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対話と会話と終了と。

階段から落ちた…と言うより私が階段に落としたんだけど……エルさんの左胸についていたコサージュはどうやら落ちた衝撃で壊れたみたいだ。

しかし、さすがに階段から人を落とすのはやりすぎたと思い、一応エルさんの生存…もとい無事を確認しにいった。


「エ、エルさん…大丈……」

「にゃっははははは!お主の無様な姿しかとこの目に見たぞエル」

「お前いつの間に来た」


エルさんの姿を確認したやさき、その隣りにいつの間にか立っていたネリさんを発見した。

その場に座り込んでいるエルさんを指差しながら軽く涙目になるほど盛大に嘲笑あざわらっていた。

ネリさんが嘲笑う状況を作ったのは私だけど、嘲笑われる原因を作ったのはエルさんなので謝った方がいいのやら悪いのやら分からないんですが……


「はっ、儂にあんな事をするからそんな事になるんじゃよ、馬鹿め」

「ネリさん……」


根に持ってる、完全に根に持っていらっしゃる。


「お前は本っ当に俺の事が嫌いだな」

「お主も儂の事が嫌いじゃろうに」


やめて。それ以上この場に火花を散らさないで、エルさんに至っては私と戦っていた時以上に本気な感じがするんですけど。

すると、それまでエルさんの方を向いてニヤニヤと怪しい笑みを浮かべていたネリさんが突然クルリと私の方を向いた。

しかも何故だかじっと何かを確かめるかのように見つめられた気がする。

私が疑問に思ったのもつかの間、ネリさんはまたいつも通りの表情で話し掛けた。


「お主、ファイの所に戻った方がいいぞ。多分…そろそろ決着が付く頃じゃからの」

「あ、はい!…あれ?ネリさんは行かないんですか?」

「儂はもう少しこやつを笑い物にしてから行くんじゃ」

「どう言う意味だ、おい」


……まぁ、とりあえずこの2人はほっといても大丈夫かな?

そう思って私は階段を駆け上がりファイさんのいる最上階へと戻っていった。


「あーあ、これで俺はリタイアか。残念だなぁ」

「ふん。じゃったらちゃんと本気で戦え、阿呆」

「……」


私がいなくなった後に2人っきりになったエルさんとネリさんはそんな話しを交わしていた。


「少なくとも、お主が2本の剣を抜いてない時点で端から本気を出す気などさらさら無い癖に」

「……だって、本気で戦って何の面白みも無く終わるだなんてつまらないじゃん」


笑ってそんな事を言ったエルさんに淡々と話すネリさん。


「儂は、お主のそう言う所が嫌いじゃよ」


とだけ言うとエルさんにクルリと背を向け最上階への階段を登り始めた。

しかし、半分位まで行った所で何かを思い出したかのようにニヤニヤと怪しい笑みを浮かべながらエルさんの方を見て言った。


「あ、ちなみに一番嫌いなのはその無駄な顔じゃがな」

「そうか、一度くたばれ」


2人共、何処までも底が見えない人達なんだと、私は思う。




     ※




全身が震えてる。その光景から目が話せなくて、言葉に出来ない感覚が体中を駆け巡ってる。


「凄い……」


私の視線の先には2人の指揮官の一騎討ちが繰り広げられていた。

両者共、王宮騎士団上部と王宮騎士団のトップに立つ人達。


流れるような剣技、その動きに美しさを感じる程、優雅で流麗な無駄の無い戦いをするファイさん。

でも、その本質は、誰よりも牙をむく。まるで、相手を喰い殺すかのよう。


「ふふ、私は久しぶりの戦いで笑みが止まらないぞ、アルト」

「こっちは今にも息が止まりそうです…よっ!!」


そして、アルトさんはファイさんの流麗な剣技を全て断ち切るかのような速さ。

アルトさんの圧倒的な速さは何度も見てきたけど、普段の戦いとは全然違う。

アルトさんも本気なんだ。


「これが…長官と団長の戦い……」


この戦いに、入り込める気がしない……

でも、それ以上にこの戦いをもっと見ていたいとも思っている私がいる。


「――っ!?」

「ペースが乱れてきたな」


ファイさんの剣をアルトさんがギリギリの所で受け止めた。

それを境目に一気にファイさんがアルトさんに攻め込む。

右から左から上から下から、綺麗な流れで何度も何度も剣が振られた。

その時のファイさんの表情は楽しそうな笑みだった。


「笑ってなんかいていいんですか長官!」

「!?」


不規則な、乱れたペースの状態の中。アルトさんは一瞬の不意を打ったかのようにファイさんの左胸、コサージュに向けて突きを放った。


キンッ!!と、高い金属音。

見れば、アルトさんの剣をファイさんの剣が受け止めたいた。ファイさんの、防いだそれまでの流れが滑らか過ぎて、防ごうと剣を振った事に気づかない程。


「いつの間に……」

「お前が突きを繰り出した直後だ」


それだけ言うとファイさんの剣はその流れを一瞬で切り替えると今度はアルトさんのコサージュに剣を向ける。


「戦い、そして学べ」


ファイさんがしたのは、アルトさんと同じ突き……


どぉおおおおおん!!!!


「「!?」」

「っ!この音って……!」


鼓膜が破れそうな程の音の中、ピタッとファイさんの突いた剣がアルトさんのコサージュに届く前に止まった。

この音は確か、演習開始の合図。これがもう一度鳴ったその時は…演習終了。

でも、アルトさんのコサージュはまだ壊れてない、となれば……


「時間切れ…5分の4のリタイア?」


そもそも私達は、こうなる前に相手チームの指揮官であるアルトさんを倒す必要があったんだ。

私は咄嗟に近くにいたファイさんに視線を向ける。


「ファイさ――!」

「あ、ヤバっ…負けた」

「「……」」


王宮騎士団、合同演習。“蒼穹の塔ジェミニタワー”……

チーム内のメンバー5分の4のリタイアにより。

しろチームの勝利。




     ※




ムスッとした顔で不満げに座り込んでいるファイさん。

負けが分かった時はあんなにあっさりした感じだったのに、改めて負けたのだと分かって…と言うより負けた=レイさんに料理を食べてもらえないと分かって不機嫌になってしまったらしい。


「あとちょっとだった」

「その台詞はさっきも聞いたわ、いい加減あきらめろ。お主が負けるなんて素晴らしき奇跡じゃろう」

「その慰め方もどうかと思いますよネリさん」


ちなみに、私達は今負けたチームにファイさんの料理と共にもれなくついてきた演習の片付けをしている最中。

ファイさんも不機嫌…てか、拗ねてはいるけど一応片付けをしてはいる。


「しかし、うじうじとする気は無いが些か諦めきれない事もあると言ううか……」

「はぁ……」


すると、ネリさんはため息をひとつつくと、ファイさんから離れてスタスタとどこかに歩き出した。


「ネリさん?何処行くんですか?」

「こいつをあやすのもうメンドクサイ」

「あやす!?」

「儂、最上階で寝てくるんじゃ」


あっ、本当に行っちゃった。

心の底から面倒臭そうな顔だったからなぁ、多分本気で寝る気だろうに。


「まぁ、ファイさん。ネリさんではないですが負けてしまったものは変わりませんから。元気出してください」

「そうだな、文官には無理だったが帰れば旨い料理が用意してあるしな」


……旨い料理ですか、そうですか。アレを美味の部類に入れるんですねこの人は。味音痴にも程がありますよ。


「そう言えば、あの後アードさんは一体どうなったんでしょうか?」

「開始3分でリタイアっすよ」

「ひゃぁあああ!?」


突如目の前から聞こえてきた声に思いっきり驚いた。

せっかく片付けた道具類を全部落としてしまった程。


「ア、アードさん…元気でしたか?」

「はっはは、何言ってるんですかリリアさん。元気な人間がこんな真っ赤になった服を着て体中青痣だらけにしてませんよ」


……目が全く笑ってない。

あー…さすがにアードさんが引きずられていったのを完全にスルーしたのはマズかったかなぁー……?

はっはは…はは……


「てか、リリアさん俺の事見捨てましたね?」

「えっ、何の事ですか?」


私の視線を右方向に約90度ずらす。

いや、これは決してアードさんと目を合わせないようにしているとかではなく、純粋にそっちの方向が気になっただけですよ?いえいえ、決してそんな事、やだなぁアードさん青痣だけでなくそんな青筋立てて……

すると、その時私はアードさんの後ろに立っていた2人の人物を見かけ全身に寒気が立った。


へー、リリアちゃん。随分面白そうな会話をしてるねぇ


と、言葉にはしていないけれどその目を見ただけでエルさんがそう言っているのは確実だった。

そしてエルさんが隣りにいるアルトさんに耳打ちをしたかと思うとアルトさんは訳が分からないような顔でただ一言。


「謝罪」

「ごめんなさい、見捨てました。私が全て悪かったです。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「「えっ……?」」

「ぶっ!…ちょっ、これが話しに聞いたリリアちゃんの土下座…はっはは!」


今この状況を把握出来ずそんな声を出したアルトさんとアードさん。

そして、目の前のアードさんに土下座して謝る私を思いっきり笑って見ているエルさん。この人絶対階段から落とした事根に持ってる。あの私の心を折るほどの容赦の無い笑いは絶対そうだ。


「えぇえっ!?別に土下座までは要求して無いっすよリリアさん!」

「エル!どういう事だ!!」

「いやいや、疑いもなく素直に言うお前もお前だって」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「とりあえずリリアは謝るのを止めて顔を上げようか!」

「そうっすよ!男3人の前で女の子が1人土下座って他人が見たら最低ですよ俺達!」

「……」

「あ、アルトの心も折れた」


負けたとか勝ったとか関係なく、私達はぐだぐだとそんな可笑しな会話をしていた。


「あれ?そう言やいつも長官にべったりのあいつは?」


不意に、ファイさんの近くにネリさんがいない事に気づいたエルさんがそんな疑問を口にした。

すると、後ろで私達を見ていたファイさんがそれに答える。


「ん?ネリなら最上階に寝に行くとか言ってたな」

「……ふーん、へー、そぉーなんだ」


あっ!悪い顔だ!

ものすっごく悪い顔をしてる、何か企んでるそんな顔だ!

……ネリさんに仕返しくらっても知りませんよ。




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