そして、その後…
アルトさんとエルさんが犯人を縛り上げていると。
「いってぇええ!!」
「あっ、イア君。」
起きたんですか、そう言えば、君には色々と言いたい事があるんでした。おもにさっきの行動について。
「おはよう、イア君。」
「……気持ち悪いよお姉さ……痛い!痛い!」
「お・は・よ・う!」
「おはようございます!」
そして私はイア君にやったぐりぐりをするのを止めた。まぁ、おはようと言ってももう昼過さえもすぎまくっているのだが。すると……
「お姉さん!」
「ミリーちゃん!サイ君!」
「イアは!?」
広場の入り口で様子を見ていたらしい二人がこちらに走って来て私に飛びついた。そして、さっき起きたばかりのイア君はサイ君をみるなり。
「げっ、サイ!」
「バカ!イアのバーーカ!」
「イア君の大バカ!」
「イア君のウルトラバカァ~」
「お前らバカバカ言い過ぎだぁ!あとお姉さんも乗っかるなよ!」
「えぇえ~…」
ちなみに、ウルトラバカァと言ったのが私だ。いや、だって自業自得でしょ、それに誰一人間違った事は言ってないじゃん。
「あれ?リリアちゃんその子供達は?」
「ん?さっきの子達じゃないか?」
「あっ、この子達はですね………何ですかソレ……」
私はアルトさん達が引きずっているソレを指差した、ぐるぐる巻きにされた何か。上から下までとにかく縄で縛られている、頭(?)の先には見覚えのある赤毛。
「あの……まさかとは思いますが、ソレさっきの……?」
「犯人だよ。」
「あぁー…そうですか……」
うん、この事にはもうふれないことにしよう。もしかしたらアレがこの世界でのやり方なのかもしれないし、そう言うことにしておこう。
「あれ?あの変態は?」
「イア君、それならもう終わったから。そこの騎士団の人達がやっつけてくれましたから。」
今までの会話で気づこうよ、犯人おもいっきり縛られてるじゃん。するとミリーちゃんがエルさんの所にテトテト歩いていって、エルさんに深く頭を下げ。
「あ、ありがとうございました。」
「あぁ……いやさ、俺達は最後に蹴っただけだし、お礼ならリリアちゃんに言った方がいいんじゃない。」
エルさんは私を指差してにっこりと笑うとミリーちゃんの背中を軽く押してあげた。ミリーちゃんはゆっくりとこちらに近ずいて来てサイ君の手を引いた、そして照れながら逃げようとするイア君を今度はサイ君が引っ張る。
三人が私の前に並ぶと一度顔を見合わせて、それから私の目を真っ直ぐ見ると、
「お姉さん、あの……守ってくれてありがとう。」
「リリアさん、ありがとうございました、あとごめんなさい。先に逃げてしまって……」
「……っ…!」
「イア君!」
「イア!」
「……あ…ミ、ミリーを守ってくれて……ぁりがとう……あと、勝手に突っ込んだのは…ご、ごめんなさい……!」
イア君は下にうつむいて必死でお礼を言ってくれた。イア君の言葉を聞いた私達はその姿を見て自然と笑みがこぼれた。
「うん、みんな怪我は無い?」
「無いよ。イア君も無いみたいだし」
「そう、なら謝る必要は無いよ」
私はそっと腰を落として三人の目線に合わせる、そして三人の頭を順番に撫でていく。嫌がったイア君も最後には受け入れてくれた。
「ねぇ、みんな」
『何?』
「ありがとうって言ってくれて、ありがとう」
三人はちょっと分からないような素振りを見せた後、素直にその言葉を受け入れてくれた。
誰かに『ありがとう』と言われたのは一体何年ぶりだろうか。
「お姉さん、スッゴく格好良かったよ」
「うん」
その後、私はアルトさん達に三人の事について話してアルト達と三人は自己紹介をした。途中、アルトさんが男性という事実を全く信じないイア君にずっと同じ話しをさせられたりしたけど……イア君は本当に色々大丈夫かなぁ?ちなみにそのイア君はさっきの事件についてミリーちゃんとサイ君に怒こられてる。いやぁ~仲がよろしいようで。(棒読み)
「お前は少しは無い頭を使ってだなぁ」
「無い頭を使うってどう言う意味だ!」
「スッゴく心配したんだからね!」
そんな三人を遠目に見て……
あれ?なんかズキズキする、さっき転んだ時に頭打ったかな?たんこぶとかできちゃったか?
たんこぶを確かめる為におでこから右上に行った辺りを触ってみた。
「うーん……たんこぶは無いか」
『ベッチャ』
ん?なんか手について……
「な、何コレェエエエエ!?」
私の手真っ赤なんですけど!いや、コレどう見ても血だよね!?しかもちょっと打っちゃったかな?みたいな感じじゃないよ!凄い勢いで血が手の平にべっとりついてるよ!ちょ、コレ本当に私の血!?えっ?じゃあ私の頭のズキズキってまさか……
「リリア?いきなりどうしたんだ?」
「うわっ!何?どうしたのその手?」
「いえ……私にもちょっと……あの、私どうなってますか?」
自分の事が自分で理解出来ない。一体私に何が起たんですか!?
※
「完全に切れてるな」
「切れ……」
「ちっちゃい傷だから大丈夫だと思うよー」
「とにかく血を止めるか」
そしてアルトさんは私に応急処置をしてくれている。するとミリーちゃん達が心配そうに私に話しかけてくれた。
「大丈夫ですか!?」
「なんで切れたんですか?」
「多分、私が犯人を蹴った後に犯人に転ばさせた時かな?」
「蹴った?……犯人をか!?」
「あっ……」
しまったぁあ!アルトさん達には私が犯人に蹴りを入れた事は言わなかったんだった!!
「いや、ですから……そのですね……事情が!事情があったんですって!」
「リリアちゃん、大人しく怒られた方がいいんじゃないの?」
「エルさん!!」
見捨てないでください!仕方なかったんですって、あぁするしか無かったんですからぁ!
「そ、そんな事して犯人を刺激させたからあんな事になったんだ!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「うわぁ……リリアちゃんがスッゴく面白い事に……」
犯人蹴ったのも私が悪かったから!「うっさい!」とか言っちゃったのも、あからさまに犯人刺激したのも謝りますからぁ!だから、だから……
「この体勢から解放して下さい……」
「駄目だ、怪我しているんだから。治療が終わるまで降ろす訳にはいかない」
私はさっきから応急処置がしやすいようにと言われ、ベンチに座らせている。ここまではいい!問題無い!しかし、そのベンチに膝だちをして私のほとんど目の前にいるアルトさん。
つまり私がベンチの背もたれギリギリまで座りその私に乗っかかるように(実際は私の足とスカートをアルトさんは跨いでいるのだが…)アルトさんと私が向かい合わせに座っている。
恥ずかしいから!ミリーちゃん達やエルさんも見てるから!エルさんはあからさまにこの状況を面白がっているが……こんな体勢、ハズい!近い!確かに、私とアルトさんとの身長差だとアルトさんが立ってるのも、地面に座っているのも治療しずらいのは分かる。だからってこの体制はないでしょう!?とにかく下ろしてぇええ!!
「もう過ぎた事だからいいが、そんな危険な真似をしては危ないだろ!」
「は、はい!」
分かりました!分かりましたから、さらに近ずかないで下さい!そうだ!アルトさんは今女装している。髪は縛っているが、女性に見えないわけではない、どうにかなるはず!意識集中、意識集中……
「ふむ、髪が縛ってあって邪魔だな……リリア、ほどいていいか?」
「な、なに言ってるんですか!絶っ対駄目ですよ!!」
こんな広場のど真ん中でミリーちゃん達もいて!しかもこんなハズい体制で!あり得ないですから、断固拒否!!もう、今ので意識集中切れちゃいましたよ!
「いや……しかし、これでは傷が結び目に近いからほどかないと出来ないからなぁ……」
「じゃあ、もう一気にほどいちゃえばいいじゃん!」ばさっ……
「わぁああああああああああ!?」
何するんですかエルさん!
ほどかないでってあれほど言ったのに!
「よし、やりやすくなった」
「アルトさぁああああん!!」
その日、その広場からは楽しそうな笑い声が聞こえていた。時々悲鳴も聞こえていた。




