幽霊屋敷で自己紹介?
すいません、ごめんなさい。怖くないなんて嘘です、大嘘です、ホラ話もいいとこです。
ちょっと風で窓がガタガタと音を立てただけでビクビクなるくらい怖いです、それかもうこの状況で急に話しかけられただけでもうアウトなんです。すっごく怖いんです、だから出来れば今すぐここから出てもう少し明るい所に行きたいです…なんて……
「言えない、絶対言えない……」
「どうした?」
「ナンデモナイデスヨ?」
言えるわけないじゃないか!つい数分前に「怖くなんてないんですから」なんて言っちゃったんだよ!見栄張っちゃったんだよ!それを今更実は怖いんですなんて……
「何でもない…のか……」
「団長!ソファーありましたよ!ボロいですけど!」
とりあえず各々、適当に座る事にした。
しかし、何でこの廃墟はこんなに暗くてボロボロなんだろ……怖いじゃないか!(心の声)
「とりあえず、さっき聞いたことで大体何が起きたのかは分かったけど」
「あっ!すいません、さっきの手形の隣りに名前だけでも書きたいのですが……」
「話しを聞け!」
何してるんですか、てかこの人話しを進める気あるんですか?なんでわざわざこんな廃墟に来たと思ってるんですか!私的にはサッサと話しを済ませてここから出たいんです!
そういえば名前で思い出した。
「あなた名前は?」
「えっ?あっ、はい。シノと言います」
「シノちゃん、可愛い名前だね」
シノちゃんか、向こうの世界でもいそうな名前だなぁ……なんて思っているとシノちゃんは次に私の名前を聞いてきた、そう言うばシノちゃんには、私の事もアルトさんの事もまともに紹介もしてなかった。
「私はリリアっていうの、あと騎士団の青い服じゃない人がアルトさんで…えっと……」
「あぁ、俺はクレイアードって言います、騎士団のそこそこな人です」
「……だそうです」
そう言うとシノちゃんは、こくんと一回頷いて私の隣りに座ったままアルトさん達にも一回頭を下げて挨拶をした。
「それでアード?この子がお前の言っていた幽霊の噂の原因か?」
「まぁ、間違いないと思いますよ。なんなら確かめましょうか?」
「確かめる?」
そう言ってアードさん(クレイアードさんのあだなかな?)は、ポケットからメモを取り出すと確認するように目を通して次にシノちゃんにこう聞いた。
「最近、夜に出かけた日はいつです?」
「……第1日と6日、11日と16日…です」
シノちゃんがゆっくりと小さな声でつぶやくように答えていく。それを聞いたアードさんは確認し終えるとアルトさんの方を見た。
「合いますね、噂の幽霊の目的情報があった日にちと」
「そうか、お前そこまでか……」
「あれ!?団長!ここ引く所ですか!?」
その日付はどれも5の倍数に1を足した数だから一週間が5日のこの世界では週の一番始めの日に当たるのだけど……
「週の始めの夜に何してるの?」
「その日はいつもお仕事が忙しい日なので帰るのが遅いんです」
「お仕事?」
一瞬、この年で?と疑問に思ったけど、この国ではこの位の年から働くのは珍しくない事だというのを思い出した。
この国に義務教育というものは無い。
学校に行って勉強する子もいれば働いてお金を稼ぐ子もいる。確かフレアさんも12の時にはフローリアのお屋敷で働いていた、だからシノちゃんが働いていてもおかしくはない。
「私は先日まで小さなお屋敷で働いてたんです。雑用係でしたが……」
「先日まで……」
「少し前に辞めさせられました」
その後、シノちゃんから聞いた話しでは。
働いたお屋敷でシノちゃんはフードを深くかぶって、あの白髪と赤目そして羊のような角を隠しながら働いていたらしい。しばらくの間は雑用係だったからか特に何も起きず、静かに大人しくしながら一生懸命働いていた。
けれど、一生懸命頑張りすぎたシノちゃんは雑用係からそのお屋敷の給仕係になることになった。
もちろん、給仕係になったシノちゃんの秘密がバレてしまう可能性は遥かに高くなる。雑用係の時のようにフードを深くかぶったまま仕事が出来るはずがない。
結果、シノちゃんは給仕係になって数日で秘密がバレてお屋敷勤めをクビになった。
シノちゃんや私のような容姿は簡単に受け入れられない人も沢山いる、シノちゃんを雇っていたお屋敷もその一つだった。
この話しの最後にシノちゃんは言った。
「そんな事があっても、私はもっと頑張らなきゃいけないんです」…と。
私にはシノちゃんがつらくても、一生懸命頑張り続ける理由は知らない。けど、頑張っているシノちゃんを応援したいと思ったと同時に、そんなシノちゃんを追い続けて傷つけた男達が許せなかった。




