第五話 戦いは数なんかじゃねえ!
誤字、脱字、感想などがありましたらよろしくお願いします
確かにいるのは分かっていた
そろそろだと思っていた
心の準備もできているつもりだった
でも・・・
第五話 戦いは数なんかじゃねえ!
あれから一時間、あまりにもあっけなく俺たちは森の出口を発見した
森に入ってからの所要時間は三時間
心配していたモンスターとの遭遇もなく実に快適な旅だった
・・・この距離に三日間って
ちらりと後ろを見ると、サキは数メートル後ろをふらふらと歩いている
彼女の黒い髪はべたーと萎れ、青いマントをずるずると引っ張りながら歩いている
まあ、空腹で倒れるほどだ、おにぎり数個で回復することはないか
にしても、本当にモンスターとの遭遇が無くてよかった
装備が無い俺と、どう見ても役に立たない腹ペコ少女
この戦力では仮に戦闘があったとしても逃げるしかない
そうなると迂回せねばならず、どうしても時間がかかる
にしてもいささか順調すぎやしないか・・・
ド○クエでもエフ○フでもファーストダンジョンで、戦闘なしということはありえない
「・・・こういうのを、フラグって言うんだよな」
「フラグ?」
「いや、なんでもない」
「?」
うん、こういうときは変なことを考えないほうがいい
頭をぶんぶんと振り悪い考えを消し去る
そうこうしているうちに森の外へとたどり着く
視界が急に開け、視界が光で覆われる
「・・・何これ?」
確かにおかしいとは思っていた
そこにいるのは分かっていた
そろそろだと思っていた
心の準備もできているつもりだった
でも・・・
「流石にこれはねえよ・・・」
そこにいたのは、五十体を超える数のモンスター
そのすべての目がこちらを向いている
俺の叫びと、モンスターが飛び掛ってくるのは同時だった
あらかじめ断っておくが俺には武道等の経験は一切無い
つまり戦闘において言えばど素人というわけだ
はじめに襲いかかってきたのはゼラチン状の緑色のモンスター
俺は慌てて後ろに一歩後退する
そいつは俺の手前に着弾 その体は衝撃ではじけ飛ぶ
そしてそのパーツのうち一つが俺の眉間にまっすぐ飛んできた
当然俺にはそれを避けることができる能力も身を守るための防具も無い
見事にそれの直撃を受けた俺はあっけなくバランスを崩し尻餅をつく
そして間髪いれずに狼のような魔物が四匹、飛び掛ってくる
当然、迎え撃つことはおろか体勢を立て直す余裕もない
俺は条件反射で顔を庇い、目を閉じた
・・・あれ?
目を閉じてから十秒ほど経ったが未だに痛みは襲ってこない
恐る恐る目を開けてみる
すると俺の前には一本の剣を持った少女が立っていた
そして少女の前にはモンスターだった物が四つ転がっている
風になびく黒い髪と、蒼いコートそして銀色に輝く剣
その少女は剣を構え、叫ぶ
「お前らに恨みはない、だが食べ物の恩に報いるために貴様らには消えてもらう 覚悟!」
目の前の敵に叫ぶ少女剣士→サキ
サキは今までのだらけ方が噓だったかのようにそこにしっかりと立ち、まっすぐ敵を見据えていた
サキはそのままモンスターの群れの中にたった一人で突っ込んでいった
「・・・すげぇ」
立ち上がることも忘れ、サキの戦いを見ていた俺の口から自然に声が漏れる
それほどまでに彼女の戦いは凄まじかった
最初の一閃で四体のモンスターがきれいに引き裂かれた
次の一撃で半径五メートル圏内のモンスターはいなくなった
そこへ数体のモンスターが彼女の死角から奇襲をかける
が、彼女はそれを避けようともせずそちらに剣を持っていないほうの手を突き出した
するとそこからビームが噴出し飛び掛ったモンスターたちを蒸発させる
そうしてモンスターたちは次々と倒されていった
ある偉人はこう言った
知ってたか?戦いは数なんかじゃないんだぜ?
そこに一体の超高性能モ○ルスーツとスーパーコーディ○ーターを送り込めば済むんだぜ・・・
数分後、大量のモンスターがひしめき合っていた森の出口には二体の化け物しか残っていなかった
勝負は一瞬だった
二つの影は互いに飛び掛かる
そして・・・
大きなトカゲのモンスターはその体を半分に引き裂かれその場に崩れ落ちた
残ったほうの影(=サキ)はその剣についた血を払い落とし、剣を腰の鞘に戻す
そして俺のほうへ振り返り笑顔で手を振った
直後、サキの体は電池が切れたように地面に倒れこむ
俺は慌ててそこへ向かいその華奢な体を抱きあげる
「おい!大丈夫か?」
サキは目を開き俺の顔を見ると
「・・・お腹がすいた」
と呟き、それを追うように彼女の腹がぐ~と鳴った
・・・どうやら目の前の超高性能機はかなり燃費が悪いらしい