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魔法使いと風精霊  作者: 田中23号
第一章
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第十一話「魔法使いの指輪の秘密」

「やっぱ自分のベッドは落ち着くなぁ」


お風呂から上がって、ご飯を食べたクリスは部屋のベッドにダイブしてごろごろしている。


「それはいいですが主、魔剣を抜いて見ましたか?」


フウリは机の椅子に座ってお茶を啜っている。


「おいやめろ、俺の今一番気にしたくない事ランキング第一位に堂々と突っ込みをいれるな。触れないようにしてたんだ。ちょっと時間置いて魔剣があの黒いの消化してからでいいじゃん」


「消化するような器官はあの魔剣にはついていません。もう取り込んでしまったでしょう。抜いてください」


クリスはベッドから勢いよく起き上がり、部屋の隅に置いてある魔剣を指差さして言うが、フウリはお茶を置いてクリスに詰め寄り、剣を抜かせようとする。


「え、なんでそんな積極的なのフウリさん」


「私の推察が正しければ、その魔剣、面白い事になってますよ」


「ちなみにその推察とは?」


興味を持ったクリスが身を乗り出して聞き返す。

 


「ふむ、説明したほうが主も安心できそうですね。それでは説明します。まず、あの魔力食いの黒い霧ですが、いろいろな説があります。あれが魔力食いの本体だとか、あれは取り込んだ魔力が大きすぎて体から溢れているとか。私個人の見解ですと、黒い霧は一種の消化器官だと思っています」


「消化器官・・・他の生物の魔力をあれで消化して自分のにしてるのか」


クリスはフウリの講義を聞いて、自分なりに咀嚼していく。


「そうです。普通、面倒な手順を踏まないとできない生物間での魔力の取引を、一方的にできるようにしているモノがあの黒い霧だと推察します」


「あれけどそれなら、うちの魔剣もできないっけ?」


ふと思った疑問を、クリスは部屋の隅を見ながら問いかける。


「あれは相手を切って体内に刃が接触しないとできません。十分面倒な手順でしょう。ついでに吸引するだけで、その魔力で出来ることも限定されてますし」


「なるほどなぁ」


「世界からの魔力供給を一切できない魔力食いが、あの黒い霧によって他の生物から魔力を食らって生きている。そこまではいいですね?」


「さすがフウリ先生、教え方も上手くて素敵!」


学院時代、クリスの追試前には付っきりでフウリが勉強を教えていたので、教えるのはお手の物だ。


「もっと褒めていいですよ?」


「続きを期待」


「仕方ない主ですね。それで、元々黒い霧と魔剣は似ているところもありますので、うまく吸収できていれば、黒い霧の力が使えるかもしれないと思うのです。魔剣からもほんのり魔力食いの力を感じますしね」


「フウリ先生質問があります!」


手を上げるクリス。


「はい主、そこで三回回ってワンと鳴いてから質問をどうぞ」


クリスを指し、ついで床を指差すフウリ。


「学院の変態教師どもでもなかなかそんなこと言わねぇよ!?じゃなくて、結局うちの魔剣ちゃんは何ができるようになったの?」


「ふむ。黒い霧は取り込んだ魔力を完全に自分のものとして扱えるようにする器官だとするなら、本来なら魔剣に蓄積した魔力は切れ味向上と斬撃を飛ばすことしか出来なかったのが、主の好きにできるようになるんじゃないかと思います」


「おお・・・!?」


「つまり、擬似的に魔力量が増えて、しかも回復量も増えた上に、切れば切るほど魔力が回復する、ということになってるかもしれないですね。さぁ、主の研究がまた一歩進むかもしれないのです、すぐ抜きましょう」


フウリはクリスに剣を抜くよう急かす。


「お、おう。それじゃあ、抜くぞ?抜くからな!?」


クリスは、部屋の隅から剣を取り、恐ろしいものを触るかのようにその柄を握る。


「早くしてください、へたれ主」


「あはい」


意を決したようにクリスは剣を抜く。


しかし、特に何も起こらない。


「ん?何もなさそうだよ?」


折角意を決めて抜いたのに何も起きないことにクリスは気が抜ける。


「本当にお馬鹿さんですね主。魔剣の魔力を使わないと分からないでしょう。そうですね、剣を握って私に魔力を送るイメージをしてください。どうも私からは奪えそうに無いので」


「ほほう」


クリスは目を瞑って、契約で出来ている自分からフウリへの魔力の流れに、剣からも魔力が流れるようにイメージする。


「ふむ。これはこれは」


フウリが楽しそうに呟く。


「お?できた?」


クリスが目を開けて聞く。


「ええ、ばっちりですね。しっかり流れ込んできて、主の魔力の味がします」


「え、どういうことなの」


「簡単に言うと、魔剣は自分の魔力を主の魔力に限りなく味を似せているのです。なので、剣を通して魔力を使う他に、主は簡単に剣の魔力を自分の魔力として取り込んで使うこともできるようですね。けど、魔力の所有者は魔剣なので、いくら味が似ていても直接私が奪うことはできないのです」


「おおー!自由にできる魔力がふえたのか!」


クリスは喜び剣を抱く。


「そうです、よくできました。けど、主が魔剣から魔力を吸い取ればそれは主の魔力なので、私の好きにできます。喜ばしいことです」


フウリの言葉を聞き、剣を置きながらクリスがつぶやく。


「なんか魔力が増えたと思ったら、結局そうでもなかったような感じになってる件」


「いえいえ、切れば切るほど魔剣の上限までは使える魔力が増えますよ。よかったですね。早速ドラゴン狩りに行きましょうか」


「過激発言禁止!!そもそも魔剣は今お腹いっぱいなので切っても取り込めません!」


クリスが腕を交差させ、フウリを止める。


「魔剣から主を通してその指輪に魔力を送って、魔剣の空きを作ればいいじゃないですか。ああけど、ちょっと容量が足りないようなので、その指輪を量産しないといけませんね」


「無茶言うな!この指輪の元、どんなもんか知ってるだろ!一時期この指輪に呪われて大変な思いしただろうが!」


「そういえば、主が遺跡にあった指輪を何の疑いも無く手にとって、危うく契約が切れそうになりましたね」


しみじみと思い出し、フウリが言う。


「その節は大変ご迷惑をおかけしました、すみません」


クリスはすぐにフウリに頭を下げる。


「まぁ、いいでしょう。魔剣の確認も出来たことですし、そろそろ寝ましょうか」


「おう。今日は一緒に寝ないからな!」


「主は私に床で寝ろというのですね」


「おい、現在進行形で浮いてるだろうが」


「馬鹿なこと言わないでください、浮いてるのは主の存在ですよ」


「そっちの浮くじゃない!!ったく、さすがに疲れてるからもう寝るぞ」



そう言ってベッドの端に寄る魔法使い。


精霊が空いたところに潜り込む。


結局、一緒に寝るのだった。

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