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とある少女の宣告

寒い寒いとせわしなく歩いていく人達。

私としてはついこの間まで夏だった気がしてならないので、なんだか夏から冬にタイムスリップした気分です。


「そういえば……」


もうすぐ、愛斗とさよならをした季節になるんですね……




     ※




「クリスマスパーティーをしましょう」

「へっ?」


学校から変態共を抜けて、徒歩7分弱。

お母さんのいる病院のお母さんの病室に入ったその瞬間、その言葉は飛んできたのです。


「ク、クリスマスパーティー?」

「そう!素敵でしょ?お祝いしましょ、璃々愛」

「お母さん…ここ病院だよ?」

「大きなもみの木が飾れないのが残念よねぇ」

「いや…そうじゃなくて……」


そもそもお母さんはクリスマスの明確な意味を知っているのだろうか?それすら怪しい気がします……

それでも、うきうき気分のらんらん気分になったお母さんはもう、梃子てこでもなんでも動かないのです。


「去年はお祝い出来なかったんですもの!今年はせーだいにやりたいのよ!」

「お母さん…一応聞くけど、クリスマスってなんの日か知ってる?」

「サンタさんを召還するための儀式よ!」

「かすりもしてない!?」

「あと、一年の中でもとても特別な日でもあるわ」

「間違ってはいないけれども!」


儀式って…!儀式って!今までそんな風に思いながらクリスマスを過ごしてたの!?

あとやっぱりまだサンタさんを信じてたんだねお母さん!

はぁ…とため息をつきたくなるのを我慢してどうしたものかと考えていると、不意に私の後ろにある病室の扉が、ガラッと開きました。


「失礼します……」

「あ、桔梗さん」

「璃々愛ちゃん…こんにちは」

「はい、こんにちは!」

「あ…ごめんね、お話し中だったよね……」

「いえ、大丈夫です。大した話はしてなかったですから」

「お母さんの一大ビッグイベント計画なのに!?」

「あのね、お母さん、病院でクリスマスパーティーなんてやっちゃダメだと思うよ」

「えっと…いいと思いますよ?璃々愛ちゃん」

「えっ!?いいの!」


桔梗さんからまさかのOKサイン!?


「…百合菜さん…一応いろんな人に話してるみたいですし……」

「え…お母さんそんな事してたの?」

「もちろんよ、準備は万端になの!」

「なんでこういう時だけ……」

「先生も了承したらしいですよ」

「つかさ先生が?」


うーん…病院でクリスマスパーティーなんてどうかと思ったけど、つかさ先生がOKサインを出したと言うのなら大丈夫…なんでしょう。

何より私自身、いろいろ言ってはいてもやっぱりお母さんとクリスマスパーティーはしたいんです。

だって…とても特別な日なんですから……


「ねぇ、リリア。クリスマスパーティーしましょー」

「……うん。それで、お母さん…クリスマスパーティー何やるの?」

「そうねー…とりあえずケーキがいるわね。あとポインセチアなんかも飾って…お供え物はこれで完璧ね」

「クリスマスにお供え物は完璧にしないよ!?」


なんなんですかお供え物って!サンタ信仰!?サンタ信仰なの!!


「あの…すみません璃々愛ちゃん、百合菜さん。そろそろ投薬…始めさせてもらえると……」

「……えっ、あ…ごめんなさい。お母さん、このお話しは後でね!」

「はーい、後でねー璃々愛ー」


お母さんに振られた手を振替して、私は病室から立ち去りました。

いつもの病院の廊下を歩く私の足取りは軽く、ふわふわしている。

クリスマスをお母さんと…大好きな人と過ごせる事が嬉しすぎるせいなんです。



     ※




とりあえず、今日もあの本棚の前でつかさ先生から借りた本を読んで時間を潰そう。

そう思った私は本棚の前に座り込むといつものように本を広げた。

お医者さんになるために、つかさ先生から借りた本は今まで読んでいた本よりも面白いけど難しい。

とにもかくにもまずは本が読めるようになるために漢字や言葉を覚えなきゃだし、それにつかさ先生がお医者さんになるなら算数や理科なんかの勉強も大事だって言ってたし……やることが多くて目が回りそう。

私は軽く首を振って頭をスッキリさせると、本棚から辞書を取り出す。


「千里の道も一歩から。塵でも何でも山となるだよね」


私はやれる事をやるだけです。

なんたって、やりたい事は分かっているんですから。






「……璃々愛ちゃん…何してるの?」

「き、桔梗さん…ちょっと…首が……」


首…吊った……

痛い、超痛い。うつぶせで本なんて読むもんじゃなかった……


「だ、大丈夫?」

「首が死ぬ…死にそうです」

「し、死ぬの!?」


数分後…


「いい加減私のアホさが嫌になります……」

「えっと…」

「あ、すみません。変なとこ見せちゃいましたね。もう大丈夫です」

「そう……」

「?どうかしましたか桔梗さん?」

「……い、いえ…えっと…その……」

「?」


また、何か悩み事なのかな?

ぐるぐるぐるぐる考えるのは桔梗さんの癖みたいなものです。

うーん…ここはやっぱり私が桔梗さんのお話しを聞いてあげるべきかな。悩み事はよくないからね!話してスッキリするならそれに越したことはありません!

そう思って私が桔梗さんにお話しを切り出そうとしたその時、桔梗さんの方から突然お話しを切り出されました。


「璃々愛ちゃん…その……聞いて欲しい事があるの」

「……なんでしょう?」


私が言おうと思った事を先に言われてしまい、若干戸惑いながらも私は桔梗さんのお話に耳を傾けました。


「あの…出来れば秘密に……えっと…知らなかった事にして欲しいの」

「秘密…?あの、桔梗さん。それ…どんなお話なんですか?」

「…………本当は…言っちゃダメなの。でも、私は璃々愛ちゃんに勇気づけてもらって…たくさん元気をもらったから……だから、璃々愛ちゃんの為に…私なりに正しいと思った事をしたいの」

「桔梗…さん……?」




「…………百合菜さん…亡くなるの」



……なく…なる?

一体何が?なんの…事?


「だからね、璃々愛ちゃん。百合菜さんは……」


もう、死んじゃうんだよ。




     ※




私のお父さんは私が生まれた日にいなくなってしまいました。

愛斗は私と一緒に生まれる事ができませんでした。

私はあの寒い雪の日に愛斗とお別れをしました。


そして…私はまた家族を失ってしまうのです。


嘘です、夢です、笑い話です。

本当です、現実です、真実です。


死んじゃうってなんですか?

私は知りません。

お父さんも愛斗もいなくなってしまったけど、死んじゃった所を見たわけじゃないんです。

だから私は知りません。

死んだ体の冷たさも、硬さも、匂いも、表情も。

知らないんです、知りたくないんです。だから……



「りりえるたん!本日の蹴りもまごうことなき素晴らしさでありました!」

「うるさいです……」

「りりえるたんの誘拐からの蹴り飛ばしは最早ご褒美なり」

「踏まれているこの瞬間ですら至福」

「――っ!うっさぁあああああああああああああああああああああい!!」


変態共を踏みつけて、その上で声を荒げた私の目からはぼたぼたぼたぼた、涙が溢れかえってた。


「嫌ぁああ!嫌だもん!なんで…なんでですか!」

「ぎゃああああああ!?りりえるたんの涙!?激レア!じゃない、大丈夫でありますか!?」

「ひっぐ…うっさい!!」

「拙者か!?拙者達のせいなのか!?」

「あぁああああぁああああああ!」

「幼女を泣かすなどロリコン魂には言語道断!なんとかするのです!」

「ふぇえええぇええええええええええええええ!!」


嫌です、嫌です、嫌なんです。

だって今日もいつもと変わらない1日なのに、明日には…明後日には…お母さんが死んじゃうんかもしれないんです。

私が守りたかったのに、大切な人なのに……

私は泣くしか出来ないんです。


「ああぁあああああ!あぁああああぁああああああ!!」

「りりえるたん笑うであります!今からあいつが一発ギャグをするのです!」

「ネタ振りとは卑怯な!?吹っ飛んだと言えばいいでのでござるか!」

「バカやろう!ここはりりえるたんへオタク心を込めた包容を――!」

「踏みつぶされてる我々は無力か!?」

「だが踏まれてはいたい!なんという究極の選択!」

「ふぇえええぇ!うるさい!うるさい!うるさい!変態さんなんて嫌いです!」


大っ嫌いです!!




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