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フレアさんの事。

もう、ほとんどフレアさんのメイン回な気がする……

   ~10年前~


「フレア、この子はミキ。エルルク様の従兄弟にあたる方ですよ。」

「……うぅ」

「フレア!」


私の前にいる男の子は綺麗な紫がかってふわふわした銀髪に紫色の目をした人です。お義母かあさんの後ろに隠れて顔を出せないでいる私には眩しすぎます、きらきらしてます。


私フレアは今年で8歳になります。ちょっとお姉さんになる年ですが、私はお姉さんにはなれないみたいです。だって、目の前にいる5歳の男の子にもまともに挨拶も出来ないお姉さんなんていないですもん。


「申し訳ありません。この子人見知りが激しくて。」

「いいのよ気にしないで。ほらミキ、あなたから挨拶してみなさい。」


すると、きらきらしている男の子。ミキ君は私の前にきて胸を張って言いました。


「ミキ・メアレス。いつか魔法使いになる!」

「それは挨拶なのか?」

「……魔法使い。」

「正しくは魔術師!」

「なら始めからそう言えよ。」


ミキ君の伯母さんが時々ツッコミを入れてます。すごいです、言葉がハキハキしてます、怖がりの私とは別世界です。


「……」

「君は挨拶しないの?」

「わ、私……は…」


今、私の頭のなかはぐるぐると必死に回っています。ぐるぐるでもじゃもじゃで。

私より『みぶん』が上の男の子にはなんて挨拶をすればいいのでしょう?「はじめまして」でしょうか?それとも「こんにちわ」?でもその後は何を言えばいいの?


ぐるぐる、ぐるぐる、と悩み続ける私にミキ君は不思議そうな顔をした後、にっこり笑うと。バッと私の手を取りその手を引っ張って走り出しました。



「ひゃぁあ!?」

「挨拶なんてどうでもいいんだった!僕は探検しに来たんだよ!フローリア家探検隊、レッツゴー!」

「えぇ!私も!?」


何で私が知らない内に探検隊メンバーに入ってるんでしょう?

そんな事疑問には気ずかない(て言うか気にしてない)でミキ君は今もずっと私の手を引っ張ってます。ズンズンと進んで、もうお義母さん達のいた所はもう見えません。でも見えなくなる前にこんな会話が聞こえました。


「そういえば、なぜミキ様なのです?エルルク様でしたらフレアともアルト様とも同い年ですのに?」

「そのエルルクが面白くなさそうだとか言って来ないからたまたま家に遊びに来てたミキを無理矢理連れてきたの。」

「無理矢理……」

「まぁ、フレアちゃんと仲良くなりそうね。さぁ、私達はお茶会と言う名の女子会よ、テナもいるわ。」

「いえ、私は仕事が……」

「行きましょう。サリア。」

「はぁ、分かりました。」


ってお義母さぁあん!お茶会なんかより私はどうなるのです!?私もお茶会行きたいです!お義母さんの紅茶とお菓子好きなのに。


「あ、あの!私はお茶会に……」

「はい、ついたぁ!」


小さな声での反論は届かず、気ずけば私とミキ君はフローリア家のおっきなお庭に到着してしまいました。

私の手は今もミキ君に握られたままです。


「うん、この庭にはきっと何かある!」

「何か……?」

「巨大生物とか!」

「……巨大生物。」


探検の目的がいまいち分かりません。でも巨大生物なんていたら私は走って逃げ出す自信があります、それかその場で動けなくなってしまうでしょう。

怖いです。巨大生物なんて私は見たくありません、だってもしかしたら潰されちゃうかもしれないし、食べられるかもしれないです。だから私はミキ君に言いました。


「た、食べられちゃうよ……」

「食べられる前に食べ返す!」

「!?」

「焼けば食えると思うよ。」

「無理無理無理!」


そんな恐ろしい事、私には出来ません!無理です、嫌です、怖いです!

私が首を横にブンブンと振っていると、ミキ君は私の手をさっきよりもちょっと強く握り締めたと思うとまた私を引っ張って森の方に走り出します。


「ミ、ミキ君!?」

「大丈夫!」

「無理だよ!」

「魔法使いは――」


私の前を走るミキ君は走りながら楽しそうに、大きな声で私にその言葉を伝えました。


「『無理』を『可能性』に変える者!」

「可能性……!」

「出来ないより出来るかもしれないの方が楽しいんだって!」


ミキ君が誰かに聞いたらしいその言葉は、私のこころのずっと下まで響き渡たると私のこころがあったかくなるのが分かりました。


今まで私は何回「無理」と言って来たでしょうか。

知らない人に話すのも無理。

やったことの無い事をするのも無理。

一人で何かをするのも無理。


たくさん、たくさん言いました。出来ないと思うと直ぐに無理だと嫌がりました。

だから考えた事なんてありませんでした。


出来ない事が出来る事になったらどんな気持ちになるのかを。


「探検隊、巨大生物探しにしゅっぱぁあつ!」

「お、おー!」


私は知りませんでした。君に、その気持ちを教えて貰うまでは。



      ※






ストーカー……『しつこくつきまとって迷惑や危害を与える者や行為。』

そう、しつこくつきまとって……


「フレア~手伝うよ~ねぇねぇ!」

「手伝わなくていいです。ミキ君は自分の仕事をしてください。」


迷惑や危害を……


「でもフレア昨日―――。」ボソボソ。

「な、なっな!何で知ってるんですかぁあああ!?」


与える者。

って!おまわりさぁあああん!!ここにストーカーがいまぁあす!この世界におまわりさんがいるかは知らないですけど。


まさかミキがそっち側の人間だったなんて、迂闊だった。もう少し考えて慎重に行動するべきだった。


「…………。」

「フレァア!」

「ひゃぁああああ!」


すると、いきなり客間の扉がバッァアン!!と開いたと思うと、珍しく怒ったサリアさんがそこにはいた。

サリアさんはその金色の鋭い瞳をミキに向けるとフレアさん、私の順番で交互に状況を確認して、再度ミキを見たと思ったら直ぐに大声で叫んだ。


「ミキィイイ!!」

「っ!?」

「お……メ、メイド長様!?」


サリアさん!?どうしたんですか!まぁ、そんなに怒っている原因はなんとなく分かります。おそらく……いやほぼ確実にミキの事ですね。ですが何故にそんなに怒っているんですか!怖いと言うより恐ろしいんですけど。




「サリアさん……」

「!」


すると、サリアさんは何かに気ずいたのか私とフレアさんににっこりと笑うと「リリア様、失礼致しました。」と言いミキの手を無理矢理引いて扉から出て行った。


……サリアさんが手を掴んだ瞬間ミキの手からミシッ…と嫌な音が聞こえたのは私だけでしょうか?


「えっと……大丈夫ですかフレアさん?」

「あ、はい……ありがとうございます。」

「ミキは大丈夫何でしょうか?」

「……」


フレアさん、そんな盛大に目を逸らさないでください。ミキが大丈夫じゃ無いのは分かりましたが少しはフォローしてあげた方がいいんじゃ……


「流石のお義母さんも凄く怒ってましたので。」

「はい?お、おかあさん?」


サリアさんとフレアさんが……?えっ?親子?

………………。


「えぇえええええ!?」

「リリア様!?」

「親子だったんですか!」

「あの、はい。……メイド長様は確かに私のお義母さんですが。」


ビックリですよ!あのサリアさんとフレアさんが親子だったなんて……だって片や超しっかりの明らかにメイド長!って感じのサリアさんとちょっとドジッ娘で新人メイドさん!なフレアさんがですよ。


……あれ?でも何かおかしくないか?フレアさんは今18歳で…ん?サリアさんは何歳だ?でも明らかに18歳の娘のお母さん。にしては若すぎるような……


「お義母さんと言っても、血は繋がっていませんので。」

「あっ……」


……く、空気が重い。

ちょっと触れちゃいけない所に触れてしまったか?話しが進みません。えっと……


「すみません。」

「いえいえそんな!リリア様が謝るような事では!」

「でも……」

「血が繋がって無いと言いましても、そんな複雑な事があるでは無いですし。」

「じゃあ何故?」


フレアさんは、少し懐かしむような。それでいて暖かい笑みを浮かべて言った。


「私はただの捨て子だったんです。」

「……捨て子」

「捨てられたのは3歳の時です……」



      ※



覚えているのはあの一言だけ。


『ここで待ってなさい。私達はちょっと遠くに行くだけだから。』


“遠く”とは、どこなのでしょうか?

“ちょっと”とは何時まででしょうか?


分からないまま一人、大きな噴水の前で両親の言葉を信じてただただ待っていました。

けれど数分たっても、数時間たっても、そして数日たっても両親は迎えには来てくれませんでした。


「嘘吐き」


大きな噴水にもたれて小さく呟くと途端に色んな事がどうでもよくなってきました。

眠い。そう言うのでさえ嫌になってきて、疲れて眠りにつこうとする瞬間まではずっと両親への憎しみが私の中を埋め尽くしてきます。


お父さんもお母さんも世界も大っ嫌い。

それ以上に何も出来ない自分が……




「駄目よ、寝たら。」

「……」

「何もしないでただ諦めて、それで眠るのは怠惰です。」


冷たい夜が明けるように。寒い冬が過ぎるように。

その人はただそこにいただけ。


「一人じゃ何も出来ないのなら誰かの力を借りなさい。元々人間なんて一人じゃ何にも出来ない生き物なのですから。」

「誰かの……」


小さな口から言葉が漏れた。もう、動かす事なんて無いと思っていたのに。


「誰でもいいの。その人の力を借り、あなたも自分の力を偽り無く返せばそれだけで。」


私の前にいた女性……いえ少女が私に手を差し出しました。


「例えば、目の前にいるメイドさんとかね。」


金色の瞳を細めてにっこりと微笑んだその人の手は暖かく。髪は私と同じ茶色。さっきまで自分を嫌いになろうとしてたのに、今はこの同じ色の髪がとっても嬉しかった。


「絶望するのは自由よ。でも、その絶望で自分の可能性は潰しては絶対にいけないわ。」

「……」

「可能性を広げなさい。今はまだ分からなくても、いつかきっと誰かが教えてくれるわ。」

「誰かが……私にもいるかな?」

「人の出会いは必然ですよ。あなたが生きているのなら、出会いは数多に訪れるの。」


その人の手に捕まって立ち上がった私は気ずきました。

冷たい夜がもう明けていた事に。


「私……は…」

「その瞳にもう絶望は無いわね。」

「……はい」

「行きましょう。そして生きなさい。でなきゃ出会うハズだった人に失礼よ。」


その人は真っ直ぐと指を指しました。


「サリア・イリアン。私が、この出会いがあなたの最初の必然。」

「フ、フレア…です。」


これが出会い。



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