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無力達の力。

二階の穴からロープを使って今まさに私の目の前にいる大きな男性の腕を縛り上げたアードさんは、ロープをしっかり引っ張りながら私達のいる一階に降りてきた。

紫と言われる男性と私の間に着地すると男性の腕に巻きつけたロープの残りを使って腕からさらに巻きつけ、数秒後には男性の全身にロープががっちりと巻きついた。


「ぐるぐる…動けない……」

「しばらく……いや、ずっとそうなっててください。リリアさん大丈夫ですか?」

「えぇ、もう少しで動けると思います」


だいぶ痛みも和らいできた、一度落ち着いてしまえばあまり強い痛みでもない。

アードさんのおかげで助かったし、この男性も動かなくなったけど……ひとつ、気になる事がある。私はそれを確かめるためアードさんにしか聞こえないような小声で質問した。


「(アードさん、シノちゃんはどうしたんですか……?)」


その質問にアードさんは何も言わずに、私以外には見えない角度で小さく指を上に向けてさっきアードさんが降りてきた穴を指差した。

私は倒れたままゆっくりと少したけ視線をそっとその方向にむけた。そこには可愛らしく揺れる2つの白い髪とその赤い目で心配そうに下の様子を窺っているシノちゃんがチラッと見えた。


どうやらこの4人の男達の仲間はこの藍というシスターと紫という仮面の大男の2人だけだったようだ。上には何も起きなかったのでシノちゃんを残してこっちに来てくれたのですか。

それを確認し終えると私は手足に力を込めてゆっくりと立ち上がった。


「アードさん、この人達にあの4人を連れて行かれのは困るそうです」

「分かってます。とりあえず1人はなんとかなっ……」


「紫!引きちぎりなさい!」


そう叫ぶ声が聞こえた途端、あんなにしっかりと男性に巻き付いていたロープがブチブチと引きちぎれていく。誰かが助けたわけじゃない、ロープが巻き付いていた男性がそのまま力だけで引きちぎったんだ。


「ぅぅうううううぅーーーー!!」


もう、男性に巻き付いていたロープは跡形もなく千切れて相手は完全に復活した。そして復活したと思った次にはいきなりあの大きな手を振り上げてこっちに走り出して来た。


「邪…魔……」

「「!?」」


またあの速さで襲って来ると分かった瞬間、私は左にアードさん右へと直ぐに移動して向かって来た男性を回避した。

しかし私達によけられた男性がぶつかったのはあの4人の男達がいる場所だった。その事には先にアードさんが次に私が気が付いた。


「あ…こいつら、回収……でもフードもとらなきゃ……あで?…どっちが先?」


直ぐ近くにいる男達と少し離れた所にいる私。さっきまでは直ぐ近くにいた私のフードをとる事を優先したけど、その状況が変わった今はどちらを優先すべきか分かっていないようだ。

すると今のうちだと思ったアードさんがまだ持っていたロープを取り出すと男性の方へと向かっていった……


「まさかそちらから私の方に来ていただけるとは」

「いゃぁああ!?」


後ろからさっきの声が聞こえたと思ったら、首と腹部にいきなり絡みついた腕が締め付けるように力を入れていく。


「ぁ…はっ……」


絞め殺される程強くはないけど、こんなに細い腕なのに、動けなどころか息をギリギリ出来るか出来ないかというぐらい強い。


「あなたのそのフードとらせていただきますよ」

「藍がフード……じゃあ、俺は…回収……!」


私が取り押さえられたら所を見た大きな男性は直ぐに自分が先にやる事を把握し、向かって来るアードさんを片手で振り払って向こうの壁に叩きつけた。

苦しむアードさんを軽く見たあと男性は男達の方へ行き右手で2人、左手でまた2人を持ち上げた。


「藍……回収…出来た」

「分かりました。少しそこでその男性の相手をしていてください。私はこのフードの正体を確認します」

「……分かった」

「うぅ…いゃ……」


こんな人達に私の正体を見られたら一体何をされるかわからない、少なくとも見られておいて安全な事じゃない。

私は少しでも抵抗しようと地面に付かない足をばたつかせる、けどそんな言は全く意味が無く結局なんの抵抗にもならなかった。


そんな私の些細な抵抗に気づいた女性は私の首を絞めている右腕の手にずっと持っていた短剣を私の首に突きつけた。

それと同時に私の体は小刻みに震えだしてしまった、首を絞められその上剣を突きつけられたこの状況で、私はまたこの女性に対して強い恐怖を持ってしまった。


「そんなに震えて、怖いのですか?やはり騎士団ではなくただの小娘ですかね」


すると、私はその言葉を聞いて思い出した。

この人はさっきまでアルトさんと戦っていたはず、なのにその人が今私の首を絞めて剣を突きつけているということは……!?


「……っ!…アルト…さん……アルトさん!!」


今、私が向いている方からでは後ろにいるアルトさんは見えない、けどさっきからアルトさんの声はずっと聞こえてない。

私はばたつかせていた足を一度止めると、一気に振り上げて私を締め付けている女性の足の真ん中より少しだけ左を目掛けておもいっきりかかとで蹴った。足の真ん中より左、つまりそこは人の足の骨がある場所だ。


「っ!いい加減に…しなさい!」


私の蹴りをくらった女性はほんの少しだけ顔を歪ませると私の体を地面に叩きつけてそのまま私を押し倒した。

しかし押し倒されると向いていた方向変わった。

そして私の視界に倒れているアルトさんが見えてしまった。


「さっさとそのフードを外して……!?」

「……うぅ…ぐっ……!」


押し倒された痛みも私の動きを止めている女性も無視して私は倒れているアルトさんの方へと手を伸ばし、少しでもそっちに進むように這いつくばった。



「嫌…だ……アルトさん……」

「無駄、です!」


私が被っていたフードがローブごと女性の手によって一気に外された。そして私の黒髪と黒い瞳が表れる。

でも私は未だにアルトさんの方に手を伸ばし続けた。


「…――――!?これは……!」


「はぁああああああ!!」

「!?」


急に私にかかっていた重みが無くなり体が自由になったが、私が伸ばした手の先にいたアルトさんもいなくなっていた。

しばらく訳が分からなくなってそのまま伸ばしたままだった手を急に掴まれて立ち上がった。それと同時にまたあの暑さが私の手に伝わっていった。


「アルトさんが…いる……?」

「うん、いるよ。リリアが呼んだんだ」


目の前にいるアルトさんの笑顔を見ると私は溜めていた息をゆっくり吐き全身の力が抜けたようになった。一言で言えば安心した。

するとアルトさんはさっき多分切りかかった方を向いた、私もそっちを向くとさっきまで私の首を絞めたり押し倒したりしていた女性が立ち上がった所だった。


「はぁあ、はぁあ……紫!」

「なに……?」

「撤退です」


女性は直ぐに剣を鞘に収めると割れた窓から飛び出して行った、それに続いて4人の男達を抱えた大きな男性が女性の後に窓から出て行った。


「……終わった?」


静かになった廃墟は蒸し暑い風を通していた。




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