犯人はコレです!
私の周りにはエルさんとアルトさん、あと巻き込まれたレイさんがぐったりと机や床に倒れている。
「にゃは、残りはリリアちゃんだけじゃよ」
「わ、私はちょと……」
「遠慮する事はない、君はもう立派な騎士団メンバーだ」
さて、なぜこんな状況になっているかを説明しなければいけないと思う。
始まりは数分前……
ファイさんに戦いを教えてもらう約束をした後の事。アルトさんになんとか許してもらい一週間の最後の1日に王宮騎士団上部に行きファイさんに戦いの色々な事を教えてもらうことになった。
この世界では5日を一週間として考えられている。
また月は春夏秋冬に二つ足して全部で六つありそれぞれ。
花の月、雨の月、日の月、葉の月、雪の月、精霊の月。
と表されている。具体的には花の月は春、雨の月は梅雨、日が夏で葉は秋、雪は当然冬。だけど精霊の月、これはこの中では特別で季節と言うよりはお正月に近い。
こっちの考えでは一年は360日、一週間が5日で月が六つあるから一つの月が60日になる計算だ。そしてこの世界は精霊様信仰なので一年ごとにその年に精霊様の名前を振り当てられる。精霊様は数多くいるけど基本有名な精霊様の名前が使われ次の年になると違う精霊様の名前になる。要は干支みたいなもの。
つまりこの精霊の月はこの名前の変わる季節の事だ。ちなみに今はテテ(火の精霊)年、日の月第10日。
話しが大分逸れてしまったが、とにかく 一週間の最後の日にファイさんの所へ行く事が決まったのでじゃあ帰りましょうみたいな雰囲気になったのだが……
「まぁ待て、まだ時間はあるゆっくりしていきたまえ」
「そうじゃ、まだ帰る必要無いじゃろう」
「いえ俺達はまだ仕事があるのですが」
いいから、もう少しいてよいだろう。と半ば無理矢理にいることに、私もさすがにそろそろ帰りたいのですが……私は別に何かあるわけではありませんが。
「レイ!紅茶、紅茶♪」
「はい、わかりました」
しかしながら、こんなファイさんを見ているとエルさんがあんなに嫌がっていた人とは思えないです。普通にいい人ですよ、少し変ですが。
「レイの入れる紅茶は絶品だぞ」
「へぇー、そうなんですか」
「はいどうぞ」
レイさんに出された紅茶はすごかった。もう色が違ったよ、香りもいいし、どうしたらこんなにいい紅茶が入れられるのだろう。
私はちょとその紅茶を眺めていると、ガチャンと大きな音と共に隣にいたエルさんがいきなり机に突っ伏した。
「ちょっ!エルさん!?どうしたんですか!?」
「……リリアちゃん、走馬灯が見え……」ガクッ…
そして、エルさんは動かなくなった。
いやいや!こんな訳の分からない事件的な物にしたいのではなく、純粋に何があったんですか!
ガチャン
「……」
「アルトさん!?」
えっ!?まさかの被害者二人目!アルトさんはもうすでに動いてないですし。
「アルトとエルは一体どうしたのだ?」
「あぁーどうしたんじゃかのー」
「いや、あの長官。あなたもしかして……」
「じゃあ文官!毒味よろしくじゃ~」
そう言うとネリさんはレイさんに無理矢理、無理矢理、紅茶の残りを飲ませた。
って!明らかに今一番怪しい紅茶を飲ませるなんてやばくないですか!?
ガチャン
「レイさぁああん!」
やっぱりやばかったじゃないですかぁ!これで被害者三人ですよ!あとこの紅茶は何なんです、どう考えてもおかしいですから!
「まさか本当に毒……」
「おぉ!これは先日私が作った茶葉の紅茶か。うむ、手作りの紅茶は旨いな」
ファイさんは何で平気なんですか……?普通に飲んでるんですが、あっ飲み干しましたね。あれ?毒は?
「にゃあ、リリアちゃんに素敵な情報を教えよう」
「素敵な情報?」
「ファイは多くの者に恐れられてるんじゃが、内二割が強さじゃ一割がその他。そして七割が料理なんじゃ!」
「……料理」
「奴の手に掛かれば料理は最終必殺技じゃ!」
じゃあまさか今アルトさんとエルさん、倒れる必要なんて無かったのに倒されたレイさんはファイさんが作った茶葉で入れた紅茶を飲んだから今に至るということにですか?んなまさか。
「にゃは、残りはリリアちゃんだけじゃよ」
そして、今現在……
「文官の紅茶はちゃんと美味しいぞ?」
「いや、確かにレイさんの入れた紅茶は美味しいかもしれませんが、問題はそれ以前の行程な訳でして……」
最終必殺技なんてハッキリ言ったら駄目ですがハッキリ言って飲みたくないです!のーせんきゅーです!しかもファイさん無自覚ですか。
「ほらほら、美味しい紅茶じゃよ」
「ちょっとネリさん?近いですよ?」
しかも後ろの尻尾が凄く楽しそうに動いてますよ、怖いですよ。そのファイさんの最終必殺技を近づけないで……
「にゃあ、さぁ見せてじゃあ」
「何を!?」
あと数センチでネリさんの手が届くと思った瞬間、後ろから強く引っ張られて一気にネリさんとの距離が開く。引っ張られた私は肩を支えられ、転ぶことなく後ろに下がった。
「おいネリ、勝手に視るな……」
「なんじゃ邪魔されたか」
「アルトさん……起きれたんですか」
「今やっとね、死ぬかと思った」
そこまで……一体どんな味何です?できれば一生知りたくないが。すると隣で未だに机に突っ伏しているエルさんは小声で「もう来ねぇ……」と呟いている、確実にトラウマになってる。
「おいエル、早く起きろ帰るぞ」
「あぁー………い……」
「なんという破壊力」
エルさんがフラフラと立ち上がると、アルトさんは私の手を引いて長官室を後にした。
なんとなくだが、後ろにいたネリさんは私を見つめていた気がした。
犯人…じゃなくて犯物はコレです!




