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まるで世界は物語のように回ってく。

ユウに剣術を教える。

ちょっと不安もあったけれど、そう意気込んで私はいつもの川沿いの道に来ていた。

約束…もとい協定を果たすためにと言うのもある。でもそれと同じぐらいあの腹黒ショタとリピート男にやられっぱなしの言われっぱなしと言うのは気に食わない!

とにもかくにもまずはユウに強くなってもらわなくちゃ何にも始まらない訳なので、私は意気込んでいたんだ。

数日前までは。


「もうヤダぁあああああああ!あなたに教えるのもう無理!」

「ってめぇ!何投げ出してんだ!」

「だってもう私が耐えられないんですよ!主に精神面が!!」


そんな風に叫ぶ私達の姿は、端から見たらただをこねている子供のように見られてしまうしれない。

けど、そんな事を気にしている余裕は今の私には無い。微塵も無い。

なにせ、この精神的攻撃の傷を癒やすので精一杯だからだ。


「メンタルブレイクなんですよ!クラッシュされてるんですよ!」

「んなもん知るか!!お前が勝手に傷ついてるだけだろ!」

「そもそも原因があなたなんです!」


そう、私がこんな口喧嘩をしながらも未だにズキズキと痛む心の傷と戦っているのは少なくとも…いや少なからずユウのせいだ。

これでも最初は私の精神メンタルの弱さのせいだと思ったんですよ?でも、あれから数日たった今となってはそんなの関係ない。なぜなら、たとえ絶対的精神力の持ち主であったとしても、この傷の痛みを避ける事は出来ないだろうからだ。

そう…この……絶対的な無力感からは……


「なんで…もう本当なんでこんな事に……」

「お前の最初のやる気はどこにいった!」

「それを言うならあなただって最初の弱小設定はどうしたんですか!」

「どうしたも、こうしたもねぇだろ!はなから強けりゃお前になんて頼ってねぇよ!つか、弱小言うな!!」

「だったらなんではなから強くないはずのあなたが私がひと月かけてようやく出来るようになった技を数日間でやってのけるんですか!このやろうぅうう!」


そう、私が感じている痛みの原因は決してあまりにもユウが弱すぎて教えるのもないもかもすべて投げ出したくなってもう現実から逃げ出すほかないほど追いつめられたからじゃない。


「おい、てめぇ今何考えた」


……とにかく!自負するわけではないけれど、私は誰かに何かを教えるという行為自体は実のところ得意だったりする。よく勉強を教えたりした事だってある。

友人1人いなかった奴がなに言ってんだと思われるかもしれないけど私が教えていたのは友人でもクラスメイトでもない。


私のお母さんにである。

まぁ、通常の親子関係からしたらかなりおかしなな状況に思えるだろう……一応先に言っておくが、私もお母さんの事が普通に好きだし、大好きだ。

しかし、残念ながら私のお母さんこと晴上はるうえ百合菜ゆりなにはおよそ常識と呼ばれる物が恐ろしい程欠落していた。

「今日は学校で図形の勉強をしたんだよ!」と言ったら「図形ってなぁに?」と、笑顔聞いてくるのが私のお母さんだ。


数十年間なにして生きてきたんだとツッコまれる所だろうけど、幼い私は生まれ時からそんなお母さんと一緒にいたから特に不思議がる事もなく、お母さんに色々教えていた。

そんなわけで、私はたとえ何かが壊滅的に出来ない人でも、それを教える事は出来るし。全然伝わらなくても精神的に傷つく訳がない。

その…はずだったのに……!


「あなたが予想外のハイスピードで成長するハイスペックだったばっかりに――!」

「どういう事だ、オイ」


この人の初期設定は本当にどこいったんですか……!そんな話矛盾しまくりの物語とかじゃないんですから、もっと現実的でいいじゃん!ご都合主義みたいな力発揮しなくていいです!

教える私の辛さも考慮して欲しいですよ!


「はぁ…もうなんか苦しむのに疲れた……」

「じゃあ落ち着けよ……」


現実と心の中のツッコミで疲れ始めた私をユウが半ば呆れた様子でそう言った。

ぐっ…確かにユウの言うとおりだ。一旦落ち着くべきなのかもしれない。

とりあえず、私は深く深呼吸をしながら今の状況を整理し直してみた。


私がユウに剣術を教え始めて直ぐの頃。

その時はまだ、ユウは以前戦った時のまま非常に弱いかった。力はあるけど動きは単調、反応は早いけど敵の攻撃をよける事も出来ない。

そこで私はユウが今までどんな修練をしてきたのか、細かく聞いてみてから教える事にした。


結果。ユウは飛躍的に成長した。

いやね、確かに誰かに何かを教えるのは得意とは言いましたが、いくら私でも剣術をそんな短時間でここまで習得させられるほど強い訳じゃないんですよ。

ユウは基礎能力自体は十分…それどころか、人より上回るほど備わってる。それに気づいた私がやったのは、私に剣術を教えてくれている長官さんことファイさんが、今まで私にしごきにしごいてくれた中で覚えた型や技を教える事だったんです。


バッサリ省いた事柄を説明しますと、ユウに剣術を教えると意気込んでやってきたその日にはすっに私の休暇は3日を消費していた。それらの日々を今日まで軽く表にすると……


1日目:ユウと出会って川へダイブ。

2日目:ユウと協定を結ぶ。&クローバー探し1日目。

3日目:腹黒ショタとリピート男登場。

4日目:剣術指導1日目。

5日目:クローバー探し2日目。

6日目:剣術指導2日目。

7日目クローバー探し3日目。

8日目(本日):剣術指導3日目。


型や技を教え始めて2日目くらいまでのユウの動きは壊滅的だった。

あれだけ説明したりやってのけたりしたら子供でもそれっぽい動きぐらい出来るはずに、ユウはそれすら出来なかった。

初めの2日目までは。


3日目つまり本日。

ユウはようやく動きのコツをつかんだ。

本来ならそこからさらに洗練された動き方や、細かい動きの直しや、応用の仕方などに長い長い時間が必要なのだ。

えぇ!もうすでに気づいたかもしれませんがユウは私のそんな思考を一瞬で打ち砕いてくれましたよ!

ものの数分です、ユウがその技を完璧に使えるようになったのわ。

私が…!私がいったい何週間かけて出来るようになったと思ってんですか!ものの数分って!ものの数分って!!

そりゃ誰だって心のひとつやふたつ折れますよ!砕け散りますよ!


「はぁ…つまり、あなたは完全な個人指導タイプだったんですね……」

「は?どういう意味だ?」

「物事には教え方ってのがあるんです。勉強も剣術もかなり大まかに見れば同じです」

「???」

「あー…つまりですね、あなたが今までしてきたのは全体指導タイプと言う感じで、大勢の人が1人や2人程の指導者に教えてもらう教え方です。こちらのタイプは大勢を一斉に指導出来ますが、教えるのにかける時間が既に決まってしまっているんですよ」


全体を指導するため、個々のレベルに事細やかに合わせている余裕は無いので、当たり前と言えば当たり前です。


「そして、今私がユウに行っているのがさっき言った個人指導タイプなんですよ。こっちは1人の指導が1人の人に教える訳ですから、個々のレベルに合わせられます。もっとも、その指導者を見つけるのも見放されないようにするのも大変ですが……」


そして、どうやらユウは初めのつかみが人に比べて非常に遅いらしかった。こればっかりは根気強く教える他どうにもならない。

でも、コツさえつかんでしまえば後の成長が非常に速いのもユウなんだ。

総じて、今のユウは私の教えた方や技を時間をかけてつかんだ事によって飛躍的に成長したのだ。


「……」

「?どうしたんですか?そんな固まって」

「いや…自分の事をそんな風に誰かに教えてもらうってのはなんか…すげー…って言うか…自信が湧くもんなんだなぁって」

「……そうですね。自分の事は自分しか分からないなんて言いますが…私からしたら自分の事を自分で知るのが一番難しいって思いますし」


自分は自分なのだから、それを客観的に知るだなんて…自分だけじゃ無理な話だ。

だからこそ私達は言葉や態度を使ってお互いに自分と言う存在を外から見たらどうなのかを教え合ってるんだろう……


「さてと、精神的に傷ついたと苦しむのもいい加減疲れてきましたし。あなたを一発倒してスッキリしましょうかなぁ」


そんな事を言いながら私は持っていた木刀をしっかり握るとゆっくりと構えてみせた。

そんな私の姿を見たユウはさっきまで固まっていたのに直ぐに笑ってみせると同じように木刀を構えながらいった。


「んじゃ俺が勝ってずっとスッキリしねぇままにしてやろうか?」

「この性格破綻者」

「何とでも言え」

「鬼畜」

「ロリ」


バチバチと、私とユウの間に火花が飛び交った辺りで私とユウは同時に動き出した。

嫌いだなんだと言いつつも、私達は案外この感じや雰囲気を楽しんでいるのかもしれない。


「勝ったら…褒め…るか……」

「?何か言いましたか?」

「なんっにも!手抜くなよ――リリア!」

「っ!?わ、分かってますよ!ユウ!」




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