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みんなの思考はぐるぐると。

長いです、記録更新です。

はい、なんとなく分かっていたとは思いますが気付けばエルさんが消えましたよー、どこ行ったんでしょうねーあの人。


「さて、私も長官としての仕事も面倒だがある事だし、さっさと終わらせに行くか。お前達はどうす……」

「だいたいリリアさんなんで突然土下座なんか!」

「アルトさんが謝罪って言った瞬間気付けば体が勝手に動いてたんです!」

「どういう体の作りしてるんっすか……団長もなんか言ってください!」

「いや、もう本当…ごめん」

「何が!?」

「…………行くか」


そして、いつの間にか後ろにいた筈のファイさんまでもいなくなってしまい、残った私とアルトさんとアードさんの3人で会話を繰り広げた。


「勝手に触れたりとか突き飛ばしたりとか、ごめんなさい」

「団長!?誰に謝ってるんですか!今まさに俺等が謝られてる真っ最中で――って、あれ!?リリアさん!いつの間に謝るのを終了してたんすか!」

「アルトさんが謝りだしたくだりの辺りですが?」

「しかもさっきまで土下座していたのが嘘のよう……」


まぁ、私アルトさんに言われて反射的に謝っちゃっただけですし。

いやいや、反省は一応してるんですよ?ごめんなさいと言ったあの言葉は本心ですよ。

ただ…まぁ……


「よくよく考えたらアードさんには多大なる恨みとかがあった気がしただけで……」


あえて言うのなら窓の事とか、火薬の事とか、巨大岩の事とか。

ぶっちゃけ私がアードさんを見捨てた事よりそっちの方が大きくない?一発くらいアードさんを蹴っても怒られなさそうな……いや、寧ろ一緒に誰かが蹴ってくれる気がする。


「まぁ、冗談はさておき」

「俺への謝罪が冗談になってますよ、リリアさん」

「しかしアードさん、アルトさんが若干1人暴走気味になってきてるのは何故なんでしょうか?」

「……さぁあ?」


なんか知らないけどさっきからアルトさんはひたすら誰かに謝ってる。しかも、まるでトラウマを思い出すかのような悲しそうな……と言うより、ヘコんでいるような感じで。


「恨まれてたらどうしようかと考えてはみたんだが……」


なんか、さっきとは打って変わってアルトさんが頼りない。そんなんで大丈夫かと聞きたくなる。

しかし、思い返してみればアルトさんがこうなる時って大体……


「……リリアさん、団長が何に謝ってるかは分かんないっすけど、何が原因かは分かりました」

「奇遇ですねアードさん。私もたった今思い出しました」


私とアードさんはアルトさんを見つめたまま、2人一緒にその原因を口にした。


「「絶対あの副団長の言葉のせいだ」」




     ※




……何だろ、今ちょっと何処からか殺気に似た感じがあった気がしたけど。


「俺、誰かに殺気立てられるような事してないのになぁ~」


まぁ、気のせいだろうと納得して俺はまた、“蒼穹の塔ジェミニタワー”の最上階から1階へ続く階段を下り始めた。


「~♪」


もしアルトが今の俺を見たら機嫌が良すぎて気持ち悪いとか言ううんだろーなぁー

でも、今回ばかりそう言われても仕方ない。現に俺自信、機嫌がいいと認識してる。


「そもそも、今日は面白い事が沢山あったしねぇ……」


リリアちゃんやアルトや長官、それにあいつも今日が面白いようにしてくれた。今日が面白かった。

それで機嫌が良くない訳がない。


「あ、そう言やぁアルトにリリアちゃんが恨んでるって嘘付いたままだった」


……面白そうだから放置でいっか。リリアちゃんの事だし、どうにかなるでしょ。


「でも、まぁ……」


俺は自分の右手に握られてる2つのりぼんを眺めると、さっきの事を思い出しながら薄く笑った。

あまり、俺らしくないちっさい悪戯。


「あれは…あんな所で寝てるあいつが悪いと言うことで」


いいものが見れて、面白かったし。




     ※




「恨みだぁあ?」

「いや…エルが……」


本っ当何してくれてるんですかあの人は!!アルトさんに何吹き込んでるんですか!

アルトさん見かけによらず結構思い込みが激しいと言うか可笑しいと言うかそんなタイプ何ですよ!そんな事言ったらヘコむに決まってるじゃないですか!どうするんですかこの若干子犬状態のアルトさん!可愛いけれども!


「団長、副団長の言葉を素直に受け入れたら駄目っすよ、何があったのか俺にはさっぱり聞こえませんが」

「聞かせるわけないでしょう」


アルトさんにエルさんに何を言われたのか聞いた時、アルトさんが「この間のアレがエルにバレて……」の辺りで私はダッシュでアードさん所へ行き、その耳を両手で思いっきり塞いだ。

そりゃ、私達の言うアレがこの間のベッドでの事なら絶対に第三者に聞かせられませんから、内容的に。

てか、誰かに聞かれたら私が羞恥心で死ぬ。


「リリアさんもなんか知りませんが団長に優しくしなくちゃ駄目っすよ」

「……うっ」


確かに、その事に関してはそうなのかもしれない。

あの時私は何があってあんな事をしたのかと、アルトさんに怒って問い詰めてしまった。アルトさんは理由に付いてはずーっと黙秘権を行使してたけど。

でも、あの時私がちゃんとアルトさんを許していればアルトさんはこんな風にならなくてすんだんだし……


「わ、分かりました。でもアードさんはこの場から席を外してください」

「えー?何でですか?」

「…………何でもです」

「仕方ないですねー……」


そう言いながらアードさんは私の手を外すと塔の下へ続く階段を下りていってくれた。

とりあえず、これでアルトさんと2人で話す事が出来るっちゃあ、出来るんだけど……


「アルトさん…緊張し過ぎじゃないですか?」

「そ、そんな事は……無い…はず」

「……」


一応、始めに言っておくと、今私はアルトさんを恨んでいる気持ちなんて欠片ほども無い。

確かにその時、突き飛ばされて床に激突させられた事に怒りはしましたが、その事でアルトさんを恨むなんてするわけない。

それがもしエルさんとかだったらちょーと自身は無いが……

何より、あの時のアルトさんは病人だ。熱にうなされそうなってしまったと言うのならそれは事故と言うことにだってなる。

恨んでなんて無い、恨んでなんて無い…のに……


「いや、恨まれても仕方ないような事をしたのは確かだ…し。リリアにどう思われても仕方ないとは思っている」


……なにこれ、可愛い。

子犬状態のアルトさんには、もう私の幻覚なのだろうけど、何故か子犬の耳と尻尾が見えてきた。しかも、両方ともショボーンと下がってしまっている。


くっ…久々に体感しました、いけめんさんパワー。

しかもアルトさんは大層な美人の女顔。さらに今は演習用の特別な真っ白い服を着ている。

いや、超似合ってはいるんですが何より今の子犬状態のアルトさんがそれ来てると主人に怒られた子犬そのものです。


「だが、やはり恨まれていたら凄く悲しい…と言うか、嫌な感じで……」


あ、ヤバい。アルトさんが限界だ。

もうしばらくこの子犬状態のアルトさんを眺めていたいと思いはしましたが、そう言う訳にもいかないようなので、アルトさんの勘違いをどうにかする事にした。

てか、この人何処まで勘違いする気だろう?


「……アルトさん」

「なに?」

「私、アルトさんが好きですよ」

「…………」


長い、長い沈黙。アルトさんの表示が固まったままじっと、目の前に立っている私を見た。

そして、ようやくアルトさんが口を開いた。


「い…今何て?」

「アルトさんが好きですよ?」

「誰が?」

「私が」

「誰を?」

「アルトさんを」

「…………えぇええええ!!!?」




     ※




有り得ない、訳が分からない。

驚きの声を出した後、体中の力が一気に抜けてしまった。

俺の頭の中は、リリアが「好き」の2文字を言った時からぐるぐる、ぐるぐるただひたすらに訳も分からず回っていた。

状況も感情も理解理解出来ていないままリリアは続けて話し始めた。


「好きな人を恨んだり何てしませんよ。怒りはしたかもしれませんが、アルトさんはちゃんと謝ってくれましたし」

「あ…あぁ……」


俺がそう曖昧ながらも返事をすると、リリアは優しく笑って見せた。

その表情を見た瞬間、一気に俺の心臓が跳ね上がった。

バクバクと大きな音を出してしまっている。その音がリリアに聞こえてしまわないかと緊張して、さらに鼓動が速くなる。

そのせいか、体中がかなり熱い。体の奥の方からだんだん熱くなって行く。でも嫌な熱さじゃない。


「じゃあ!リリアは――!」

「なんたってアルトさんは、私の恩人さんですからね」


恩…人……。

俺は、出そうと思っていた言葉の続きを必死に飲み込んだ。

リリアは、先程と全く変わらない優しい笑顔で俺を見つめていた。それが何故か今は凄く痛い。


「アルトさんにはいっぱい助けられちゃいました。ありがとう何かじゃ感謝しきれないくらい大事な恩人さんですよ」

「……うん。ありがとう、リリア……」


そうして、しばらくするとリリアはその場から立ち去って行ってしまい、俺1人だけが、残った。

俺の頭の中は、やはり今もぐるぐると訳も分からず回っていて、必死に自分の感情を理解しようとしていた。


俺は、あの時リリアが何も言わなかったら、何て言っていただろう?あの瞬間、頭の中が真っ白になって、そんな事ももう忘れてしまった。


「恩人、いい事…嬉しい事だよな……?」


そう、リリアがそう思ってくれていたのなら、それは嬉しく、有り難い事の筈だ。

なのに…何故だ?

リリアに大事な恩人だと思われるのが、凄く…嫌だ……


「……分からない」


俺には何も、分からなかった。




     ※




ここは、しろの塔最上階。

ここから見上げる空は、変わらず青く、綺麗に澄み渡ってる。

そして、そんなこの場所で私は可愛らしく眠りについているネリさんの前に立っていた。

ただ1つ言うのなら、ネリさんのツインテールが綺麗さっぱりほどかれているのは何故だろう?


「エルさんの仕業…かなぁ?」


それにしては随分ちっさい悪戯だ。

エルさんなら子供の悪戯みたいに眠っているネリさんの顔面にペン(勿論油性)で落書きしたり、水にたたき落としたりしかねないと思って心配になって来たんだけどなぁ……

私の中のエルさん像が歪んでただけか?


「とりあえず……ネリさん、起きてくだ――!」


私が眠り込んでいるネリさんを起こそうと声を掛けた瞬間、後ろから伸びた手が私の口元に当てられて、口を塞がれた。

振り向くとそこには人差し指を立てて口元に当てながら、静かにシーっとして見せたファイさんがいた。

それに合わせて、私も小声で話し始めた。


「(ファイさん、何ですか?)」

「(起こさないでやって欲しいんだ)」

「(いいんですか?)」

「(あぁ…よっ……)」


ファイさんはそう言うと、私から離れて眠っているネリさんを背負った。

静かに眠っているネリさんは、何だか普通の子供らしく可愛らしい。

そんなネリさんを少し見つめ、その場から立ち去りながらファイさんは言った。


「(夢の中くらい、自由にさせてやりたいんだ)」

「(自由……?)」

「(会いたい人に、行きたい所に、生きたいように)」


ファイさんのその言葉は、私には少し分からなかった。




     ※




しかし、何故ネリは髪が下ろされてるんだ?


「んにゃ……」

「む、起きたのか、ネリ」

「……おい、ファイ。儂のりぼんがないんじゃが」

「初めから無かったぞ」

「?」


ネリはよく分からないような様子で私の背中の上で自分の髪を見ていた。

すると、ふと何かを思ったのか、唐突に私に問いかけた。


「ファイ。お主、昔儂から見たリリアをどんな奴か聞いたよな?」

「ん?あぁ、そう言えばそんな事を聞いたな。確か君は、『普通の少女』と言ったんだったか」

「その時は…な……」

「……どういう事だ?」


ネリは少し上を向くと、思い出すかのような雰囲気で小さく呟いた。


「長くあいつと一緒にいた今、儂にはあいつが誰よりも異常で、異端で、異質に思えるんじゃ」

「……?」


リリアが、誰よりも異常?




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