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三つの理由

「君をここに呼び出した理由は3つだ。」


長官さんは右手で指を三本上げながら話した。

てか、理由3つもあるんですか……



「一つは興味本位。私の所にこの間の痴漢事件の報告書が届いたんだが見た時に気づいたよ、これには何か裏があるなと。」


あぁ、やっぱりこの間の事件がきっかけでしたか。

報告書は王宮騎士団が王宮騎士団上部に、必要ならばさらに王宮へと提出していくもので。それぞれの事件の担当者や責任者、とにかく大きく事件に関わった人が書くのだそうだ。


「少し前の協会の事件の時にもこんな風に感じた報告書があっのだが……」

「えぇ!?」


協会の事件といえば、思い当たることは一つだ。私がこの世界に来た時の事件、変人集団…じゃなくて、協会による精霊様召喚の儀式。

結果的に召喚されたのは精霊様ではなく私だったのですが。


「あの報告書はアルトが書いたものだろう?調べようと思ったんだが、そもそも報告書に情報が少なすぎて諦めたよ。」


それを聞いて安心しました。とりあえず、長官さんには私の正体はバレていないようです。


「しかし今回の報告書、おそらくこっちはエルが書いたのだろうな。ちょっとネリに調べてもらったら色々と面白い事が出てきてね。」

「エル……」

「いや、まさかあれだけで感づかれてしかも、調べられるだなんて思わなかったんだって。」



それからエルさんは分が悪そうに口ごもると、額からタラタラとやばいものにでも出会ったかのように冷や汗をかいていた。


「こらこらアルト、そうエルを睨むでない」


それを長官さんが言いますか……


「長官、そもそも長官が調べようとしなければエルを睨む必要はなかったんですよ?」

「まぁそれはそれだ。調べてしまったものは仕方ないだろう、諦めろ」


自己中心的と言いますか、自由奔放と言いますか。長官さんは意外とサバサバした人のようです。


「そしてリリア、君の存在に気づきいたんだよ」

「あの、ですがなんで私なんですか?」


私は騎士団では一応お手伝いをしていますが、騎士団に入っているわけではなく本当にただのお手伝いなのです。騎士団に入ってもっとお手伝いしたいとは思っていますが、そんな私を呼び出した理由が分かりません。


「アルトとエルがこんな報告書を書いて隠そうとした子だ興味がわいてきてもおかしくないだろう?だから呼んだ、これが一つ目だ」


つまりは興味本位だよ。と言うと長官さんはかたずけをしていた文官さん、レイさんに何かを頼むと少し待ってくれと言った。


数分して、帰ってきたレイさんは小さな小包を持ってきて、それを長官さんに手渡した。


「そして二つ目はコレだ」


それを受け取った長官さんはその小包を私に投げ渡した。

いや、何が入っているかは分かりませんが、わざわざレイさんが手渡したのに、それを投げ渡していいんですか?

そして私がその小包をアルトさんに渡そうとしたら……


「それはアルトにじゃない、君にだよ」

「はい?私?」

「そうそうリリアに」


……


えっ?これ私が受け取らなきゃ駄目な感じですか?怪しすぎるので、できれば受け取りたくないんですが……

とりあえず私は小包を軽く振ってみたり透かしてみたりした。


「そんなに警戒しないで受け取ってほしい」

「はぁ……」


私はゆっくりと小包を開けた。包装紙を丁寧に破いて、中に入っている箱を開ける。


箱の中には青色の生地とりぼん、いくつかの装飾で施された制服が入っていた。


「制服が入っているだろう」

「これって……」

「あぁ、王宮騎士団の制服だよ。女の子のは今まで無かったから新しく作らせたのだ、色がアルト達のと同じになっている」


王宮騎士団と王宮騎士団上部では制服が微妙に違う。色的には王宮騎士団上部の制服の方が色が濃く、装飾も少し多い。

私が受け取った制服はアルトさん達が今着ている制服と色や大体の形は同じで、違いは下がスカートになっているということと、胸元にりぼんが付いていること、あとベルトもシンプルな物だった。


私は今まで正式には騎士団に入っていなかったので勿論制服も、もってなどいなかった。


「騎士団に入るんだ、制服は持ってないと」

「入って…いいんですか!?」

「君は既に事件を解決して結果を出している、問題無いよ」


私は凄く嬉しくてドキドキして、ちょと不安もあるけど期待と楽しみが私の中で膨れ上がっていく。そんなそんな思いを一気に感じていた。


「問題無いな、アルト?」

「リリアが入ると言っているんです、断る訳がないでしょう」

「おいアルト、お前は気づいてないと思うけど。お前今かなり凄いセリフ言ってたからな」

「あの長官さん、ありがとうございます!」


私は立ち上がって深く頭を下げてお礼を言った、手には騎士団の制服を大事に握り締めて。

長官さんは椅子から立つと私の前まで来て私の頭を引っ張っると頭を下げるのを止めさせた。


「そんな風に頭を下げないでくれ、お礼なら私の目を見て言ってくれ」

「はい」

「それに私は確かに長官だがファイ・クライアンという名前がちゃんとある」


ちょと気にしていたのか、少し恥ずかしそうにそう言った。


「はい、ファイさん」

「うむ、それで三つ目なんだが私の物になってくれないか?」

「嫌です」


暖かい笑い声が一変、部屋が無言という状態に変わる。

そしてファイさんはレイさんの方を向くと子供のように言った。


「文官!ちゃんと始めから説明したのに断られた!」

「長官、いちいち私に泣きつかないでください。てか泣いてないですし……」


いやファイさん、言っておきますけど全然始めから説明できてないですからね。私を呼び出した理由の二つ目まではしっかり分かりましたが、最後の三つ目の説明は大幅にカットしましたよね!削りましたよね!それで「私の物になって」って、誰でも断りますから!!


「長官は何でリリアを自分の物にしたいんですか?」

「アルト、私は別にリリアを自分の物にしたいわけではないぞ」

「じゃあどういう意味なんですか?」

「リリアを育てたいのだ」


……はい?

人を育てる。それはつまり成長させる、一人前にすると言う意味で…つまりはどういう……


「要は教えたいのだよ、戦いを」

「戦い……」

「教えて、どうするおつもりなんですか」


その質問は私ではなくアルトさんが聞いた。


「私はいつでも戦いたいだけだ」


強くて完璧で好戦的なファイさん。そんな人なら、私を育てたい理由はきっとこういうことだろう。

強すぎて戦う相手がいないんだ。


「リリアを私の手で育て、私の戦う相手になってもらいたい。どうだろうリリア?」


弱い、戦えない。私が騎士団にいてずっと考えていた事だ。

ファイさんに教えてもらえば少しは戦えるようになるかもしれない、役に立てるかもしれない。もう、あの事件の時のように戦えずに這いつくばることしか出来ないなんて事も無くなる……


「……教えてもらえば強くなりますか」

「私が育てるんだ、後は君次第だよ」


私も誰かを守れる力が欲しい。


「ファイさん、私に戦いを教えて下さい」

「リリア、私の戦う相手になってほしい」



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