せに餓える者がいる、だから幸せを求める、そしてその幸せのために他の者の幸せを奪う…
「その連鎖を止めなければならないな……」
「だから、まずは『他の者の幸せを奪う者』を止めなきゃいけないんだろ。」
「それもそうだな…。」
「あぁ、…それじゃ、アルト!そのためにはまずこの修道服を着て潜入捜査をしなきゃなっ!」
……はめられた。
「エル、お前は後で殺るからな。」
「なんか字、違ってないか?」
……この顔に生まれて来た事をまた後悔した。
※
そして俺から第一人称を変えて、私は今、教会の潜入捜査の…つまり、精霊様召還の儀式の最中だ。
ここで精霊様召還の儀式をしたなら、こいつらも晴れて大罪者となる。
「まぁ、儀式をしても精霊様は来ないだろうけどな。」
成功した試しがないのだから。…そう言えば昔、鳥が落ち来てそれを精霊様だと言っていた教会があったな…本当にただの鳥だったけど、結局鳥は逃げたけど…。
今回も失敗するのは目に見えている。儀式が終わり次第、ここにいる者を全員、連れて行くだけだ。
『きぇえええええいいいい!』
「ぎゃあああああああああああ!」
ずぼん!
…えっ?
※
一体何が起きたのか、はっきりとは理解出来ないがそれでも言えるのは、『いきなり女の子が落ちてきた』と言う事だけだ。
背中が痛いの必死に悶えている、ここからじゃよく見えないが、年は14…いや12歳位に見える。
だが、そんな事にびっくりしている間にその女の子が精霊様だと言われ囲まれててしまった。
とにかく今は考える時間はないみたいだな。
「そこまでだ!」
さて…お仕置きの時間だ、大罪者共!
※
「アルト!」
「エル!」
教会の者達との闘いを合図にエルが率いる騎士団の戦闘部隊が教会に駆けつけた。
「どういう事だコレは……」
「残念だが、私にもわからない……よっ!」
後ろの敵。
「まさか、本当に精霊様が召還されたのか?」
エルが左の敵をたたく。
「いや、多分違う…召還と言うより、落ちてきたって感じだったからな。」
エルの後ろにいた敵を私がたたく。
「じゃあ…」
「まぁ、あの女の子が人間なのかは、わからないがねっ!」
よし、大体、敵は片ずいたな…。
あとは、あの子の周りにいる敵を……
と振り向いたその時。
『精霊様!私の願いをー!!』
っ!、さっきまであの女の子の周りにいた奴らがいきなり、その子の方に向かった。
「な、なにが!」
「誰か助けてぇええ!」
それを聞いた瞬間、体が自然と動いた。
助ける!まずはそれだけだ!
全速力で走りその勢いで一気に倒す!
「はぁああああ!!」
すると…さっきまでよく見えなかったその子の顔がはっきりと見えた。
その子の髪と瞳は、全てを引き込むような黒。そして、それとは正反対の壊れそうなくらい白い肌が黒い髪の黒さをより際立たせている。
そして怖かったのかその黒い瞳からは小さな雫がついていた。
「あっ…」
「大丈夫?」
「は、はぁい…」
「良かった、ごめんね怖い思いさせて。」
そう言って彼女の黒い髪を撫でる。
恥ずかしいのか、白い肌が少し赤くなった。
「あ、ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
そう言って笑うと彼女も嬉しそうに笑うのだった。
サブタイトルが意外と真面目になってます。