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フローリア家の大黒柱。

「朝、それはもう素晴らしいまでに清々しい物ではないかだろうか!雪の月の朝は寒さからか、なかなかみんな起きてくれないのだが、それでもやはり朝という物は1日の中でとっても大切な時間だと私は思うんだ。なにせ、その朝によってその日1日の過ごし方や感じ方が決まるのだからね。朝が素敵だったのならばその後の1日もきっと素敵な1日になるはずだよ。そして、そんな素敵な朝と言うものを手に入れるには自らの身を朝と言う時間軸に置くしかないと思うのだよ。それはつまるところ早起きと言うものだね、『早起きは三文の得』と言う諺がどこかにあるらしいし。つまり、この話から察せるように私は今まさに早起きをしてきた所なのだよ。しかし時に黒いお嬢さんことリリアさん、そんな清々しい朝にこんな廊下でたまたま君に出会った訳なのだけれども、君のその背中にまるでひっつき虫かのようにくっついているのはもしかして私の娘だったりし……」

「あ、ルーバスさんおはようございまーす」


そう言いながら、私はルーバスさんの目の前をまるで何も無いかのようにすたすたと歩き去っていった。

ルーバスさんが帰ってきてから約半月。この半月の期間で私はようやく、ルーバスさんの対処法…もといあしらい方と言うのを思いついた。

そう、それはスルーです。

スルースキルを高め、ツッコまなければならないような状況でも至って冷静に。それでいて相手を傷つけない程度の会話(?)をして去る。

ふっ、これぞまさに完全なるルーバスさん対処ほ――


「む、どうやらこのまま話しを終わらせられてしまいそうな雰囲気ではないか。いやいやリリアさん。誰かと話をすると言うことは素晴らしい事なのだよ!そして私は誰かと話すと言うことが好きなのだ!詰まるところの対話という奴だね。人と人とのコミュニケーションによって人は自分を見つけられる物であって――」


……た、対しょ――


「と、そんな事はどうでもいいのだった。うむ、全く関係ない話しだったのだ。しかし、いつの間にか全く関係ない話しなってしまうと言うのも1つの一興というものだね。……はて?私は一体何の話しをしようとしたのだったかな?いやいや!そんなボケたとかではないのだよ!ただ、あまりにも無駄な話しをしていまい当初の目的を見失ってしまっただけだよ。私としてはそんなに無駄な話をしているつもりはないのだけど、いつの間にか時間がたってしまうと言うことがなぜか多々あって――」

「あぁあああぁああああ!!もう嫌ぁあああああああ!!」


耳が!頭がおかしくなる!!無理!超無理です!耐えられないです!怖いです!コミュニケーション?対話ぁあ?ルーバスさんのは一方的な語りでしょう!もう言葉もここまでくると暴力以外の何ものでもないから!

なんて心の中で叫んでいると、私の背中にピッタリと…まるでくっつき虫のように離れまいとくっついてるルウちゃんが心配そうに私を見つめながら言った。


「リリアお姉ちゃん、大丈夫ですか?」

「ごめんねルウちゃん、大丈夫じゃないの……」

「はぅっ!リリアお姉ちゃんがいつにもましてぐったりです!お父さん!何してくれるのですか!!リリアお姉ちゃんが可哀想だと思わないのですか!!」

「えぇえ!?そんな、なぜリリアさんと話しただけなのにそんなにルウに責め立てられるのだい?」

「リリアお姉ちゃんが可愛いとは思わないのですか!!」

「それは思う」

「あぁああ!!やっぱりこの人テナさんの旦那さんだぁあ!?」


即答したよこの人!大きな声でいい返事をしてくれたよ!完全に変人さんだよ!いや、それ以外にも既に変人さんなんだけど……


「と…そうだ、私はそんな事を言いたかったんじゃなかったのだった。リリアさんに聞きたい事があったんだ」

「えっ?お父さんに聞きたいことをちゃんと伝える能力なんてあるのですか?」

「ん?なんの事だい?」

「駄目だよルウちゃん。この人、自分の言葉の異常性については無自覚みたいだから」

「???」


私の言葉に首を傾げるルーバスさんを見ていたルウちゃんは「はぁあぁああ……」と盛大なまでのため息が聞こえた気がしたけど……気のせい、気のせい。聞かなかった事にしよう。


「それで…ルーバスさんが私に聞きたい事ってなんですか?」

「あぁ、そうだ!いやまぁ、聞きたい事…と言うより、確認と言った方が正しいのだが……」


すると、ルーバスさんは突然黙りだしたかと思うと私の姿を上から下までじっと見つめだした。

……え?なんで私そんな目でルーバスさんに見られてるの?と言うか、ルーバスさんが黙った!?


「……あ、あの…一体何が……」

「リリアさんは今日は出かけるのだと聞いたんだけど……」

「はい」

「その…格好で……?」

「?そうですが……」


な、なんかルーバスさんが青ざめてる?この年がら年中ハイテンションのルーバスさんが青ざめてる!?

私の格好って……上は男物の長袖の服に大きなローブ、下も同様に男物のズボン。頭には髪を隠すためにいつもの帽子を被ってる。

……おかしい所があるとは思えな――


「可愛くないっ!!」

「かっ――!?」


な、なに言ってんのこの人ぉおおおおおおおおおお!!!?


「な…はっ?…え……?」

「可愛くないのだよ!服が!!」

「……は?」


服?FUKU!?clothes!!!?


「服って…これ?」

「いやいやいや!これもこうもないと思うのだ!だってそうじゃないか!リリアさんは今まさにいろんな服を着て楽しむ時期ではないか!だというのに上から下から何まで可愛らしさとはかけ離れたその格好!しかもサイズすら合っていない男物の服とはなんとも嘆かわしいことじゃないか!服と言うのは着れればいいだけの物ではないはずだ!機能だけが優れていればいいわけでもない!見た目の可愛らしさや美しさや格好良さがあってこそ真に輝くものだと私は思うのだよ!それを兼ね備えてこそ服と言えるのではないだろうか!だから私はリリアさんがそんな格好で表へでると言うことが許せないのだ!」

「……」


変人だ…変人がいる……

あぁ、この人がテナさんの旦那さんになった理由がなんとなく分かった気がする。と言うか、寧ろあのテナさんの旦那さんにはルーバスさんしかなれないだろうし、同様にこのルーバスさんの奥さんにはあのテナさんはしかなれないんだろうなぁ……


「いやですね、ルーバスさん…これは動きやすい服がないから仕方なく……」

「リリアお姉ちゃん!それを言っちゃったら――!?」

「へ?」


突然、私の言葉を遮るように焦った様子のルウちゃんが大きな声で私の言葉を止めた。

しかし、私がルウちゃんの言葉を不思議に思ったその瞬間、わなわなと震えていたルーバスさんが何かに気づいたかのように声を上げた。


「そうか!そうだったのか!服がない。そんな事の解決方法など簡単な事なではないか!そう、服がないなら作ればいい!」

「……は、はいぃいいいいいいい!?」

「あーあ、なのですよリリアお姉ちゃん。まぁ、仕方がない事なのです」

「ちょ、ルウちゃん!何がどういう――!?」

「リリアお姉ちゃん諦めてくださいなのです。お父さんがああなったらもう、止まりはしないんですよ。現に、お父さんの姿は既に無いのです」

「って!あぁああ!?本当にもういない!?」


待って…何がどういう事で、どうしてこうなったのか誰か教えて……




     ※




「上は緑を基調とした上着に熱を逃がしにくい布地で作った長袖で防寒対策を整え、下は七分丈のズボンを女の子のリリアさんでも合うように下の方を細身にし、更にズボンの下にある黒いストッキングはさっきの長袖の服と同じように熱を逃がしにくい布地で出来ていると言う感じだ」

「……これは…どういう事?ルウちゃん」

「どうもこうも答えなんてひとつですよ、リリアお姉ちゃん。それは、お父さんが作った服なのです」

「いや、だってあれからまだ数時間しか経ってないし……」

「あぁ、それは元々私が仕事で試作用に作っていたもので、それをリリアさんのサイズに丈を合わせただけなんだよ」

「仕事……」


ルーバスさんのお仕事って……


「「デザイナー」」


……全ての事柄が繋がった瞬間でした。



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