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第一章プロローグ
木々に囲まれた静かな街道を男が一人、のんびりと歩いている。
しかし、その静寂を破る言葉が響く。
「おい、お前!荷物と腰の剣をおいていきな!」
木々の陰から出てきた賊が三人道を塞ぐ。
その賊はこれでもかというほど、山賊のオーソドックスな格好をしている。
伸び放題の髭面に、ところどころなんの染みかも分からないものが付着した汚い服を着て、曲刀をもっている。
しかし、道を行く男は止まらずに進む。
「と、止まらないと切るぞ!」
賊は動揺しつつも曲刀を抜き、歩く男を威嚇する。
しかし男は止まらない。
「「「うおおおお!」」」
そして、とうとう賊は一斉に男に襲い掛かる。
それに対して男は腰の剣を抜かずに、手を賊に突き出して短く言葉をつむぐ。
「風よ、突き進め」
瞬間突風が吹き荒れ、賊はまとめて吹き飛ばされ、木々に打ちつけられ、昏倒する。
そして男は、何事も無かったかのように、また歩き出した。
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「俺、かっこよくね?」