自分を恨んだ瞬間でした。
アルトさんにこの路地で起きた事を説明した。追って来た男の人達、その様子、そしてこの女の子の事……
「白髪に…角?それに赤い目か……」
「やっぱりこのせか……この国でも珍しいんですか?」
危なかった、一瞬この世界って言おうとしちゃった。気をつけなきゃ。
フードを取ってアルトさんに髪と目を見せる女の子はいまだに私の後ろにくっついてる。うん、でもあんまり隠れてたらフード取っても顔をみせれないからね、意味ないから。
「珍しいどころか聞いたことのない色だよ、リリアの黒髪と同じ位ね」
「そうですか……」
「となるとやはり……お前はどう思う?こういう事はお前の方が詳しいだろ」
アルトさんの隣りでずっと黙って女の子を見ていた騎士団の人は、うーんと考えていると何かに気づいたのかハッとしてゆっくりと喋り出した。
「白い容姿に赤い目…そしてその角、団長この子……」
「何か知ってるのか!?」
「はい!この子は幽霊です!」
「「…………はっ?」」
ゆぅれぃ?
私とアルトさんは互いに顔を見合わせると女の子に視線をうつした。そして私は試しに一体自分の存在意義に何が起こったのか分かっていない様子の女の子の頭をなでなでと撫でてみた。
「触れますけど?」
「そりゃあそうですよ、デマですもん」
「……」
なんだろう、なんだかすっごくイライラな気分なんですが。
えっと、つまりこの女の子は幽霊で、でも触れる。それはデマだからで、だったらそもそもこの女の子が幽霊というのがデマということに……
「って結局最初から最後までデマじゃないですか!」
何が言いたいんですかあなたは!?てか今更ですがあなたは誰ですか!私だけ名乗りましたけどあなたの情報については全く聞いてないんですけど!
「幽霊?デマって、それはお前がこの間言っていた少女の幽霊の噂の事か?」
「噂?」
「はい、夜な夜な城下町を歩く白い少女の幽霊!その赤い瞳を見ると不幸になると言われている」
そう言われると確かにこの女の子はその幽霊の特徴と似てるけど……
「あの、私が幽霊って一体……」
「とにかくデマだろうと噂だろうと、俺にはどうでもいいです!今目の前に幽霊と言われた子がいるんですよ!」
だから!?
だから何だって言うんですか!そんなに一生懸命力説されても私はいまだに意味分かんないですけど!
……って、なんですがその色紙とペンは。どこから出したの?そんなキラキラした目でこっち来ないでください!あなたはどこぞの夢が叶う瞬間の少年ですか!
「サイン下さい!」
「私…字書けません……」
ピシッと彼の周りの空気が凍ったような音がした気がする。
そう思っていると彼は地面に両手をつけてがっくりと凹みだした。うっわ、吹雪の次はキノコが見えてきた。えっと、なんかすいませんすっごく責めたりして。だからそんなに真っ黒な気分にならないで!ポジティブですよ!ポジティブ!
私の思いが通じたのか彼は何かをひらめくとガバッと起き上がって、女の子の手を取るっていった。
「なら手形でいいです!いえ、むしろ俺はそっちの方が嬉しい位です!」
「……」
私の顔を見てどうしたらいいのか訪ねたさそうな女の子の表情がそれはもう引きつっておりました。
(どうしよう?)
(私に言われても……)
(助けてください)
(さすがにこればっかりは)
と表情だけで会話している私達を頭にはてなを浮かべて見ていたアルトさん達。
とにかく、これから大変そうになることだけは分かった気がします。
結果から言いますと女の子はどこから取り出したか知りませんが朱肉を手渡した彼の色紙に手形を押しました。
「わー、わー!手形だぁ!手形だぁ!」
「お前何がしたかったんだよ……」
「幽霊の手形が欲しかったんですよ!」
目的変わってない?
「あの……私はどうしたら……」
「あぁ、ごめんね。とりあえずまたフードを被って、場所変えよっか」
ここじゃあ、いつさっきの男達が帰って来るか分かんないし。しかし、私とこの女の子とでこんな目立つローブが二人ってのもこの子が危ないし。
「出来れば人のいない所に……」
「あっ!それなら俺いいとこ知ってます!」
「いいとこ?」
※
カーカー
ヒューヒュー
ガタガタ……ガタン!
「って何なんですかこの廃墟は!?」
「いいとこ」
「どこが!」
連れて来られたのはあの路地をあれこれ進んで着いた廃墟。なぜか、周りが、森。所々割れた窓ガラス、ぎいぎいと音をたてている扉。三階建ての建物はその高さからか暗く影っているように見える。
ちょっと待って!洋風の建物の廃墟は洒落にならない!いるってここは、絶対なんか出る!だってガタンって音したよ!怖いです真面目に怖いです。
しかもさっきまで明るかったのになんか急に空が暗くなったような……
「行きたくないデス」
「えー、何でですか?」
「絶対なんか出る!」
「だからいいとこ何じゃないですか」
「……」
しまったぁ!この人に任せるんじゃなかった!基準がそうなる事なんて目に見えてたじゃないか!確かに人はいなくていいですが、人以外の方もいられては困るんです、主に私が!
「そうだ!ねっ、あなたもこんな怖い所行きたくないよね!」
と私は私の足元にくっついている女の子に聞いた。そうですよ、怖いのはなにも私だけじゃないじゃないか!この位の子は大体みんなこういう場所を怖がるもの……
「カッコイイ……」
「カッコイイの!?」
そんな頬を赤らめて見つめる対象がこんな廃墟だなんて、こんな事ってないじゃないか!なんですか私だけですか、私だけがこんな思いなんですか!
「なんですか、もしかして怖いんですか?」
「なっ!ま、まさか!怖くなんて…ないんだから……」
数分後…
「ずいぶん暗いが、まぁ人はいないな」
「ベストスポットですね団長!」
「カッコイイ部屋……」
私のバカ……




